ザックバランに親睦会
「いやー、どーもどーも、もーどもーど。はじめましてバランです。ザックバランのバランの方です。ザックバランの刀のほうでお馴染みのあの、あのバランですよー。
えーえーえー、馴染みが無い? 馴染みが無いなら馴染んじゃえばいいじゃないですか〜。今から私とあなたで馴染んじゃえばえーる、ジンジャーエール。
あれ? もしかして刃物が炭酸飲料なんか飲んで錆びちゃうんじゃないかっておもってます? いやいやいや、わたし魔物ですから〜。こうみえても生きてますから〜。
体は刃物、頭脳は魔物、その名も、ザックバランのあれのほう! 何なんだよ『あれのほう』って。ザックかバランかの2択であれのほうって。結局どっちだって話ですよ。
どーっちだ! わたしザックとバランのどーっちだ! っつってねー、えー……もう飽きました?」
「……あー、いやー……まーとりあえずよろしく、バラン……でいいんだよね」
これがホントにあの冷血メガネ女の魔物なのか? 少し短めの刀の姿をしたバランは、刃と柄の境目の鍔の部分にメダル状の飾りがあり、そのオブジェクトには、目は点、口は線で描かれた埴輪の顔のような彫刻が刻まれている。
その口部分である横棒のような溝が絶えず動いて、マシンガントークを絶え間なくぶっ放し続けている。
明るい……ってゆーかウザいってゆーか……なんか疲れるな。
「僕は小林 普人。魔物はあっちの透明なのでリキッドっていうんだ。よろしくな、バラン」
「きゅきゅっ」
「やあ、ボクは柵平 友和だよ。この子はボクの魔物でゴールデンピース。長いんでピースって呼んでるんだ。よろしくね」
「ゲココッ」
僕たち2人と2匹はバランに挨拶する。
「いやー、ご丁寧にどもども。知ってますよー、小林さん。あの握徒さんを倒したってこの辺じゃ有名ですよ。回覧板に書かれてみんなに回っちゃってますよ。個人情報駄々漏れですよ。
それに柵平さんも中性的な美少年で、かなりモテモテなんでしょうね。でもーお強いんでしょ? カワイイは正義、カワイイは権力、カワイイは可愛さってよく言いますからねー。あ、やばい、最後かぶっちゃいましたね。
ちなみに回覧板の下りは嘘ですから。いや、一応言っとかないとあとで訴えられたら怖いんで。まー、いつからこんな世知辛い世の中になっちゃったんでしょうねー。あー、むかしはよかったなー。昭和ノスタルジーに帰りたいなー。よっ、昭和の男!」
「バラン、もういいわよ分かったから。ザックもみんなに挨拶しといたら?」
少々げんなりしているこちらの空気を読んだのか、宮ノ本がバランのおしゃべりを止めさせ、ザックのほうに話を振る。
「主がそうおっしゃるのなら失礼して。拙者ザックと申します。どなたさまも以後、お見知りおきを」
丁寧な挨拶で金属製の刀身をグニャッと曲げ、深くお辞儀する。バラン同様、鍔のところに付いた顔のようなメダルがしゃべるのだが、鈍器のほうのザックはかなり古風で無口な日本男児といった雰囲気だ。
「これはご丁寧にどうも。小林です」
魔物といえど1つの人格だから、これだけ丁寧なあいさつをされるとこちらもそれなりの受け答えをするのが礼儀ってものだ。
「よろしくねー、ザック。ボクは柵平」
「きゅきゅうっ」
「げこげこぉ」
他の3人はなんともフレンドリーに自己紹介する。こいつらの礼儀に対する見解は僕とは違うらしい。くっそう、いまどきの若いやつらは。僕にもおまいらのコミュ力をわけろ下さい。
「昨日の試合見たよ。ザックは見た目鈍器みたいだけど、衝撃波とばせるんだな。あんな離れた魔物も真っ二つにしちまうなんてすごいよな」
「小林殿、鈍器とは聞き捨てなりませぬな。拙者はこう見えてもれっきとした剣ですぞ。そんな野蛮で品のない得物と一緒にしないでいただきたい」
「ああ、すみません」
ザックに怒られ、ついつい謝ってしまう。僕、なんかこの2匹苦手かも……。
「悪いわね、小林君。ザックはこう見えても確かに剣なのよ。平たい金属の棒みたいな刀身の横に溝があるでしょ。そこから魔力を放出することで刃を生成するの。
昨日の試合の衝撃波はその応用で、放出した魔力を刀身に固定せずに、前方に打ち出すことで可能よ」
「なるほど、ザックはつまりビームサーベルみたいなもんか」
「簡単にいえばまあそんなところね」
僕と宮ノ本の会話にサックも加わる。
「ザックとバランて両方とも空中に浮いてるけど、自由に空飛べるの?」
2匹の剣は絨毯の上空数センチを切っ先を下にして立った状態で浮いている。
「いやいや、さすが柵平さん。お目が高い。我々は飛行能力も身に着けているのですよ。手にもって振るだけなんてもう古い! 刀は空を飛ぶのがいまのナウなヤングのトレンドなのですよ。
『もういっちょいく〜? オイッス!』なのですよ」
そりゃヤングじゃなくてソース焼きそばの方だろう。ダバァーするほうだろう。つーか、こいつホントに宮ノ本の魔物か?
僕でもこれほどボケ倒さないぞ。
「バラン、それ『どうだい味は? まろやか〜』のほうだよ。ヤングちがいだよ」
うを、マジかサック。このボケに突っ込むか。
「ええ、基本彼らは自力で空中を移動可能よ。魔力を送って命令すれば、高速移動も可能なの。柵平君のピースも空中を泳げるんでしょ?」
「うん。でもピースは動き自体はゆっくりだからね。本体の防御力が本物のカエル並みで、踏まれただけで強制帰還ものだから、僕の傍にいるために移動するくらいかな」
「ゲコッ」
なんか今日の宮ノ本は生き生きしているように見えるな。魔物の話をするのが好きみたいだ。いや、ただ単におしゃべりが好きなのかもしれないな。
魔物は発現者の欲望を具現化した生き物だから、バランのおしゃべりはあいつの欲望が現れてるのかもしれない。
「握徒も空飛べたらよかったね」
万屋さんが紅茶をみんなに配りながら話す。
「だいじょうぶ、ジャンプすればいいもん」
「きゅきゅうぅ」
リキッドも空飛べたらなあ。せめて走るのがもう少し速ければ。
基本自力で移動できるのはゆるキャラの状態だけだ。小動物にでも変身させて移動させることもできるが、その場合は移動させるのにけっこうな魔力を使う。加えて複雑なかたちの変身と、その維持にもかなりの魔力を必要とするのであまり効率のいい方法とはいえない。
昨日の模擬戦でもダミーの両腕を動かすのにかなり苦労した。訓練すればもっと複雑な動きも可能だろうが、いまの僕じゃ大した動きはできない。
もっとも効率がいいのは、やはり自分でボール状のリキッドを投げつける方法だろう。だがもっと他の方法もあるかもしれない。
リキッドの利点はその応用力の広さだ。それを生かし切れていないのではと自分では感じる。僕とリキッドはもっと強くなれるはずだ。




