友和、血迷う
5/4 (木) 午後 第2室内模擬戦場
ばにゅんっ
とボクらはリキッドのマットに落下する。
うわっ、やばかったー。どうやらボクは怪我してないみたいだ。
普人くんは? と確認しようとすると、彼はボクの下敷きになっていた。起き上がろうとするが凄い力でボクの腰に抱きついている。
自分の格好を改めて見ると、普人くんの腰に馬乗りになった状態で、大股開きで密着している。
これはちがう意味でヤヴァい。
「サック、大丈夫か?」
ボクをしっかり抱きしめたまま普ちゃんが上目使いに話しかけてくる。
な、なんですか、その目は! ケダモノ? 飢えたケダモノなの?
ボクらまだお友達になったばかりなのに、いくらなんでも早すぎませんか。
「う、うん。普人くんは?」
よ、よーし、ここはまだ探り合いか。いや、気を抜くな。意表を突いて一気にくるかもしんないからな。
「僕は大丈夫だけど、サックほんとに大丈夫か? なんかおかしいぞ」
なんかおかしいってなんだよぉ! なにこの焦らし。ボクから誘えってことなのか? なんつーイヤらしいテク使ってくんだよぉ。
ボクの腰に巻きつく腕にさらに力が入れられる。
わ、わかった。ボクがリードするから。そんな激しくしないでくれ。
「普ちゃん……うで、痛い」
「腕? 腕を打ったのか。痛みは? 骨折れてるんじゃないか?」
うーわー、すっとぼけるー。ここですっとぼけるー。Sか、こいつこう見えてドSなのか?
な、なんかすっごいドキドキしてきた。す、好きかも。ボクこーゆうの好きかも。
「ちがくて、普ちゃんが抱きついてるから……」
「あ、ごめん」
普ちゃんの腕がゆっくりと、ボクの腰を舐めるように触りながら外れる。
慣れてんな。コヤツそーとー慣れとんな。こんだけ煽られたらそりゃ行くっきゃないでしょ。くっそう!
「あたまは? 頭は大丈夫かい? どこか打たなかった?」
ぐぉあああっ! 戻すか―。ここで話もどすかー。どこまで焦らすんだよー。いじめ、カッコわるい!
「だいじょうぶ……」
やばい、震え声になってる。
い、いい、行くからね。ボクはじめてだけど、い、行っちゃうからね。
精いっぱいの勇気を振り絞り、両手を普人くんの肩に掛け、ゆっくりと胸に飛び込む。
キャーキャー、やっちゃった。とうとうやっちまいましたよ、おかーさん!
緊張で体の震えが止まらない。顔も耳もアッツアツだ。
荒い息遣いが彼の耳元で響いてしまう。
不意に両肩をギュッと掴まれる。そのままお互い見つめ合った状態でゆっくり起こされる。
キタっ、ついにキタっ! チューか、まずはチューからか? それとも今日はチューだけでお預けのパターンか?
でもでもリキッドのベッドの上だし、そのまんま行ってしまうとゆーことも無きにしも非ずか。非ずなのか!
「聞こえるかい、柵平君」
うほおぉお! チューの前に話すタイプか。意外だな。
ははぁーん、普段は無口だけど好きな子の前だとおしゃべりなパターンってやつだな。
「……うん」
よし来い! もうトロットロだかんな。思う存分来なさい。
あっ、あっ、どうしよう。目閉じたほうがいいのかな。それとも最初の記念だし、目に焼き付けたい気もする。
迷う。まようなぁ。
「君は脳内出血を起こしているかもしれない。僕がおぶってくから急いで医務室にいこう。分かるね」
……
……は?
ばちんっ
と大きな音がした。
気付いたら右手をフルスイングしていた。
普人くんの左頬に真っ赤なもみじのプリントができている。
ふざけんなよおおぉ! 恥かかせやがってえぇ! どんだけ勇気振り絞ったとおもっとるんじゃぁああっ!
目の前のボンクラが呟く。
「なんで?」




