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欲望=魔物  作者: クニクニ
2章
28/172

友和、血迷う

5/4 (木) 午後  第2室内模擬戦場


 ばにゅんっ


 とボクらはリキッドのマットに落下する。

 うわっ、やばかったー。どうやらボクは怪我してないみたいだ。


 普人(しんと)くんは? と確認しようとすると、彼はボクの下敷きになっていた。起き上がろうとするが凄い力でボクの腰に抱きついている。

 自分の格好を改めて見ると、普人くんの腰に馬乗りになった状態で、大股開きで密着している。

 これはちがう意味でヤヴァい。


「サック、大丈夫か?」


 ボクをしっかり抱きしめたまま普(しん)ちゃんが上目使いに話しかけてくる。

 な、なんですか、その目は! ケダモノ? 飢えたケダモノなの?

 ボクらまだお友達になったばかりなのに、いくらなんでも早すぎませんか。


「う、うん。普人(しんと)くんは?」


 よ、よーし、ここはまだ探り合いか。いや、気を抜くな。意表を突いて一気にくるかもしんないからな。


「僕は大丈夫だけど、サックほんとに大丈夫か? なんかおかしいぞ」


 なんかおかしいってなんだよぉ! なにこの焦(じ)らし。ボクから誘えってことなのか? なんつーイヤらしいテク使ってくんだよぉ。


 ボクの腰に巻きつく腕にさらに力が入れられる。

 わ、わかった。ボクがリードするから。そんな激しくしないでくれ。


「普ちゃん……うで、痛い」


「腕? 腕を打ったのか。痛みは? 骨折れてるんじゃないか?」


 うーわー、すっとぼけるー。ここですっとぼけるー。Sか、こいつこう見えてドSなのか?

 な、なんかすっごいドキドキしてきた。す、好きかも。ボクこーゆうの好きかも。


「ちがくて、普ちゃんが抱きついてるから……」


「あ、ごめん」


 普ちゃんの腕がゆっくりと、ボクの腰を舐めるように触りながら外れる。

 慣れてんな。コヤツそーとー慣れとんな。こんだけ煽(あお)られたらそりゃ行くっきゃないでしょ。くっそう!


「あたまは? 頭は大丈夫かい? どこか打たなかった?」


 ぐぉあああっ! 戻すか―。ここで話もどすかー。どこまで焦らすんだよー。いじめ、カッコわるい!


「だいじょうぶ……」


 やばい、震え声になってる。

 い、いい、行くからね。ボクはじめてだけど、い、行っちゃうからね。


 精いっぱいの勇気を振り絞り、両手を普人くんの肩に掛け、ゆっくりと胸に飛び込む。

 キャーキャー、やっちゃった。とうとうやっちまいましたよ、おかーさん!


 緊張で体の震えが止まらない。顔も耳もアッツアツだ。

 荒い息遣いが彼の耳元で響いてしまう。


 不意に両肩をギュッと掴まれる。そのままお互い見つめ合った状態でゆっくり起こされる。


 キタっ、ついにキタっ! チューか、まずはチューからか? それとも今日はチューだけでお預けのパターンか?

 でもでもリキッドのベッドの上だし、そのまんま行ってしまうとゆーことも無きにしも非(あら)ずか。非ずなのか!


「聞こえるかい、柵平(さくだいら)君」


 うほおぉお! チューの前に話すタイプか。意外だな。

 ははぁーん、普段は無口だけど好きな子の前だとおしゃべりなパターンってやつだな。


「……うん」


 よし来い! もうトロットロだかんな。思う存分来なさい。


 あっ、あっ、どうしよう。目閉じたほうがいいのかな。それとも最初の記念だし、目に焼き付けたい気もする。

 迷う。まようなぁ。



「君は脳内出血を起こしているかもしれない。僕がおぶってくから急いで医務室にいこう。分かるね」




 ……



 ……は?





 ばちんっ


 と大きな音がした。


 気付いたら右手をフルスイングしていた。

 普人くんの左頬に真っ赤なもみじのプリントができている。


 ふざけんなよおおぉ! 恥かかせやがってえぇ! どんだけ勇気振り絞ったとおもっとるんじゃぁああっ!


 目の前のボンクラが呟(つぶや)く。


「なんで?」

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