魔道具トラブル ー ライズ王国の王女様
レーン達パーティーのダンジョン攻略はとても順調。
未踏破の場所もどんどん攻略して色々なアイテムを獲ってくる。
「レーンの彼氏ー。魔道具鑑定たのむわ。」
「変なボタンがあるから「魔道具」だとにらんでいるのだ。」
持ってきたのは「小物入れ」。煌びやかな装飾が施されているから高価そうに見える。確かに外側にボタンがついているが……。
で、みてみるとこれはやはり「魔道具」だった。
機能はどうやら「転移系」っぽい。
「転移? ボタンを押したら転移するのかニャ?」
いや、ボタンを押してもすぐには転移しない。これと「対」になっている「小物入れ」のボタンを押さなきゃ起動しないようだ。
「ん……私、押しちゃった。……まずい?」
レーンが試しに押したみたい。
そうだな。レーンはボタンを押した事で「転移対象」となってしまっているから「対の小物入れ」のボタンが押されるとまずい。
その「対」のボタンが押されればその押した人とレーンが「入れ替わってしまう」ようだ。でも解除する方法があるから心配ない。
で、解除しようとしたら……。
レーンが青白い光に包まれた。
あっ! まずい! と思う暇もなくレーンは立ち消えた。これはいかん。魔道具が起動した!
そして青白い光に包まれて女の人が現れた。
高そうな貴族っぽい服を着た若い女の人。
「あら? えっ? ここは……!? どこ?」
誰だ?
「私は誘拐されてしまったのかしら?」
この人を無視して魔道具を確認する。今の「転移」でこの魔道具はバッテリーをかなり消耗したようで「再使用」するには充填が必要みたい。それも数日くらい待つレベルで。
しかもバッテリーとなる魔結晶の純度がかなり高い。手持ちにはここまで高純度の物は無いから交換も出来ない。再使用は無理か。
レーンは一体どこへ? 焦りと不安からこの謎の女の人に詰め寄って聞く。
「これ、私の質問に答えぬか。でないとそのレーンとやらの安否もどうなるかわからんぞ?」
なんだ高圧的なこの女は。てか……は? レーンを危険にさらす?……って言ったか? この謎の女は。
ほぼ無意識に俺は手に万能工具の「スパナ」を出していた。
「ちょ! ちょっと待って! 待って使徒様!」
俺を見て察したパエリアに止められた。
「シーラ王女殿下! 私の事を覚えておいででしょうか。」
王女殿下? パエリアが言うにはこの謎の女は王女様。
「……おうおう、覚えておるぞ。一昨年の剣術大会準優勝のパエリア殿ではないか。」
「王女殿下。此度の事態は事故にございます。ここは港町ササーニシキ。ダンジョン産の魔道具の誤作動にございます。」
「ふむ。……未知の魔道具の力は恐ろしいの。そんな遠くまで一瞬で来てしまったのか。」
パエリアと王女殿下が何やら話し込んでおる。
「なるほどの。ここは……工房か?」
ここはデンダ修理工房だ。
それよりレーンの安否は?
「詰め寄るでない。何、話の通りならレーンとやらは王城の私室にいるだろう。侍女も数人おるし私が戻るまで拘束はされるが無体な事はせんはずだ。」
それを聞いて少しホッとする。
他の皆もホッとしてる。
ところでこの人はどこの誰?
って質問にはパエリアが説明してくれた。
この人はライズ王国の王女シーラ。
少し前に成人したばかりの第四王位の王女様。
だいぶ若そうに見えるけど成人なのか。
で、シーラ王女殿下はいつも使っている小物入れのボタンをなんの気無しに押したら転移してしまったと。確かにこれはパエリアの言う通り事故だ。
「ふむ。ここはデンダ修理工房と言ったか?」
えっ、そうだけど。
「なるほど。では「隷属の首輪」を外したのはデンダ。お前の仕業だったか。」
えっ? なんでわかるの……あっ……。
「目が泳いでおるぞ。此度は調査を出してはいたが……やはり現場に来ると色々な事がわかるの。」
この王女殿下に見破られた。というかカマをかけられたっぽい。
「ええ、あの事件、彼ピの仕業だったのかよ。」
「どうやって外したのだ? 後で外し方を教えるのだ!」
ビビンバとガパオに言われた。まあ、外し方は後でな。
と、ここでフォーが人を連れて来た。
「騎士を連れて来たニャ。」
この港町在住の騎士。と数人の兵士。フォーは居なくなったと思ったらこの町の騎士駐在所に行っていたらしい。
「シーラ王女殿下! いつこの港町へ……。」
「魔道具の事故だ。王都にへ戻る手筈をしろ。」
「……はっ、はい!」
騎士の人は戸惑いつつも兵士達に指令を出す。
で、その指令の中で見過ごせないものがあった。
「フォーを連行しろ。情報部から捜索願いが出ている。逃亡罪だ。」
そういやフォーは以前は国の隠密部隊に居たって言ってたけど逃げ出していたのか。えっ、フォーをどこに連れて行くの?
「フォーは本国に送還される。」
「……ニャー。」
フォーはしょんぼりしている。えっ、フォーを本国に連れて行くって? 連れて行ってどうするの?
「む……フォーは裁判にかけられるだろう。……なんらかの刑罰は免れまい。」
刑罰だって? ……いや……それはダメ。ダメです。
フォーを俺の後ろに匿う。
「む。ダメだと。デンダ殿。」
「……ほう。ダメとな。」
フォーは俺の恋人でウチの従業員だから……ダメ。連れて行かせません。
俺はフォーを後ろに隠しつつ王女さんと騎士を睨みつけた。そして手に万能工具のスパナを出す。
この騎士の人は何回か武器の修理依頼に来ていたから顔は知っている仲だ。
「デンダ殿。それでは道理が通らんのだ。逃亡は罪だ。」
いや、そんな好きに辞められない組織がおかしい。それを道理だと言うのが間違っている。
「む……しかし好きに辞められるものではないのだ。フォーには隊の一員として多額の投資がなされているし機密もある。」
あっ、お金で解決する事なのか? じゃあ明細を出してくれれば金貨100枚でも1000枚でも。時間はかかるが一万枚と言われても払うぞ。
「お兄さん……。」
正直言って自分でも無理を言っていると思う。でもダメだ。こればっかりは。フォーは差し出せない。このまま、フォーと一緒に逃げ出して戦艦に行くか?
なんとかしてレーンも王城から連れ出して……。
そんな俺達を王女さんはチラリと一瞥した。
「ふむ。……そう、フォーはこの工房預かりなのじゃ。」
「王女殿下。 それは……?」
騎士の人が戸惑う。
「ふむ。わからぬか? だがお前にここで喋ってしまえばその「意味が無くなる」のだ。」
「……! はっ! 申し訳ありません!」
騎士の人は察して王女殿下に謝る。
「良い。フォーはこの工房の従業員なのだ。失礼な真似はせぬように。……私はこの工房に残る。あとは頼んだぞ。」
「ははっ!」
騎士の人と兵士は外へ駆けて行った。
「お兄さん、ありがとニャ。」
なんだかわからんが王女さんが助けてくれたのか?
王女さんが「フォーは部隊から逃げた」のではなく「この工房への極秘裏の潜入調査中だった」という事にたった今したという事か。
その王女さんにウインクされた。
「デンダよ。捕虜達を救ってくれた事は感謝しておる。フォー1人、私の権限でどうとでもなる。」
この女王さん、中々に義理堅い。
おかげでフォーが放免になった。
「使徒様? 私への貸しも忘れないでね?」
パエリアに肩を叩かれながら言われた。
うっ……そうだ。俺は王女さんをスパナで殴ろうとしてしまった。それをパエリアに助けられた形だ。
「教会の修繕をお願いしたいの。できれば全体的に直して。女神像の修繕も……。」
中々に無茶なお願いだけど今回は仕方ないか。




