騎士の人に謝罪 ー 王城へレーンを迎えに
馬車の手配を待っている間、
王女様はなぜかウチに居座った。
「このソファーはフカフカじゃのう。お前が作ったのか? 私も欲しい。」
王女様からソファーの製作依頼がきた。
その辺は事態が落ち着いてからでお願いします。
で、まず「転移の小物入れ」は王女様に献上する事になった。俺が説明した機能が確認され次第レーン達のパーティーに報奨金が入る。
王女様が王都に戻ってからの話になるけど。
……そういや、この港町から王都までの距離はどのくらい?
「普通の馬車で5日、速馬車で2日ニャ。」
マジか。王女様が戻ってからやっとレーンが帰ってくると考えると少なくとも4日はレーンと離れ離れになるの? それは嫌だ。
「仕方あるまいに。待つしかなかろ。」
そうなんだけど。
……あっ、そうだ、アレを借りよう。
それでレーンを迎えに行こう。
ーー
工房を出ると何故か王女様がついて来た。
「のう、どうやって迎えに行くのじゃ?」
今からその道具を借りてこようと思って。
あっ、その前に騎士の人に謝っとこう。
さっきのあれはやっぱり良くない事をした。
騎士の駐在所にちょっと寄りたい。
「ふむ。ならば私もついて行こう。私は認識阻害の魔道具をつけているから気にするな。」
王女様はフォーがいつも着けている「ネコミミ」を借りて着けているけどあれって認識阻害の魔道具だったのか。
ー
で、騎士駐在所。
騎士の人に謝ろうとしたらまず怒られた。
そしてかなーり説教された。
「きちんとした雇用主の「しっかり働いている」という証言が有ればフォーも軽い刑で済むんです。」
そういうものなのか。
「デンダ殿がこの町に貢献している事は知っています。ですが女王様の御前です。あなたを斬り捨てていたかもしれません。」
むむ。まあそれは万能工具の防刃防具で防ぐし……ってそういう問題じゃないか。
「フォーの処遇は王女殿下に本当に感謝ですよ。我々には特命という体ですが議会では恩赦という形を取るでしょうから。」
王女様の負担になるって気はなんとなくしてた。
俺は騎士の人のお説教を聞きながらただただ平謝り。
で、お詫びに武器防具の修理を超割引ですると言うと、
「わかりました。では兵士全員分ですよ?」
まじか。兵士の人は数十人以上居るけど今回は俺が悪いから仕方がない。謹んで修理依頼を受けた。
で、帰る時に兵士の人に、
「女の為に隊長に啖呵切ったんだって?」
「大将も見かけによらずにやるねー。」
「隊長優しかったな。いつもはもっと怖いんだぜ?」
兵士の人達にヒューヒューと囃し立てられた。
ちょっと恥ずしかった。
外に出ると、
「ふむ。仕事ができる騎士だの。」
駐在所をこっそり覗いていた女王様。
騎士って管理職っぽくて大変そうだな。
説教された俺が言う事じゃないけど。
ー
で、向かった先はラインフォード商会。
メイー。 久しぶりだけどかーしーてー。
「あら、デンダ。久しぶりー。」
戦艦の島から俺をこの港町へ連れ出してくれた商会の娘メイ。
「聞いたわよ。レーンと付き合ってるって?」
えへへ。……おっと、そのレーンを助けに行くためにあの「小型飛行機」を借りたいんだ。
「あの子を使うの? いいわよ。」
よし、借りれた。
「これは商会の娘しか操作出来ない魔道具と聞いているが。」
女王様はなんでも知ってるな。
この魔道具の「登録者追加」の機能を使ったんだ。
一人しか操作できない魔道具なんて不便だし。
「……なるほどの。」
で、この飛行機に乗ろうとしたら、
「待て。私も連れて行け。レーンを迎えに行くと言う事は2人は乗れるという事じゃろ。」
えっ、王女様も一緒に?
確かにその方が効率は良いけど。
ー
小型飛行機に女王様を乗せる準備をする。
念のため、王女様には【落下防止の魔道具】をつけて(パパスから借りた)、紐をハンモック状にして小型飛行機に王女様を「椅子に座る形」で括り付けて(シートベルトみたいに任意で取り外せるようにもして)。
その長い金髪を結って保護帽の中に入れてもらって、風が強いだろうから防寒作業着とゴーグルをつけてもらった。
これで飛行時のリスクはある程度、低減されたかな。
「なかなか厳重な装備じゃの。」
最大に近いスピードを出して飛ぶつもりなので。
ー
「おほ〜! 風が気持ち良いのう!」
空を飛んだ女王様はノリノリだった。
「のう。お前は仲間に恵まれておるの。」
えっ、まあそうですね。
「さっきは私を鈍器で殴ろうとしたが制止する仲間がいて良かったのう。もし私を殴っていれば……。」
うっ、……あの時はレーンの事で頭がいっぱいになってしまって……。でも、高圧的に脅す女王様も良くないと思いますよ?
「ふむ……。そうか。……私の態度は時に龍の尾を踏む可能性もあるか。」
王女様は俺の言葉に考え込んだ。
「……という事はデンダ。お前は自分が「龍」だという自覚があるわけだ。これは面白い。はっはっは!」
何が面白いかわからんが王女様は1人で笑っている。
雑談しながら飛んでいたら王都に着くのはすぐだった。
ライズ王国の王都。
王都は港町と違って背の高い建物や様々なモニュメント、そして何より「王城」があった。また王城の城壁にはどこかで見たような「巨大な大砲」があった。
港町にも朽ちた「巨大な大砲」の魔道具があったけどその「同型」っぽい。だけどよく見たらこのお城の大砲も「壊れて」いた。外見は綺麗だけど中身の回路などにいくつか異常があって「使えない」みたいだ。
「城のバルコニーに降りるのじゃ。」
と、王女様は何やら魔法を唱え始めた。
「シグナルバレット <信号魔法>」
花火みたいな光が様々な色を見せる。
なんかの合図か。
で、バルコニーに降り立つと、
数人の騎士達が出迎えた。
王女様は素早く降りると騎士に指令を出す。
で、少し待つと騎士がレーンを連れて来た。
……レーン!
思わず走り出した。
レーンを抱きしめる。
良かった! レーンは無事だ。
頭では大丈夫とわかっていたけど、
実際に見ると体が動いていた。
大丈夫か?
城の奴らに変なことされなかったか?
「ん……大丈夫。」
そうか。良かった。
「ん……ごめん。デン。」
いや、いいんだ。誰にだってミスはある。
こうして無事だったからいいんだ。
「ん……。デン、すっごく早く来てくれた。……デン。……好き。」
ああ、レーン。俺も大好きだ。
本当に良かった。無事で……。
……しばらく抱き合っていたけど、
騎士の人に肩を叩かれたので離れた。
その後、「王女様の歓待を受けよ」と騎士の人に言われたけど断った。だって修理依頼がたまっているし納期があるし。
騎士の人達は「王女の歓待を断った」事にどよめいていたけど、すかさず王女が制止していた。
「良い。此度の件は収穫であった。デンダよ。王都には観光に来ると良い。歓迎するぞ。」
観光か。レーンとデートで来たいな。
今度、計画しよう。
で、別れを告げて王都を去った。
行きとは違ってレーンとゆっくり空の旅を味わいながら。
ーー
デンダという若者。
職人気質の悪く言えば「偏執さ」を持つ(特に女が絡むと私にさえ武器を向ける)が有能な男。
……そのデンダが奇妙な事を言っていた。
「【ライズ・カノン】が壊れているだと?」
【ライズ・カノン】。
王城の城壁に鎮座する巨大な大砲の魔道具。ライズ王国の領地の大部分を射程距離とし「巨大な魔力の塊」を砲弾とする国防の要となっている魔道具。
それをあの若者は「壊れて」いて「使えない。」などと言った。あの若者の魔道具の機能を読み解く目は聞く所によるとかなり優れているようだ。
だが小型飛行機に乗りながら遠目で【ライズ・カノン】を一瞥しただけで「壊れている」とわかるものか?
やはりあの若者の戯言ではないだろうか。
【ライズ・カノン】は7日に1回は「試射」をする。先日も問題は無かった筈だ。それが何より壊れていない証拠……、む?
「言われてみれば魔力弾の色が……。」
試射された魔力弾の「色」がいつもと違って見えた。小さな違和感。だけどデンダのさりげない一言のせいで見過ごせない違和感。
もし【ライズ・カノン】が壊れて使えないならば、その事が他国に知られるのは非常にまずい。特に好戦的な聖王国と帝国に知られるのは……。
「……魔法省。非難を恐れて隠匿したか?」
のちに王女シーラはデンダをすぐに帰してしまった事を後悔するのであった……。




