報告と処分
7/15 (土) 午後 学園長室
「事情は分かった。つまり『黒霧の男』がふたたび魔物を召喚すれば、呼刀君の憑依能力で位置がわかるというんだね」
今朝、学園事務所から1年生が脱走したと聞いたときには驚き、少し残念だったが、黒霧の男が再び現れるとは思っても見ない展開だった。
更に今回は生徒2人に被害はなく、奴の居場所を探れる可能性も得られたのは大きい。
「はい。あ、でも奴が魔物を呼び出しているときに僕が憑依能力を使っていないと分かりません」
「なるほど。だが君に常に憑依状態で見張ってもらうというのは不可能だね。
ではこうしよう。朝昼晩の1日3回、憑依して例の男が検知できるか確認してもらえないかな。もしもその男の位置が把握できるようなら霧真者先生に連絡をいれてくれ。
それでどうだろう?」
「あ、大丈夫です。」
呼刀君の了承を得られた。
「では霧真者先生、なにか分かったら私の方にも連絡よろしく頼みます」
「承知しました、学園長」
霧真者先生も承知してくれたようだ。
「節家君と呼刀君、今回は君たち2人のおかげで他の生徒たちに被害が出ずに済んだ。学園長として礼を言うよ。
ありがとう2人とも」
「いいえ、今回はただの偶然ですし、学園長にお礼を言われるほどのことは何も」
節家君は相変わらず真面目な性格だな。
「ああ、僕はほとんど何もできなかったんで、ほんと、お礼なんてとんでもない」
呼刀君はかなり緊張しているみたいだな。私は彼のことを過小評価していた部分もある。索敵、追跡能力は発現者社会での需要も多い。彼がこれほど優秀な探査能力を有していたとは正直驚きだ。学園にとっても思わぬ利益に繋がる可能性もあるな。
おっとこれは邪推だったか。しかし経営者にとっては必要不可欠な部分でもある。
「しかしだ、小林 呼刀君。今回君の取った逃走行為は非常に軽率で学園に著しく不調和と不利益をもたらすものだ。今回の活躍を差し引いても、決して許されるものではない」
「はい! 申し訳ありませんでした!」
恐縮した様子で赤毛の1年生は深くお辞儀する。
「よって、君には今日から1週間の間、地下自習室での謹慎処分を下す。異論はあるかね?」
「い、いいえ! ありません!」
なかなか元気があってよろしい。
「それと節家君。君自信に逃走の意志は無かったにせよ、逃走しようとする呼刀君を発見したにもかかわらず教師陣への連絡を怠ったことはあまり関心できないな。
あるいは彼の逃走の手助けをしたと取られても仕方のないことだ」
「申し訳ありません。軽率でした」
こちらは落ち着き払っていて、とっくに覚悟を決めている表情だ。
「君にも地下自習室で1日過ごしてもらう。いいね?」
「はい。寛大なご処置に深く感謝いたします」
節家君は呼刀君とは対照的にきわめて冷静で丁寧な受け答えだ。スマートではあるが、少々可愛げというものが足りない気はするな。
「では霧真者先生、2人を自習室の方へ連れて行ってください」
「承知しました、学園長」
メガネの女教師は恭しく頭を下げて2人の生徒を連れて出ていく。
「梅田先生には少しご相談があるので残ってください」
「はい、学園長」
旧知の友はわざとらしく丁寧に答えた。




