反省会
6/3 (土) 午後 理紀宅
「今回はみんな、私と握徒のためにいろいろとありがとうございました。さあ、握徒もお礼言って」
「……」
万屋さんの隣りに胡坐をかいて座る宇宙人のような魔物は、腕組みしたままそっぽを向いて黙っている。
「握徒! みんなにお礼を言いなさい」
万屋さんが叱りつける。
「……ありがとよ……」
腕をくんだまま、ぼそりとつぶやく。
「じゃあ今度は小林君に謝る」
「……」
再び黙り込む握徒。
「反抗期の中学生か」
少し茶化してみる。
「なんだと」
横を向いていた握徒がこちらを向く。
「ほら、握徒! 小林君に大怪我させたのは握徒でしょ。謝るのは当然じゃない?」
今度は諭すように万屋さんが言う。
「コイツも俺を殺そうとしたぞ。あのまま理紀が助けに来なければ、俺はコイツに存在を消されていた」
こいつは結構単純なんだな。
「魔力吸い尽くされたら死ぬってやつか? ああ、ありゃ嘘だぞ」
「え、嘘なの普人くん?」
サックも本気にしてたのか。
「魔物が死ぬわけないだろう。魔力が無くなれば強制帰還されるだけさ。
魔物を殺せる能力なんて世の中にないんじゃないかな。魔物殺すなら発現者殺したほうが早いし」
「あぁ……そうなんだ……」
まずい、万屋さんも信じてたのか。非常に気まずい雰囲気になってしまう。
なんとかしなければ。
「ま、まあ俺に謝る必要はないが、もう万屋さんを触っただけで攻撃するのを止めるのかは聞きたいもんだな。どうだ、握徒?」
肝心なのはそこだ。謝罪が欲しくて戦ったわけじゃない。万屋さんと握徒が他人と関われるようになれれば、他は些細なことだ。
「ああ、貴様に負けたのは事実だからな。約束は守る」
こいつはこういうところはまじめなんだよな。まあ万屋さんの魔物だから根はイイ奴なんだとは思うけど。
「それだけ聞ければ十分だ。じゃあお茶にしようかね」
テーブルには既に万屋さんが用意してくれた紅茶とお菓子が並んでいる。
「握徒も小っちゃくなろうか。その方がラクだしね」
言って万屋さんが握徒に手をかざすと、握徒の巨体がみるみる縮んで昨日と同様のぬいぐるみに姿を変える。
どうやら魔力を抑えることで小型化できる能力が、握徒には元来あったようだ。
「リキぃ、抱っこして」
「はいはい」
小さくなると途端にしゃべり方と性格も子供になるな。まあ見た目に合ってて可愛げがあるほうが周りと接しやすくていいだろう。
「じゃあせっかくだし、僕らも魔物呼ぼっか」
「お、いいね」
サックの提案に賛成し、リキッドを呼ぶ。
右手をかざして集中するといつものゆるキャラが姿を現す。
「きゅきゅっ」
「あ、リキッドちゃん。この前は抱っこできなくてごめんね。今日は大丈夫だから」
やさしく微笑む万屋さんに、リキッドは恐る恐る近づく。そしてちらっと宮ノ本のほうを伺う。
「だいじょうぶよ。もう止めたりしないわ」
初めて2人と会ったとき、宮ノ本に顔面鷲掴みされたのを覚えてたんだろう。
「きゅきゅうっ!」
安心したリキッドはジャンプして万屋さんの胸へと飛び込む。
その大きくて形のよいおっぱいにしがみつき、スリスリと頬をすりつけてプルンプルンの柔らかさを楽しんでいる。
わが魔物ながらなんとゆーけしからん暴挙! くっそう、調子に乗りおってからに。
「オレもやるー」
万屋さんの膝の上に座っていた握徒もジャンプして、ブラウスの胸部分にしがみつく。
「あ、こら、2人ともそんなに暴れないで」
両腕で抱えられた2匹の魔物は、マシュマロのようなおっぱいをプニプニしまくる。
「ぐぬぬぅ、なんつーうらやましい光景だ。俺も魔物になりたい! なりたいぞサック!」
「ボクに言われても魔物にはなれないよ、普人くん」
「ゲココッ」
サックとピースに冷たくあしらわれる。
「宮ノ本もザックとバラン出したらどうだ? 俺も2匹に会ってみたいからな」
ずっと静かだった宮ノ本に尋ねる。
「あ、ボクも会ってみたいよ、宮ノ本さん」
サックも彼女の魔物に興味があるようだ。
「まあいいけれど、あまり気は進まないわね」
いやいやながらも宮ノ本は自分の魔物を呼び出した。




