06. ピットリの日常1
それから一週間が経った。ピットリはすっかり研究所の主のような顔をして生活するようになっていた。
朝、白崎が出勤するとピットリは飼育ケースの中で待ち構えており、白崎の顔を見ると「ぴっぴっ!」と元気よく鳴く。白崎が蓋を開けると肩の上まで駆け上がり、そのまま白崎と一緒に一日を過ごす。
体はすくすくと育ち、今では握りこぶし大になっていた。羽毛も増え、頭の上の一本の毛が三本に増殖していた。翼も発達してきて、今では廊下をかなりの速度で飛べるようになっていた。だが問題があった、ピットリが恐ろしくイタズラ癖を持っていたことだ。
月曜日の朝のこと。
白崎が実験室のデスクに座り、論文の草稿を読んでいた。ピットリは肩の上でうとうとしていたと思っていた。白崎が目を上げるとデスクの上のボールペンが一本なくなっていた。
「あれ?さっきまであったのに」
ぴっ?(ナニ?)
「ボールペン、知らない?」
ぴっ(シラナイ)。
そしらぬ顔でうとうとしているピットリの足元に光沢のある黒いボールペンのキャップが転がっていた。
「……ピットリ」
ぴっ(ン?)
「ボールペン、どこやった」
ピットリは首を傾げた。まったく動じない。
白崎は、ため息をついてデスク横の引き出しを開けた。そしてそこに敷かれたタオルの下に光るものが大量に集まっているのを発見した。
ボールペン三本。消しゴムのケース(銀色のもの)。ステープラーの針の箱(銀色)。上条のデスクにあったはずのシャープペンシル。代田がよく持っていたコイン。そして、なぜか廊下の壁に貼ってあった「禁煙」と書かれたシール(角が光沢加工されていた)。
「……ピットリ。お前、光るものを集めてたのか?」
ぴっぴっ!(ソウダヨ。キレイデショ!)
「だめだろ!これ全部他人のもの!」
ぴっぴっ(キレイ、キレイ)
「かわいい仕草をしても、だめなものはだめ!」
しかしピットリは白崎の抗議をまったく意に介さず、コレクションを満足げに眺めていた。
白崎は、そのコレクションを回収した。
ぴっ!ぴっ!ぴっ!(ソレ!ボクノモノ!トッチャダメ!)
ピットリは羽をバタつかせ嘴で白崎を攻撃し始めた。
「ちょっとピットリ、痛いよ!やめなさい!」
白崎はピットリに攻撃を受けながら、持ち主に返して回ることになった。
「すいません、代田さん。これ代田さんのコインですよね?」
「ああ!白崎が見つけてくれたのか!どこで落としたのかと思ってた」
「いえ、ピットリが……」
「ぴっぴっぴっ!(カエセ、カエセ、カエセ!)」
「まさかピットリ!ってお前、さっきから攻撃されまくってるけど大丈夫か?!」
ぴっーーーーーーーーーーー!(カエセーーーーーーーーーーー!)
ぐさっ
「いっってぇーーーーーーーー!!」ピットリの嘴が白崎の頭に直撃した。




