機械の首輪を外す ー 魔女と一緒に
まず万能工具の「ペインター」で真っ黒く塗った「ウェス」を縫い合わせて即席の黒装束を作った。目元しか出ないタイプのいわゆる「忍者の装束」だ。
それを着て。
夜の街に繰り出した。
この真夜中に捕虜の人達のいる場所に乗り込んで「機械の首輪を外せるんです!」と主張してみても怪しい人物以外の何者でもないなと思ったから忍び込んでこっそりと実行する。
それしかないと思った。
普段の俺だったら絶対にこんな事しないんだが。
ー
昼には活気があったこの港町も真夜中にもなるとしんと静まり返って誰もいない。
道中、2回ほど巡回の騎士とすれ違ったが物陰に隠れると完全に見えなくなるみたいで見つかる事は無かった。
この黒装束に塗った黒の塗料は服の折り目が完全に見えないくらい漆黒だからそれでバレなかった模様。
で、目的地についた。
町外れのもと牛舎だった施設。ここに捕虜の人達は集められている。見張りはおらずただ牛舎のドアは鍵がかかっていた。
その南京錠っぽい鍵は仕方がないので万能工具で一刀両断にさせて頂いてこっそりと中に入った。
ー
中では全員がわらの上に並んで寝ていた。
当然ながら辺りは暗く灯りは牛舎の隙間から入る若干の月明かりしかない。精密作業なんで何かしら灯りを出したいけど見つかるのも嫌なんで暗い中での作業になる。
とりあえず1番近くの人の所に行く。
女の子か。
こんなにガリガリになって……
この子の機械の首輪から取りかかった。
まず機械の首輪の「魔導回路」がある場所を剥き出しにする。その方法は「マイナスドライバー」で「薄いふた」を剥がすように一部の外装こじ開ける。
この時気をつけなければいけないのは魔導回路を傷つけないようにする事。
この魔導回路が傷付けば最悪、この魔道具が発動して着けてる人が死ぬ。
それだけは避けなければいけない。
カリカリ カリカリ カリカリ……
慎重に、慎重に。
カリカリ カリカリ カリカリ……
……カコン。
コツコツと削ってなんとかふたを外す。
よし。
ふたを開けると魔導回路が見えた。見た目はちょうど基盤みたいな感じだ。魔力を通す配線があって何かしらの機能を持つ端子が付いていて。
で、今度はこの首輪の「鍵穴」に万能工具で「鍵」を模したものを突っ込んだ。
そして今度は戦艦から持ってきた普通の工具の調整用マイナスドライバー(細いマイナスドライバー)で魔導回路の配線を順番とおりに傷つけて行く。
ガリ ガリ ガリ ガリ ガリ ガリ
この配線を傷つけた後、……
ガリ ガリ ガリ で鍵を回せば……ガシャン!
よし!
機械の首輪が外せた!
「ううっ。あ……な……た……誰?」
首輪を外した女の子が気づいた。
「俺か? 俺はただの「鍵開け屋」だ。もう夜は遅いからゆっくりお休み。」
「…………。」
そう言うと女の子はゆっくり目を閉じていった。
さて、一個の首輪を外すのに5,6分かかったぞ。
ここには50人くらいいるから急いでやらないと。
と、思ったら。
ドスッ
背中に何か固いものを押し当てられて、
「ここで何してる?」
若い女性の声だった。
うわっ! 見つかった!
恐る恐る両手をあげる。
「もう一度聞く。ここで何してる? この女の子にエッチな事?」
「えっ いやいや、違う違う、 首輪、 首輪外してたの、」
小声で訴える。
「……は? 嘘ならもっとマシな嘘をつく。この首輪は外れない。」
「ホントホント、 ほら、 ここに外れた首輪。」
そう言って女の子の首元を指差す。
「……! 。外れてる。……どうやって?」
とりあえず彼女への説明は魔道具の鑑定士の能力がある事とか鍵っぽいものを自作してきたといった事を適当に言う。
「ふむ。じゃあもう少し詳しく教えて。ここで何してる?」
「ここの人達全員の首輪を外そうとしてる。」
「理由は?」
「こんな首輪着いたままなんてヤだろ?」
「……。」
「……。」
お互い沈黙が走る。
「……わかった。好きにするといい。」
「……そうか。じゃあアンタはどうするんだ? 通報するか? 出来れば外し終わるまで待ってて欲しいんだが。」
「いや、通報しない。見てる。」
見てるか。まあ別に見られててもやりにくいって事も無いから良いか。
とりあえず2人目にとりかかる。
さっきと同じ要領で魔導回路の剥き出しをする。
カリカリ カリカリ……
「ねえ。」
「ん? 何だ?」
話しかけられた。
「もしかして良く見えてない?」
「そりゃそうだろ。こんだけ暗いんだから。」
「ん。わかった。……ナイトアイ <暗視> 」
彼女がそう言うと俺の視界がまるで暗視ゴーグルを付けてるみたいに視界がはっきり見えるようになった。
「これは……!」
「しばらく持つ魔法。切れたらまたかけてあげる。」
これが魔法か。
で、はっきり見えるようになったのであらためて彼女がどんな人物か見てみる。
なんか一言で言うと彼女は魔女だった。
つばひろの帽子を被って、
手に杖みたいなのを持っている。
しかも胸がでかい。
「……何?」
「……いや、なんでも。」
とりあえずこれで作業が断然しやすくなった。薄暗い所での作業とはっきり見える状態での作業とでは格段に能率が変わる。
俺は慎重に首輪を外して行った。
「……」
そんな俺の様子を彼女はただじっと見ていた。
ー
「はぁはぁ。」
さすがに数が多い。
もう2時間以上は作業を続けている。
「ん……ヒール <体力回復>」
「おっ、ありがと。」
この謎の魔女はこうやって俺に暗視の魔法や体力回復の魔法をかけてくれる。これが無かったら倍の時間がかかっていただろう。
順調に首輪を外して行く。
「よし……これで最後。」
「ん……お疲れ様。」
最後の首輪を外した。
「はーーーー、疲れた。」
俺は地面に寝そべった。
体力回復の魔法はかけられていたけど体の芯の疲れというかそういうのは残っている。あとは家に帰ってゆっくり寝たい。
「……まだやる事がある。」
魔女の子がなんか言い出した。
「えっ? 何?」
「立つ。まだする事がある。」
ええ、一体なんだよ。
「ん……ハイヒール <強体力回復> 」
なんか強体力回復の魔法をかけられた。
仕方がないので立つ。
「こっち来る。」
手を握られて誘導された。
何だ? どこ行くんだ?
外はまだ日が出ていないがもう少しといった所だ。
「防音が効くとこに行く。」
は?
「なんで。そんな所に。」
と、彼女はいきなり俺の手を自分の胸に押し当てた。
「うえ!?」
唐突な胸の感触に驚く。
すっごく……柔らかい。
「あんなのをみせられてときめかない女はいない。来る。」
「ええええええ。」
俺はそのままグイグイと「防音が効くとこ」に連れられた。
そこでは俺の悲鳴がこだました。




