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黒薔薇学園の人形令嬢 ~大悪魔と、嘘で紡ぐ永遠の契り~  作者: 黒薔薇の囁き


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4/12

陽光と棘の狭間

前回まで:

血月の夜に大悪魔セバスティアンと出会った私は、機械の心臓に奇妙な軋みを覚え始めていた。

黒薔薇王立学院の人形女仆長として、霧の翼と棘の翼を統括する毎日。

人形であるはずの私が、なぜこんな異常を感じるのか。歯車の音は静かに続き、私はそれを誤作動だと判断しようとしている。

血月が去った翌朝、学院はいつも通りの賑わいを取り戻していた。

私は霧の翼の食堂を巡回しながら、低位の人形たちに業務指示を出していた。

「A-17は三年生の朝食配膳を、C-9は棘の翼の図書室整理を。遅れのないように。」

「はい、女仆長。」

霧の翼の食堂は朝の陽光が差し込み、明るく活気がある。人間の学生たちがテーブルを囲み、笑い声が響く。

「ねえ、棘の翼のルーカス様見た? 銀髪が本当に綺麗で……昨日すれ違っただけでドキドキした!」

「わかる! 私、ルーカス様のファンクラブに入ってるよ!」

人間の少女たちが頰を赤らめて盛り上がっている。男子学生も冗談を交えながら異類の貴族を話題にする。

「俺はガルド様推し! あの筋肉、近づいたら骨折しそうだけどカッコいいよな!」

「バカ、お前みたいな凡人が近づいたら即殺されそうじゃん!」

笑い声が爆発する。霧の翼の日常は陽気で、少し馬鹿馬鹿しいほど明るい。

私は静かにトレイを片付けながら、そんな光景を観察していた。人形である私は、こうした感情の溢れ方をただ記録するだけだ。

すると、背後から明るい声がした。

「リリアーナさん! おはよう!」

人間三年生のエミリア・ローズウッドが笑顔で手を振っていた。

「おはようございます、エミリア様。」

「ねえ、棘の翼に行ったんでしょ? セバスティアン様に会わなかった? あの黒髪と赤い瞳、遠くからでもカッコいいよね!」

周りの少女たちも「わかるー!」と集まってくる。

私は胸の奥で小さな歯車の軋みを感じた。

ギ……

昨夜の血月の影響か。魔力の流れがわずかに乱れている。

「……セバスティアン・ヴァン・ノワール様は棘の翼の特別留学生です。簡単な挨拶を交わしました。」

言葉を返すと、歯車の音がもう一度小さく響いた。私は即座にそれを無視しようとした。これは誤作動だ。人形に感情など必要ない。

エミリアは私の反応に気づかず、楽しげに話し続ける。

午後、私は棘の翼へ移動した。

ここは昼間でも薄暗く、棘の装飾が壁に絡みつく。異類の学生たちは静かに優雅に歩いている。

廊下の角で、再びセバスティアンと出会った。

「また会ったな、リリアーナ。」

「……ヴァン・ノワール様。」

私は礼をしながら、胸の歯車が再び軋むのを感じた。魔力の乱れが少し強くなった気がする。

セバスティアンは低く笑い、近づいてくる。

「霧の翼の賑やかな声がここまで聞こえるよ。人間たちは相変わらず明るいな。……君は、あの明るい世界と私のいるこの翼、どちらが好きだ?」

私は一瞬、答えに詰まった。

「……私は両翼の秩序を維持するのが任務です。好き嫌いはありません。」

歯車が大きく軋んだ。視界がほんのわずかに揺らぐ。

これは異常だ。すぐに抑制しなければ。

セバスティアンは私の反応を興味深げに見つめていた。

「ふむ……面白い反応だ。君の心臓の音が、少し変わってきたようだな。」

私は何も答えず、ただ礼をしてその場を離れた。

人形である私が、こんな物理的な異常を繰り返すなど、許されないはずだ。

血月の余波が、まだ完全に去っていないのかもしれない。

(第4章 終わり)

次回、学院の日常が続く中、人間学生の小さな規則違反が発生する。

私は女仆長として棘の翼へ向かい、再びセバスティアンと顔を合わせる。

機械の心臓の軋みはまだ収まらない。これは誤作動か、それとも……。

血月の影響は、静かに続いている。

(第5章へ続く)

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