天然呼刀
5/2 (火) 放課後 教室
「おや?」
最後の授業が終わったばかりの騒がしい教室のなか、普人くんが生徒の集団となにやら話をしている。
相手はもう1人の小林くんだな。最近普人くんと呼刀くんは仲いいからなー。
だが、他のみんなの反応はあまりよろしくないようだ。
こないだの不適合者判定試験で普人くんの強さがクラスに広まっていた。試験官の上級生を倒したというウワサも流れ、周りの評価は発現しない者への蔑みから忌むべき恐怖の対象に変わっていた。
その上級生が石場くんを殺したっていうんだから尚更だ。クラスには1度も顔を見せなかったのでよくは知らないが、まあもともと模擬戦用のモルモットとして入学させたって話で、相当ガラの悪い生徒だったそうだ。
ここにいる全員がいつ彼と同じように死んでも不思議じゃない。ここはそうゆう所だ。その認識が甘い人間がまだこのクラスには多い。
どこか他人ごとだと考えて、自分にはそんなことは起きないと高を括っている。
普人くんは死にかけたっていうのにその事実には誰も無関心だ。僕と万屋さん以外は。
2人の小林くんが二言三言話したあと、普人くんが1人で教室を出ていく。どうやら誘いを断ったようだ。
そりゃあれだけ周りが毛嫌いしてたんじゃ誰でも付いて行けないだろうに。
そのグループのなかの1人の女子がこちらにくる。
「ねえ、柵平君。あたしたちこれからみんなでカラオケ行くんだけどいっしょにどう?」
やれやれ、普ちゃんのときとは大違いだな。周りのみんなも行こう行こうと楽しそうに勧めてくる。
「あ、ごめん。今日ちょっと用事があるんで帰らないといけないから。みんなで楽しんできてよ」
愛想笑いで誤魔化し、鞄を掴んで教室を後にする。集団心理ってのは怖いもんだ。
「しーんちゃん」
普人くんのあとを走って追いかけ、居住区の入り口付近で追いつく。もちろんみんなにバレないように学園を出るまでは普通に歩いてきた。
まあみんなには僕らが仲イイことはバレているが、誘いを断った目の前であからさまに駆け寄ったんじゃ反感を買うのは必至だ。
「おう、サックか。でもその呼び方はどうも馴染めないなぁ」
「火田先輩はいいのにボクはダメなの?」
すこし拗ねてみせる。
「ダメってわけじゃないけど、養ちゃんとは付き合い長いからなー」
「じゃあボクとも長く付き合えばいーじゃん」
笑顔で答える。
「なんかコワイぞ、その言い方」
「なんだよ、この前はその気になってたのに」
こちらもすこしからかってみる。こーゆう丁々発止のやりとりは上手いしおもしろいんだよなー普人くんは。
「それよりなんでさっきの誘い断ったの?」
わかりきってることでもやっぱり本人から聞いてみたい。
「なんだ見てたのか。ならわかるだろ、あの雰囲気。どー考えても歓迎ムードじゃないだろ。まあ仕方ないことさ」
予想通りの回答をもらったところで一番気になったことを聞いてみる。
「普人くん、最近呼刀くんと仲いいよね」
「そうかな。というか彼が話してくるから答えてるだけだけどね。まあ悪いやつには見えないけど。サックは呼刀のことどう思う?」
う、呼び捨て。十分仲いいじゃないの。てゆーかなんでボク嫉妬してんだ。モチつけ、ボクたちはただのトモダチだ。
「うん、人気あるよね呼刀くん。でもちょっと天然系なのかな。まあそこが好かれるんだろうね、普ちゃんとちがって」
「俺のことはほっとけ。でもまあ問題はあの天然だ。周りが引いてるのに僕に話しかけてくるのはちょっとなー。こっちが心配になるよ。
サックくらい世渡りが上手ければなぁ」
「なんかボクの悪口言ってない?」
まるでボクがおいしいとこ取りばっかしてるみたいじゃないの。
「いやいや、そんなつもりはないよ。柵平さんは人付き合いの天才でいらっしゃるから。その辺のぽっと出とは格が違いましてよ」
うまく誤魔化されたなー。でもオモシロいから許す。
「まあ仲良くなれればそれに越したことはないよ。今んとこ現状維持ってところかな」
「ふーん。まあボクも嫌いじゃないよ、呼刀くんのこと」
「まあ、大胆。最近の若い子はダイタンねー」
さっきからニヤニヤしっぱなしだ。普人くんのこのオモシロさがみんなに理解されればなー。
いや、でもこのおもしろさを1人占めしたい気もするなー。
「そーゆう意味じゃないって」
一応突っ込んどいてそろそろ本題に。
「じゃあ今度はボクの相談に乗ってくれない?」




