05. 反省と謝罪、そしてズラ問題
白崎は所長室の前に立っていた。ドアを三回ノックした。
「入っていい」
低い声がした。
白崎が入ると所長はソファに座って腕を組んでいた。頭の上には、先ほど回収されたズラが再び収まっていた。ただし、微妙にずれている……なぜだ。
「所長、今回は本当に申し訳ございませんでした」白崎は深々と頭を下げた。
「……そこに座りなさい」所長は厳しい目で白崎を見ている。
「はい」
白崎は来客用のソファに腰を下ろした。ピットリは白崎の胸に抱きかかえられながら頭だけ出してちょこんと収まっている。
「その問題の生き物だが」
「はい。ピットリといいます」
「……ピットリ」
ぴっ。
所長はピットリをじっと見た。ピットリも所長をじっと見た。
「処分しろと言ったはずだが、お前はなんで飼ってるんだ?」
「実験で生まれてしまいまして……捨てるわけにもいかず……」
「あれは、本当の事だったのか……だが実験で生まれたなら研究対象として報告書を——」
「報告したらピットリが没収されるじゃないですか」
「当然だろうが!」
「嫌ですよー」
「お前……なぜ嫌なんだ」
「かわいいからですね」
所長は黙った。ピットリがまた「ぴっ」と鳴いた。
「……かわいいとは……思わんぞ……」
声のトーンが、かなり柔らかくなっていた。
「そいつを研究所内で飼うことは……」
「所長……」白崎が目を潤しながら訴えた。大の男が、そんな仕草をしても可愛くはない。
ぴっ?
ピットリを見ながら所長がここで言葉を区切った。
「っく、今回だけだ。特別に飼育許可を出す。機関には、こちらで飼育出来るように私から報告しておくから報告書は出せ。それと!今後は絶対に脱走させるな。わかったか!」
「所長!ありがとうございます!」
「はぁ……頭が痛い」所長は頭を抑えた。
「それでは、失礼します!」
白崎が所長室を出ると廊下に上条、代田、高屋の三人が待ち構えていた。白崎は三人に囲まれた。
「どうだった?」高屋が興味津々に聞いてきた。
「いちおー飼っていいって許可もらいました」
「えっ、マジで?あの所長がねぇ……」代田は目を見開きながら言った。
「でさ……」高屋が少し声を潜め、三人の顔を見渡しながら言った。「所長……やっぱ、ズラだったんだな?」
「ズラでしたね……噂止まりだったのに、今回でピットリが盛大に暴いてしまいましたね」と困惑しながら上条が言った。
一同が黙った。
ぴっ!
白崎の胸に抱きかかえられながらピットリが元気よく鳴いた。まるで「そうだよ!僕がやったんだよ!」と言っているようだった。
「ピットリ……お前はやりすぎだよ……」白崎はため息をついた。




