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欲望=魔物  作者: クニクニ
1章
13/172

勝敗の行方

4/14 (金) 午後  第1室内模擬戦場


 面倒なことになったな。

 しかしなんで火田(ひだ)さんは2年の俺なんかに不適合者判定試験をさせたんだ。もっと優秀な3年生はいるだろうに。


 それにこの1年、さっき発現したばっかりなのにかなり強い。自分の魔物の特性をよく理解している。さっきのクズとは比べものにならんな。

 火田さんの幼馴染みらしいが手加減なんてできないかもな。つーかこんだけ強ええんだからもうやる必要ないだろ。


 梅田(うめだ)先生はやくブザー鳴らせよ。あんたの方がベテランなんだから霧真者(きりまじゃ)先生も気ぃつかって試験止めらんないだろうが。

 面白がって見てねーで、ヘタすると俺かアイツが死んじまうぞ。


 くそっ、こっちに来やがる。あの左脚も重傷だ。どーなってもしらんぞ、くそっ。

 あのスライムの残りは両手に持ってるので最後のようだ。だがまだ召喚できるかもしれないから油断はできない。

 捕まったカラス2羽は向こう側の壁近くか。スライムは火に弱いみたいだから残りの1羽に向こうまで行かせて2羽ごと焼かせる手もあるが、1年がこっちに走ってきてるってことはその前にケリをつけるつもりだろう。

 だったらこっちはまた挟み撃ちで仕留めに行くか。


 俺のパンチはただの足止めだって向こうも気付いてるだろう。だから奴の狙いは俺よりも最後のカラスなはず。あのボールの2発中1発でも俺に使わせればカラスの捕獲は難しくなる。


 カラスはゆっくり回り込ませて、まずは俺がプレッシャーをかける。

 1年に向かっていき、ある程度の距離で様子を見る。

 小林も立ち止まり粘液ボールを構えるが、背後に回り込ませたカラスにも警戒している。


 思い切って距離を縮める。最悪俺自身があの粘液を喰らってもたぶん即死することはないだろう。なんらかの攻撃を受ける前にカラスの炎でアイツを倒しきれるはずだ。

 すると小林が右手のボールを俺にむけて投げた。

 狙いを外さぬよう慎重に投げたのか、山なりのかなり遅いスピードだ。


 よし、かわせる。


 手前で膜状(まくじょう)に広がったが、ボールが小さ目だった分横っ飛びでなんとか逃げ切った。

 さらに近づいてプレッシャーをあたえる。もう踏み込めば触(さわ)れる距離だ。ここでカラスに攻撃させる。

 奴の背後からバサバサッと羽音を立てながらカラスが飛んでくる。小林が振り返り、最後のボールを右手に持ち替え下手投げで投げつける瞬間、


「吐き出せ!」


 命じるとカラスが両の翼を立てて減速し、数m手前で口から炎を吐き出す。そこから投げても膜状に広がった粘液で炎の勢いは消せるかもしれないが、スライムは燃え尽きる。

 たとえカラスを拘束できたとしても俺が殴り倒すまで。むしろその方がこいつを殺さずに済むから好都合だ。


 小林が右腕を下から上へと振り上げる。

 しかしボールは火を吐こうと口を開けるカラスの前になかなか現れない。

 どうなってる?


 奴の右の肩口から何かが飛んできた。


 つぎの瞬間、俺の鼻っ柱にベチャッと粘着物が張り付いていた。

 肘を曲げ、手首のスナップで背後の俺めがけて最後のボールを投げたのか。


「うおあっちい!」


 小林はカラスの火炎放射を左腕でまともに受けている。

 俺に付いた粘液はヌバアァと顎まで広がり、鼻と口を塞(ふさ)いだままぴったり引(ひ)っ付(つ)いて、両手で剥がそうとしても全く取れない。


 こいつの狙いは最初から俺だけだったのか。

 はじめに俺に投げたボールが外れたのも、もしかして俺を油断させて自分に近づけるためか。


 しかしなんだこの粘液は。まるでゴム製のマスクを接着剤で張り付けられたようだ。このままだと窒息するぞ。

 くそっ。なんとかしないとヤバい。

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