港町をぶらつく ー 教会で女神に会う
修理工房を開店した次の日。
俺は店をお休みにしてこの港町をぶらついていた。
この町は海の男とか冒険者とかガラの悪そうな連中は多いけど治安はそこまで悪くなさそう。
また食べ物系の出店も多い。
あっ、この餅みたいな食べ物ウメーな。
このふかしナッツみたいなのもウマい。
しかも合わせて銅貨2枚だと!
うーん、コスパが良すぎる。
小金持ちの俺は「食べ歩き」を満喫していた。
ー
なんか波止場近くにでかい「トンネル」みたいなのを発見。
いや、トンネルと言うよりかでかい「砲身」?
めっちゃ苔むしてるし立ち入り禁止のようにロープが張られている。出店のお姉さんに聞いてみるとあれは「超大型魔道具」らしい。
かなり昔に海から現れた「災厄」をあれでぶっ倒したらしくてその伝承がずっと残っているんだと。
へー。
試しにデジカメでパシャっと撮ってみる。そしてわかった事はその超大型魔道具はかなり壊れているという事。
構造はシンプルだけどエネルギー源のエンジン部分はそのもの自体が無いし何やら「波動」を出す部分は大破してて配線も殆どが無かった。
こりゃ直すってレベルじゃないな。
ー
で、次に来たのが冒険者ギルド。
ここに来たのは別に冒険者になるためでは無い。
今後、冒険者に何か依頼する事があるかも? と思ってそもそもどんな依頼を冒険者が受けているのかを見に来た。
「あん? どうした? お前、冒険者ギルドに何の用だ?」
受付っぽい男に話しかけられた。
ここに来た理由を簡単に説明する。
「おう! 依頼人様か! 今はちょうど冒険者どもも居ないからゆっくり見てくれ。」
俺が依頼する側の人間だとわかると途端に優しくなった。
早速、掲示板に貼られている依頼を見てみる。
ざっと見るとダンジョンで獲れるものの調達依頼や街の周辺のモンスター討伐依頼、あと普通に材木や鉄鉱石の採取の依頼なんかもあった。
「基本的に依頼はやってやれない事ならなんでも受け付けるぜ。要相談になるがな。あと冒険者の指名依頼もできるからよろしくな!」
受付っぽい男に依頼の仕方とか色々と教えて貰った俺は冒険者ギルドを後にした。
ー
次に訪れたのが教会。
なんか女神が祀ってあるらしい。
「どうぞ。お祈りをしていってください。女神様は全ての民を見守っています。」
ニコニコ顔の優しそうなシスターさんだ。
確かに万能工具のおかげでここまで生きてこれたし感謝のお祈りはしとこうかな。
海底に飛ばされたのは不本意だったけど。
俺は最奥の祭壇で祈らせて貰った。
目を閉じて感謝、感謝とお祈りをしていると……
(あら? 女神の保護持ちかしら。こんな所でどうしたの?)
む? 頭の中で声がした。
(えっと……誰? ……ですか?)
(私は女神メーコよ。もしかしてあなた「召喚勇者」かしら? どうしてこの街に?)
祈っていたらなんと女神に頭の中で話しかけられた。
女神に聞かれた事に答えつつ俺はこれまでの事情を話した。
(なるほど。っはー、あのクソ達のやりそうな事かしら。海底に顕現させて殺しにかかるとか……。あっ、クソ達ってのは「女神パン」と「女神ブレド」の事かしら。)
同じ立場の女神の事をクソ呼ばわりとは。女神同士で仲が良い訳じゃなさそうだ。
(ではメーコ様はその2柱とは違う管轄の女神という事でしょうか?)
(そ。私はここライズ王国で信奉されている女神。あいつらは聖王国グランセルで信者の多い女神かしら。……しっかし要らない勇者は消すとか。やり方がゲス過ぎるのよ!)
女神メーコ様は憤慨していらっしゃる。
(しかも勇者召喚とかいう実質誘拐に近い方法で信仰を集めるなんて! 倫理も何もあったものじゃないかしら!)
ですよね。俺もこのやり方はどうかと思う。
(そうだ。あなた、もらった保護を出しなさい。)
えっ? 保護? 万能工具のスキルの事かな?
試しに手に万能工具のハンマーを出してみる。
(……ん。……はい。これであの2人の女神がその保護を「消去」する事は出来なくなったかしら。)
なんと。俺の万能工具は消される可能性があったとは知らなかった。
(こんな別世界に無理矢理連れてきて死ぬ思いもさせて申し訳ないと思ってるわ。元の世界には返せないけど私に出来るのはこれくらいかしら。)
(いえいえ、なんだかんだこの世界を楽しませて貰ってますし。)
(ん。そう。ま、頑張んなさい。私はいつでも貴方を見守ってるかしら。なにか困った事があったら来なさい。じゃあね。デンダ。)
その声を最後に女神がだんだんと遠ざかって行く。
まさか女神が語りかけてくるなんてびっくりしたな。
今後、困った事があったら相談してみよう。
と、お祈りをやめた所で背筋がゾワっとした。
「あなた……今、女神様と会話されてましたか?」




