12. 大鳴き事件
ある朝のこと。
研究所全体に前代未聞の声が響き渡った。
「キョェェエェェーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
数多くの研究員が耳を塞いだ。
実験室で顕微鏡を覗いていた代田が跳び上がった。
「なんだ、なんだ?!」代田は周りを見渡した。
会議室でプレゼン中だった高屋は驚いてプロジェクター につっかかり、落としてしまった。
受付の皆川が持っていたファイルを床に落とした。
そして所長がコーヒーカップをひっくり返した。「今度はなんだ!!!」
研究員達がとある実験室に集まった。
ピットリが窓の前で翼を広げて、のけぞるようにして鳴いていた。窓の外には中庭にカラスが一羽だけ降りていた。
「キョエェェェ!!」
「うるさい!!!」
「もう、鳥の鳴き声じゃねぇよ!この声量もおかしいわ!!」
「これ、夜だったらホラーじゃん……耳痛い……」
「ピットリ!静かにしなさい!!」
「何事だ!!!」
「外にカラスがいるんですが、それでピットリが……」
「またピットリか!カラスの一匹でこんな鳴き声を出すのか!!!」
ぴっぴっ!っぴっ!(アッチイケ!カラス!)
「ピットリ、落ち着いて!」
「キョエェェェ!!!」
「うわあぁぁ!!耳がーーーーーー!!!」研究員達は耳を塞いだ。代田がしかめっ面をしながら耳を塞いだ。上条は何かを悟ったかのような顔をして耳を塞いだ。白崎が耳を抑えながらピットリに駆け寄り、そっと手を差し出した。
「ピットリ、おいで……」白崎はピットリに手を差し出している。
ぴっぴっ……(デモカラスガイル)。
その時、窓の外のカラスは遠くの何かを見つめて中庭から飛び立って行った。
ぴっ(イナクナッタ)!
「ピットリ、動かないでね……」白崎はピットリを手に優しく包み込んだ。
「ピットリ、もうあんなに騒いじゃだめだよ?」
ぴっ?(ン?)
「……絶対わかってないだろ、これ」所長が呆れ顔で言った。
「ですよね……」とがっくしの白崎。
コーヒーまみれになった所長の書類を上条が黙って拭き始めた。
「所長、すいません……」
「……ピットリ絡みで何度目なんだ、白崎。ピットリの鳴き声と声量が通常と異なることは、わかった。今後は外にカラスが来た場合は速やかに窓のカーテンを閉めて視界を遮断しなさい」
「カーテン……ですか?」
「カラスが視界に映らなければ、あんなことにはならんだろう」
「……そうですね、わかりました」
その日から、カラス対策カーテン当番という謎の当番表がカラスが現れる実験室に貼り出されることになった。




