冒険者フォー ー スパナで殴ったった
すみません! 以前アップしていた23話の差し替えです! 吸血鬼はいません!
「ここは修理工房かニャ?」
ニャとかいう若い女性がお客さんとして現れた。
冒険者に見えるその女性の頭にはなんと「ネコミミ」がついておりお尻からは猫のような「尻尾」が生えている。
これは……まさか「獣人族」ってのか? 異世界特有の亜人種か。
「あっ、これはただのアクセサリーだニャ。生えてるわけじゃないニャ。」
なんだ。ネコミミも尻尾もただの飾りか。
「剣の研ぎをお願いしたいニャ。」
ああ、はいはい。剣の研ぎね。
彼女は両刃のロングソードを取り出した。刃こぼれが目立つがこのレベルの損傷なら修理はすぐに終わるかな。
「早く終わるかにゃ? じゃあここで待ってるニャ。」
ネコミミの冒険者は受付用の椅子に座った。
「私は冒険者のフォーと言うニャ。ライズ王国出身ニャ。工房主さんはこの港町生まれなのかにゃ?」
俺は記憶喪失の漂流者だよ。ラインフォード商会に拾われてここで修理工房をやっているんだ。(という事にしている。)
「へー、手に職があって良かったニャね。」
まあな。おかげで割と快適でゆったりした生活をさせてもらっている。この港町に来て恋人もできたし良い事尽くめだ。
で、すぐに研ぎは終わった。
「早いのニャ。出来も良いしさすが評判通りなのニャ!」
俺の評判か。レーン達によると俺の評判は結構良いらしい。冒険者達の間で「金が貯まったら一度は行っておけ」と言われるレベルなんだとか。
「あと風の噂で魔道具をみれるって聞いたけど……」
そう言って取り出したのは銃のような魔道具。片手持ちの短銃のようだが鮮やかな装飾が施されており高価そうな代物だ。
で、なんとフォーは銃口をこちらに向けた。
うわわっ、何をする!
「おっ、その様子だとこの魔道具を知ってるみたいだニャ。」
びっくりした。こいつ俺を試したのかよ。
で、万能工具の「デジカメ」でこの魔道具の機能を確認してみるとやはり見たまま「銃」の機能を備えていた。
マナバッテリーからエネルギーを抽出して「魔力の弾」を生成、そしてトリガーを引けばその弾が高速で射出される機構を持つ。
「この魔道具は引き金を引いてもなんとも言わないから壊れてるのかニャ?」
壊れていると言えば壊れている。その原因は……パパスの魔道具と同じくマナバッテリーの破損だな。
「もし直るんだったら修理して欲しいニャ〜。」
魔結晶を交換すれば確かに直りそうだけどなんかこいつには胡散臭い雰囲気を感じる。ここはちょっとパパスに教えてもらった「お断り営業」をしよう。
まずフォーには前提として「修理っぽい事を試してみるが直る可能性は低い事」を説明する。
「ま、そりゃそうだニャ。」
そしてそれでも費用はちゃんと徴収する。鑑定料金貨150枚、修理費用は500枚だ。例え直らなくてもお金は貰う。なぜって「爆発の危険」がある作業をするのだから。(爆発しないってわかってるけど。)
「うへー、高いニャ〜。むむむ……。」
パパス曰くどんなに良い商品でもお金の話を全面に押し出されると購買意欲が下がるらしい(格安時は除く)。そこからいくら商品説明をしても耳に入らなくなるんだとか。
「むむむ……わかったニャ。そんなに高いんじゃやめとくニャ……。」
おっ、諦めたみたいだ。なんかこの銃を修理するのはある意味で不安だったからちょっと安心。
「じゃあ、今日は強盗だけして帰る事にするニャ。」
えっ? なに? 強盗って言った?
フォーはニヤァっと笑うと目にも止まらぬ速さで俺を殴ってよろめいた俺をロープで縛って工房の柱に拘束した。
ーー
まったく。たまにいるのニャ。こういう抜けてる奴が。稼いでるらしいのに1人でいるなんて無用心すぎるニャ。
「くっ! たすけ……! ぐえっ! モゴモゴ。」
うるさい奴にはさるぐつわニャ。……さて、じゃあそこの金庫の開け方を教えてもらえるかニャ? 正直に話してくれるなら殺さないニャ。(顔を見られているから本当は殺すけど。)
「…………。」
ありゃ、黙っちゃったニャ。拷問なんてやりたくないんだけどニャ。隠密部隊にいた時に習ったからやり方はわかるけどあんまり好きじゃないニャ。
だから拷問はやらずにこうしようかニャ。
工房主さんには「大事な人」がいるニャ。
「…………!」
おっ、顔色が変わったニャ。そうニャ。確か「レーン」って名前の冒険者ニャ。
「むー! むー!」
おーおー暴れてるニャ。よっぽど大事みたいだニャ。彼女はあと少ししたら工房に来るから……金庫が開けれないならレーンを殺っちゃうかもニャ?
「むーー! むーー!」
……なんてニャ! ニャハハハハハハ。
「………………」
おっ、観念したかにゃ。じゃあ金庫の開け方を教えるニャ。
……ニャ?
なんかこいつの目付きが変わったような……。
……ブルルルン! ギャリギュリギャリギュリ!
ニャニャニャ! キチキチに縛っていたロープがあっという間に全て切られたニャ!
いつの間にか「回転するの刃の道具」を手に持っている! ニャンだそれ!
「……チェーンソーだ。」
さるぐつわも外されたニャ。何ニャ? 得体の知れない得物を持ってるニャ。うかつに近づくと危なそうニャ。
……ニャ? 今度は代わって両手持ちの大きな筒みたいな物を持ってるニャ……もしかしてあそこから何か飛ばすニャ!?
ドン、ドン、ドン!
なんか輪っかみたいものを飛ばしてきたニャ! ニャ! 速い! グハッ! これは何ニャ! 体が「輪っか」に縛られてる!
ドン、ドン、ドン!
しかも連続で撃ってきたニャ!
「結束バンド射出ガンだ。よくある奴だよ。」
こんなのよくないニャ! 何ニャ!? 「結束バンド」って! くっ、手も足も縛られて柱に括り付けられたニャ。
一瞬の間に完全に形勢が逆転しちゃったニャ。
くそっ、奴はなんかずっと無表情なのが怖いニャ。でも油断してるニャ。まだ手足を縛られてても口が動くにゃ。「毒口針」だニャ! ププッ!
キン!
ニャ? なんか奴の体全体が一瞬で分厚い防具で覆われたニャ。次から次へとニャンニャンだ。
「ほら、金属ブラシのサンダーとか使う時に破片が飛んだら危ないだろ。ただの保護具だよ。」
ニャー! なんなのこいつの力は。
まさかこんなに強いニャんて……。
このまま騎士に連行されれば私は本国に送還されてまた元の部隊に……それは嫌ニャ。
もう「扱き使われる側」は嫌なのニャ。せっかく隊から抜け出して私は自由になったのに。「扱き使う側」になろうと思ったのに!
「じゃあこんな強盗してちゃダメだろ。」
コツン。
そいつの手に持っていた「スパナ」で殴られた。悪い事をしたのを叱るように軽い威力で。そして頭にジンジンする痛みがなんだかジワジワと心に染みてきた。
「真っ当に自由に生きたかったんだろ? 本当は。」
隠密部隊に居た頃は怒られたり叱られたりする事は嫌で嫌でしょうがなかったのに。なんだかこの人に叱られていると胸が暖かくなった。
「自分がされた事でも人にしちゃいけない事があるだろ。こんな事はもうやめろ。」
なんでかこの人には自分の事を見透かされてる気がする。なんでだろ? でもそんな風に言われたら……なんだか目の前が滲んできて……
「ありゃ……泣き出しちゃった。」
知らずと涙が止まらなくなった。




