竜刀の改造修理 ー 龍人ジルバと幼馴染
ギュッ
とある昼下がり、レーンから急にハグをされた。
「ん……デン、寂しそうな感じしてる。」
ちょうど日本の事を思い出してボーっとしていた所だった。
「ん……私が居る。」
俺を抱く力が強くなった。
確かに元の世界に名残はある。働いていた所の社長(恩がある)や唯一の肉親の妹。何も言う時間も無いままこの異世界に来て3ヶ月くらい経ってるけどみんな元気してるだろうか。
「やっぱり故郷に帰りたい?」
そう思う時もあるけど、大切なのは今の生活だ。レーンとフォーと一緒のこの生活だ。これは何にも代えられないし代えたくない。
「ん……。」
俺の気持ちが伝わってレーンも笑顔になる。あんまり感情を見せないレーンだけど一緒に過ごす内にその辺はわかるようになった。好きな人の笑顔を見て俺も元気が出てくる。
よっしゃ、今日も仕事を頑張るぞ!
ーー
今日は見慣れないお客さんが修理工房に来た。
「邪魔する。修理を頼みたいのだが。」
頭に「竜のツノ」のようなものを付けている冒険者達だ。男2人と女1人。
フォーもネコミミのアクセサリーをつけているけど同じように「竜のツノ」のアクセサリーをつけている人達なのかな?
「これは珍しいニャ。「龍人」の人達ニャ。」
へー。龍人という人種があるらしい。で、彼らが持ってきたのは折れた刀。大きさ的に「大太刀」と呼ばれるサイズの刀だ。
「この「竜刀」が折れてしまってな。直せるか?」
茶色の光沢を放つ木刀のような刀だ。初めて見るけどどんな素材だろうか?
「なんだ、竜刀を見るのは初めてか。これは竜の骨で作られた刀だ。」
なるほど。竜の骨か。
「この竜刀はその竜骨の中でも一際強靭な部位で作られておる。ま、ダンジョン産だがな。……しかし、ふむ……腕の良い修理工と聞いてきたが……竜刀を知らぬか。」
どうやら竜刀を知らない事にがっかりさせちゃったみたいだ。
でも出来る限りの事はするぞ。とりあえずその刀を借りて万能工具の分析工具で調べてみる。超音波式の非破壊検査工具だ。
で、わかったのは「竜刀」ってのは成分分析的にはかなりの「高硬度」の「魔法的な金属」だった。しかも硬度差のある「層状」の構造でそれがさらに全体の強度を高めていた。
「ほう。竜骨は知らぬというのに竜刀の強さの秘密はわかるか。」
「ん? 竜刀ってそんな秘密だったんけ。」
「阿呆。竜刀が折れた直後の断面を見ておらぬか。「層」があったであろう。」
龍人達同士で言い合っている。
「で、どうじゃ? 直せるか?」
真っ二つに折れた刀を完全に直せるかどうか。
結論から言うと普通に修理するのは難しそう。
確かに超高温で溶かす、叩く、溶接するなどすれば折れた刀を繋げる事は出来る。でも元の層状の構造に完全に戻す事は出来ない。必ずつなぎ目には歪みが生じてしまう。
で、望みがあるとすればこれが「魔法的な」金属である事。
素材の分析的に、原子同士の通常の結合 (金属結合や共有結合)の他に「魔法的な結合」が見てとれた。だから魔法的なアプローチで折れた刀もくっついたりするかも?
龍人の人達やレーンにその「魔法結合」について何か心当たりが無いが聞いてみると……、
「何だと? 竜の骨の強度を保っている魔法? 聞いたことがないな。」
「ん……。私も聞いたことが無い。」
知らないみたいだ。
「あっ、そう言えば……」
龍人の1人だ。
「魔法が得意な奴が居るんだけど、ソイツが「土魔法を使うと持ってる竜骨武器が少し硬くなるような気がする、気のせいかな?」って言ってたような。」
ほう。土魔法とな。
「ん……私、土魔法が得意。」
自慢だがレーンは回復だけでなく色んな属性の魔法が使えるんだ。
ーー
で、色々と試行錯誤した結果。わかったのは土魔法を使う魔力を杖と同じ要領で刀に流すと刀の傷が治るという事だった。
「刀の傷が治る? 治っているように見えないんだが。」
そりゃ治っている傷というのはミクロ単位以下のしかも金属内部の傷だからな。刀が折れる時ってのはそんな小さな傷が内部にできてだんだん大きくなる「金属疲労」が発生している時だし。
「じゃあ土魔法で折れた刀は直せるのか?」
土魔法の魔力をかけ続ければ、雑に溶接して繋いだ後でも元の層の構造を再生するようだ。だけどすごく時間がかかる。レーンの魔法を1日ずっとかけ続けたとして……30日くらいかな。
「一月もか! むむむ、流石にそんなに待てぬな。」
そりゃそうか。そういや、竜刀を直してどうしたいんだ?
「この港町の近くの山に飛竜が現れたと聞いてな。狩りに来たのだ。」
龍人が竜を狩るのか。
「龍人の人達と竜はかなーり仲が悪いニャ。根が深いニャ。」
フォーが色々教えてくれた。なんでも龍人からしたら野生の竜は品の無い下賤な存在だという。まあ、色々事情はあるわな。
で、竜の硬い外殻を破るのには竜の骨で作られた武器が有効なんだと。なるほどなるほど、話がわかってきた。
「竜骨武器はこの一本しか無い。」
「どうする? 今回はクニに帰るか?」
「ふーむ。致し方ないか。準備が甘かったのだ。」
龍人達は残念そうにしているがなんとかしてあげたい。……じゃあ、いっその事、折れた部分は加工して別のサイズの武器にしちゃうのはどうだ?
「なに? 竜刀を加工する? 竜骨は簡単には加工出来ぬぞ?」
いや、まあその辺は万能工具があればね?
「なんと……。」
龍人のリーダーっぽい人が驚愕している。
じゃあどうしようか? 大太刀サイズの刀が半分に折れてるから……脇差サイズの剣にしたりナイフにしたり出来るぞ。
ーー
で、結局やったのは折れたのをさらに切断して「4本の薙刀」を作る事だった。槍に近い形の薙刀だ。
「うむ。鋭い切れ味……これぞ竜骨武器だ。いやはや、これならば楽に飛竜を倒せそうだ!」
龍人達は上機嫌になっている。
かなりの改造修理だったけどなんとかなった。万能工具を駆使した修理の経験のおかげで俺も創造的で機能的な加工ができるようになった。
「竜骨武器は「土魔法」で折れにくくなるとはな。」
「地竜の牙の鋭さの原因はそれか。」
「可能性は高いじゃろ。なんにせよ今日は大収穫であった。ありがとう。」
そう言って少なくない金額の料金を払ってくれた。龍人達はかなりのお金持ちのようだ。
「私は龍国から来たジルバと申す。飛竜を倒したらまた来るぞ。」
うい。ひいきにしてくれそうな客がまたできた。客商売をやってて気持ちの良い瞬間は俺の技術を気に入ってくれて「リピーター」ができる時だ。
「龍人の人達は竜退治を率先してやってくれるありがたい人達ニャ。皆やりたがらない仕事ニャ。お兄さん、ナイスニャ。」
ん、まあそりゃ良かった。
と、修理工房にもう1人客が現れた。
「ジルバー、竜刀は修理出来そうかー?」
龍人達のパーティーメンバーのようだ。頭に「竜のツノ」が無いから龍人じゃない。若そうな男の冒険者だ。
「うむ。竜刀は薙刀として生まれ変わったぞ。ほら、ミナコの分だ。」
「うえっ、武器は苦手なんだけど。」
「腕の良い工房主のおかげで上等な得物だ。突き刺す事だけ考えれば良い。」
「へー、そりゃすごいな。」
その男と目が合った。
「あれ? ……?」
ん? どうした?
「……デンちゃん? もしかしてデンちゃん?」
え? 確かに俺は傳田剛志だけど。
「やっぱりか! デンちゃん!」
そう言って抱きしめられた。
ええと、どなた? てか汗臭いよこの男。
「ほら、俺! ミナコ! 幼稚園一緒だったろ!」
幼稚園て。だいぶ前だけどその名前には覚えがあるぞ。一緒に遊んだ記憶がすぐに出てくる女の子、ミナコ。
あれ? てか目の前のはどう見ても「男」だ。中性的な顔立ちだが声質からも明らかに男。ミナコは女なんだけど。
「いやー。召喚される時に男にされたんだ。」
マジかよ。




