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万能工具で異世界修理屋  作者: 武川やまね
第一章 修理工房編
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魔道具の修理 ー 爆発はしませんよ?


今日は冒険者じゃないお客さんが来た。


「お久しぶりです。デンダさん。」


ラインフォード商会のパパスだ。「お酒を出す魔道具」の鑑定の追加料金100枚を持ってきた。


聞くとその魔道具から出たお酒は商会で販売しており売れ行きも好調らしい。そしてほんの御礼だと言われてそのお酒を頂いた。やったぜ。



「今度はこの魔道具を見て欲しいのですが……」


そしてパパスから追加の魔道具の鑑定依頼が来た。持って来たのは「玉」のような魔道具。サイズはみかんと同じくらいでそれが3つ。


「ここを押すと風が出る魔道具という事までわかっているのですが。」


そう言って玉の出っ張り部分をパパスが押すと玉から風が流れた。ボタンを押したら涼しい風が出るこれは扇風機みたいな魔道具だろうか?


とりあえず万能工具のデジカメで撮って機能の確認をする。


そしてわかったのはこれは扇風機の魔道具ではなくて一言で言うと「安全帯」だった。安全帯ってのは工事現場で高所作業する時に落ちないように腰につけておくフック付きの奴だ。


この魔道具はそれに類する機能を持つ。


まず「玉」の模様のある所を長押しすると伸縮する紐がしゅるんと出る。そしてその紐を腰付近に結びつける。


こうしておくと高い所から落ちた時にこの魔道具が発動して体を風が纏いゆっくりと安全に落ちる事が出来る。


「ほう! そんな効果が! ……本当にあるのですか?」


パパスはいまいち半信半疑だ。確かに実際にこの目で見てみないことには信じられないのもわかる。


だから俺が実践する。この魔道具を身につけて修理工房の屋根の上から飛び降りてみる。



「デンダさーん! 大丈夫ですかー?」


大丈夫だ。俺の万能工具がそういう機能だって言ってるから大丈夫なはずだ。確かに少し不安だけど。



思い切って飛び降りる! 


すると腰の魔道具が光って風を発したかと思うと俺の落下が遅くなった。パラシュートで落ちる時以上にゆっくりで安全に着地出来た。


「おお! 素晴らしい! 落下軽減の魔道具なんですね! ではこの玉の出っ張りはなんの意味が……?」


押すと風が出るボタン。これは「故障チェック」のボタンのようだ。これを押して風が出なかったらこの魔道具は正常に働かない。壊れたのに気づかないまま使わないための機能だ。


「なるほど。では風が出ないこの1つは壊れているのですね。」


パパスはこの安全帯の魔道具を3個持って来ていたがその内1個はボタンを押しても風が出なかった。だから壊れているっぽい。



その壊れている原因は「マナバッテリー」の故障だった。この魔道具の構造は簡単に言ってマナバッテリー→→抵抗回路→→エネルギー発現回路→→機能放出装置となっている。


マナバッテリーの故障原因は分解して見てみればはっきりわかるだろう。なので「分解操作」をしてみるとこの丸い魔道具はパカっと2つに割れた。


で、中を見てみようと思ったら……。


「うわわっ! 爆発するーっ!!!」


パパスが慌てて修理工房の外へ駆け出した。えっ? 爆発? 普通に外れる所を外しただけなんだけど爆発すんの? 


……というか爆発するなら俺も逃げた方が良かったか? でも2つに割れた魔道具は別に爆発したりはしないようだが。


その割れた2つの魔道具を見てみると確かにマナバッテリーと思われる「赤い結晶」が割れていた。この赤い結晶はバッテリーとして機能しておらずこれを新しいものに交換すれば直せそう。


ただこの赤い結晶は万能工具の「消耗品」としては出せなかった。だからどこかで調達する必要があるかな。



「爆発……しませんか?」


修理工房の扉からひょっこり顔を出すパパス。


「ん……何かあったの?」


ちょうどレーンが修理工房に来た。


レーンとパパスに事情を説明する。この魔道具は一応外れるように外したから爆発はしない事を説明した。


そしたら魔道具は無理矢理に分解しようとすると大抵が爆発したという事例が多い事をレーンに教えられた。


確かにこの赤い結晶であるマナバッテリーとエネルギー発現回路が短絡(ショート)すれば大きいエネルギーが流れて爆発はする可能性があると考えられる。


でもこの外し方は無理矢理では無いしマナバッテリーと発現回路ははそれぞれに分かれるから短絡(ショート)は考えられない。



「いやー、さすがに驚きましたよ。」


俺もパパスの大声に驚いたよ。後でメイにお前のオヤジはこういう時に一目散に逃げるタイプだぞとチクっておこう。


で、この「赤い結晶」が手に入れば修理できそうだと説明すると、


「これは……魔結晶ですね。魔結晶の採れる鉱山かダンジョンで手に入る宝石です。この大きさでしたら中階層のモンスターが稀に持っていますね。」


入手性はそこまで悪くなさそうだ。

そしてその魔結晶は装飾用の宝石として取引されているようで少し値が張る。と言っても金貨10枚とまではいかない価格。


「ん……ちょうど持ってる。使う?」


レーンがちょうど良い大きさの魔結晶を持っているみたい。それを貰ってこの魔道具の差し込み口にフィットするように研磨する。


「デンダさんは魔結晶研磨も出来るんですね。」


万能工具の「宝石研磨機」だ。「ビー玉」サイズの楕円に整えて一部分を平らに磨いたらを魔道具を組みこむ。


そして魔道具を組み立ててボタンを押してみると風が流れた。どうやら直ったみたいだ。


「まさか魔道具も修理してしまうとは……。」

「ん……誰も出来なかった事をやってる。」


まあ魔道具も誰かが作ったものだしな。機能や構造がわかってちゃんとした作業が出来るなら誰でも可能な事だと思う。



そんな修理工房のやり取りを見ている影が1つ。


「魔道具を……修理だと?」


そいつは真っ黒の胴体にギョロっとし目をしている。


「ふふ。そんな事が出来る奴がいたなんて。これは大発見だニャン。」


黒い影が足音も無く修理工房の屋根を移動した。



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