レーンのパーティー ー 異世界の常識は私が教えてあげる
俺達はいそいそと高級宿を出る。
今の時刻はちょうど昼時。2人ともお腹が空いたので風俗区の隣の商業区の飯屋に行く事にした。すこし料金は高めの飯屋だ。
「ん……ここは美味しくてオススメ。」
「へー、それは楽しみだ。」
レーンのオススメのお店か。なんか2人での食事ってことで「デート」っぽい雰囲気が醸し出されたように感じる。その雰囲気を意識するとつい顔が緩んできてしまう。
いかん、みっともない顔をレーンに見せられないと思ってレーンを見ると顔がにやけているのは俺だけじゃなくレーンもだった。
「ふふ。」
「はは。」
お互いに顔が緩んでいる事に気づいて笑い合う。出会いから今まで急展開だったけどなんか「通常軌道」に乗ったような感じ。それをレーンも感じているようでお互いに通じ合ってる感が心地よい。
なんて良い気分でいたら不本意にも邪魔が入った。
「あれ? レーンじゃん。」
「レーンなのだ。しかも男連れなのだ!」
ビキニアーマーを身につけたマッチョで背の高い女性と外套を見に纏った小柄の女性が店に来た。
「……ビビンバにガパオ。」
話を聞くとレーンのパーティメンバーのようだ。体がムキムキな方が「ビビンバ」で、小柄で「なのだ」って言ってる方が「ガパオ」だ。
「おいおい誰だよ。その男は。」
「私達に紹介するのだ!」
「ん……彼氏。修理工をやってる人。へへ。」
照れながら答えるレーン。それを聞いて2人が囃し立ててギャーギャーと騒ぐ。「男っ気の無かったレーンが!」「いつの間に作ったのだ!」と。
そして俺は2人にジロジロと見られた。
「ふーむ、まあまあ筋肉あるじゃん。やっぱり男は筋肉よな!」
「いーや、男はテクニックなのだ。簡単な「鍵開け」もできない男はダメなのだ。」
ビビンバは大剣使いの「重剣士」でガパオはナイフ使いの「盗賊職」だとレーンが教えてくれた。レーンのパーティーは「重剣士・盗賊・魔法使い」の女3人のパーティーみたい。
「そういや鍵開けで思い出した。聞いたか? 捕虜にされてた奴らの「隷属の首輪」が全部外れたらしいぜ!」
「謎の「鍵開け屋」なる人物が全部やったらしいのだ! どんな鍵開けをやったのか見てみたかったのだ〜。」
「ん……私も噂をすこし聞いて知ってる。」
どうやらもう噂が広まっているようだ。俺とレーンは目が合うと2人でニヤッとして知らないフリをした。2人だけの秘密だ。
ー
「レーンは冒険者を辞めちゃうのだ? これ以上パーティーメンバーが減るのは嫌なのだ!」
ガパオが心配そうに俺に聞いてきた。
ん? 俺がレーンに冒険者を辞めさせるのかって話か? いやいや俺がレーンの彼氏だからってレーンを束縛するつもりはないぞ。レーンのやりたい事を応援するだけだ。
「よく出来た彼氏なのだ! 安心なのだ。」
「ん……デンは良い人。」
なんかそう言われると照れる。
「でも心配にはなるだろ。俺達は結構攻めてるパーティーだぜ。」
聞くとレーンのパーティーはダンジョンの最前線攻略組とまではいかないが一歩手前で未踏破部分の攻略をするパーティーだった。
確かに危険な目に合うのは少し心配だな……。
「彼氏さんは戦闘は得意なのだ?」
正直に言うと戦闘は苦手だな。
この異世界に来てやった戦闘と言えば……戦艦内に大量発生していた「ゴキブリ」を(万能工具を駆使して)倒しまくったぐらいかなあ。
「ゴキブリしか倒したことのない男か。じゃ戦力としては望み薄だな。」
そうはっきり言われると少し傷つくが俺に出来ないものしょうがない。俺はできる事でレーンを応援する事にしよう。
「皆の装備で修理が必要なものがあったら持ってきてくれ。格安で請け負うぞ。」
俺がそう言うとビビンバとガパオの目が怪しく光った。
ー
「いやー、剣の研ぎが溜まってたんだよ。」
「修理工の彼氏で助かるのだ! さすがなのだ!」
調子の良い事を言うビビンバとガパオ。
「ん……私も彼氏が働いているのを見てみたい。」
とレーンも言うので皆の装備の修理をする事になった。俺の修理工房へと皆を連れて戻る。
「ラインフォード商会のお墨付きの工房かよ。」
「しかも彼氏は工房主なのだ? こんなに若いのに。」
看板を見て2人は驚いている。ま、お墨付きをもらったのは修理工としてじゃなくて鑑定士としてだけどな。
で、ビビンバが取り出したのは2本の両刃のロングソード。ガパオが取り出したのは沢山の「投げナイフ」の束。
それぞれ2人のサブ武器だそうだ。
で、それぞれ万能工具を駆使してしっかり修理した。レーンを守るものと思うと修理にも気合が入る。
基本的には「研ぎ」をしてそれに加えて使いやすいように「その他調整」をした。
「うわっ! スゲー斬れ味になってるしなんか手に馴染むぞ!」
「むむっ! 斬れ味以外にもなんか変わったのだ。……全部の投げナイフの重心がなんかぴっちし揃ってるのだ!」
2人はびっくりしている。なに。ちょっと研ぐついでに色々と不具合があったから直しただけだ。半端な装備じゃレーンを守れないからな。
えっ? これで代金はいくらかって?
大体30分もかかってないから要求する代金は銀貨1枚だけど友達価格の二分の一として……銅貨5枚かな。
「は? このレベルの研ぎで?」
「冗談なのだ? この改造も?」
2人に驚かれた。
「ん……安すぎる。銀貨1枚でも安すぎる。」
えっ、そうなのか。
「……普通の修理なら全部で金貨2、3枚くらいは貰ってもいいところ。でもデンの修理は個人に合わせた特注の改造もはいっているから金貨10枚〜はとっても良いかも。」
俺が思ってるより全然、桁が違った。そうだよな。相場ってあるよな。
「……デンは腕前はすごいけど常識が無いのが心配。」
レーンに心配された。まあ確かに正直言ってこの世界の常識を知らない。
「……でも知らない事は私が色々教えてあげる。だから問題無い。」
おお、それはすごく助かる。
「ふふ。」
「へへ。」
レーンと恋人になって良かった。
「おい、イチャイチャしてんじゃねーぞ。」
「2人の世界に入るななのだ!」
ビビンバとガパオに怒られた。




