魔女レーン ー 恋人同士
昨晩は色々と大変だった。
捕虜の人達の首輪を外していたら魔女の子が現れて。その子と協力して全部外せたと思ったら魔女の子に「防音の効くとこ」に連れてかれた。
この港町の風俗区にある高級宿の一室。そこでは一言で言うと色々あった。今の時間はまだ昼と言うには早くてスズメがチュンチュン鳴いているというには遅い時間。
俺はベッドの上で目を覚ました。
「う〜、う〜〜。」
俺の隣には枕に顔を埋めた魔女の子が居た。
「う〜、恥ずかしい……」
魔女の子は裸で恥ずかしそうに呻いている。
えっ? ……恥ずかしいって?
「えっ? 汗だらけの疲れた俺に対して暴れ馬を御するカウボーイように振る舞ったのに? そもそもいきなり俺をこんな場所に連れて来たのに?」
実際、ほぼ彼女がリードしていたんだが。
「う〜、言わないで〜。」
魔女の子はさらに枕に顔を埋めてジタバタ足を動かす。
いや魔女の子と言うと怒られる。この御方の名前は「ナシゴレーン」だ。大魔女ナシゴレーン様と言った方が良いか。最中にそう呼べと罵り交じりに言われた。
「ですよね? 大魔女ナシゴレーン様?」
「うう〜、大魔女様って言わないで〜。」
大魔女様はさらに恥ずかしそうに顔を埋める。なんか大魔女様の態度が昨晩と全然違う。いったいどうした。
「大丈夫ですか、ナシゴレーン様。」
「ううっ、その名前は言わないで〜。私の名前はレーン。様付も敬語もやめて〜。」
ナシゴレーン様はレーンというのか。
「わかったレーン。落ち着いたらちょっと話をしよう。」
「うう……」
少し待つとレーンが落ち着いたので話をする。
まずは自己紹介から。
レーンは魔法使いの冒険者。この港町出身で冒険者稼業をして生計を立てているそうだ。
ところでなんか昨晩と性格が違うけど?
するとレーンは頭に被っていたつばひろの帽子を指差した。このいかにも魔女っぽい帽子は「魔道具」で「魔法威力強化」と「精神を落ち着ける」効果があるらしい。
しかしこの帽子を被ったまま魔法を使っているとその「副作用」で使用者の性格をだんだんと変えてしまう。帽子を外せばその副作用は無くなるがその影響は少し残る。
だから今はその副作用が消えてレーンには「やってしまった感」の恥ずかしさだけが残ってると。自分の事を大魔女ナシゴレーン様だっていう厨二病的なヤツもその効果っぽい。
ところで昨日はなんで捕虜達の所に居たの?
そもそも捕虜達はほとんどがこの国の兵士らしく、その中にこの街出身の女友達が居たみたい。その子の様子を見に来たら俺が居て……って事か。
「皆の首輪を外してくれて……ありがと。」
照れながら言われると俺も照れる。
で、なんで俺にこんな事を? ナシゴレーン様の性格のせいか?
「ううっ、だってカッコ良かったから……」
だからそんな照れながら言われると俺も照れる。
で、改めて見ると彼女は銀髪ショートの女の子だ。背は俺より小さいが胸の大きい女の子。魔法使いだからか細い腕をしている。
今のレーンは裸でうつ伏せの状態だ。
……これは。
「……えっ?」
今度は立場が交代した。
ーー
「うう〜〜。」
レーンはさらに顔を埋めて唸っている。
俺って異世界に来てから体力というか精力というかそういうのが無駄に溢れている気がする。たぶん勇者補正とかそういうのかな。
まあそれは置いといてこれからどうしよう?
「なあ、レーン。これから俺達どうしよう?」
「……これから?」
勢いとは言えいたしてしまったわけだからハイじゃサヨナラとはいくまい。でもここは異世界だから異世界の男女の常識とやらがあるかもしれない。
レーンにこういう男女について聞くと。
「ん……いつも一緒に居たり……一緒に行動したり? ……チューしてたり……ううっ。」
言ってて顔が赤くなっていくレーン。
レーンも正直言ってそういうのに疎くてよくわからないとの事。しかも俺が初めてだったみたいだし。ただこういう事をするのは恋人同士が普通なんだという事を言われた。
その辺は俺の常識と同じか。
「わかった。じゃあなろう! 恋人同士に。」
思い切って言ってみた。内心すっごくドキドキしているが言ってみた。
「うえっ! ……でも。お互い好き同士じゃないと……。」
「俺はレーンの事、好きだぞ。レーンは俺の事どう思う?」
「……嫌いじゃないかも。」
「……」
「う〜……好きかも。……う〜。」
恥ずかしさで枕に顔を埋めるレーン。
なんか可愛いな。
完全に成り行きだがレーンという恋人が出来た。




