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欲望=魔物  作者: クニクニ
6章
114/172

報告

7/18 (火) 放課後  教室


「はい、みなさん。今日は臨時学級会ということで放課後みんなに集まってもらったのは、ちょっとお知らせしておきたいことがあったからです」


 放課後、いつもは授業が終わればすぐに帰れるのだが、今日は臨時の学級会ということで霧真者(きりまじゃ)先生が教壇に立って話をしている。


 普通の高校なら夏休みがはじまるころだろうが、折谷(おりたに)学園の夏休みは8月に入ってからと遅く、期間も3週間と短い。

 まあボッチの僕は特に休みだからといってなにをするでもなくダラダラするだけの予定だし、ここの教室は冷暖房完備で夏でも少し寒いくらいにクーラーを惜しげもなくガンガン掛けているので、真夏でも至極(しごく)快適な学園生活を送れている。


 夏休みのことは置いておいて、3連休明けの今日、クラスの席には1つ空きがあった。

 呼刀(ことう)が欠席していたためだ。

 今朝、霧真者先生は呼刀が欠席の旨を授業前にみんなに話したが、詳しい理由までは言わなかった。僕はそのことが朝からずっと気にかかっていた。

 もしかして3連休のうちに呼刀が学園から逃げ出したのではないかと心配だった。


 ここ折谷学園は人里離れた山奥に造られた小さな集落のような施設で、唯一の出入り口は商店区東にある入り口ゲートだけだ。

 そこは施設の警備員が昼夜交代で見張っており、監視が厳しいが、そこ以外は防犯カメラがあるくらいでそれほど厳重とは言えない。

 ただ、道と呼べるものは他にはなく、せいぜい西側の実習施設に通じる林道くらいなものだ。つまり脱出するには山を越えなければならない。

 やってできないことはないだろうが、徒歩ではかなりの時間が掛かるし、生徒1人1人に発信機が埋め込まれているのが事実ならすぐにバレてしまう可能性が高い。


「えー、本日欠席している呼刀君ですが、実は連休中、彼は学園からの脱走を試みました」


 嫌な予感が当たったようだ。いや、正確には外れてよかったと云うべきだろう。

 『試みた』ということは失敗に終わった、もしくは途中で断念したということなのだろう。だったらまだこの学園に居て、生きている可能性もある。


 クラスのみんなは途端にザワつきだす。特にクラスの中でも明るく人気のある呼刀が学園から逃げ出したとなると、僕も含め、誰しも少なからずショックを受けるだろう。

 確かに僕と戦った後は落ち込んだ様子ではあったが、その後は特段変わった様子がなかっただけに驚かされた。


「先生、呼刀君は無事なんでしょうか?」


 呼刀と仲のいい佐野(さの)君が質問する。


「ええ、なんとか我々の説得に応じて逃走を断念してくれたので事なきを得ました。まだ学園の敷地を出ていなかったこともあって、彼は現在、学園の実習室で謹慎処分を受けています。

 来週にはまたみんなと授業を受けられるようになるので、みんなあたたかく迎えてあげてください」


 どうやら説得に応じたので謹慎だけで済んだようだ。もし制止を無視して逃げ出していれば、その場で殺されていてもおかしくはないだろう。

 とりあえずは一安心といったところだな。まあ呼刀の心情がどうなってるかは心配だが。


「それともう1点。先週の土曜日に学園敷地内へ部外者が侵入したとの報告がありました。部外者の特徴は20代前後の痩せ型の男性で、なんでも黒い霧のような魔物を使い、発現者の魔力を吸い取るのが目的という話です。

 今分かっている情報では、憑依状態の相手にはどうやら魔力を吸収することはできないようです。

 非常に危険な人物なので、不審者を見かけたらすぐに憑依、避難し、教師か学園関係者に知らせるようにしてください。商店区、学園校舎内でも危険と感じたらすぐに憑依するように。わかりましたね?」


 これはどうやら例の月代(つきしろ)が現れたみたいだな。養(よう)ちゃんの読み通り、魔力を吸収するタイプの魔物らしい。相手が憑依状態だと吸収できないのか。それがわかっただけでもかなり有効だ。


「ではもう一度確認して終わりにしまーす。学園の敷地からは無断で出ないこと。不審者を見たらすぐに魔物を憑依して避難すること。

 以上の2点をしっかり守るように。ではこれで学級会をおわりに……」


「ちょっと待ってください先生」


 霧真者先生が学級会をお開きにしようとしたとき、1人の女子生徒が声を上げた。

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