俺は魔道具鑑定士? ー いや修理工です。
飲料の出る魔道具から透き通るような透明の液体が出た。
試しに一口飲んでみる。これはあっさりスッキリしているがコクのある飲み口。これは……「お酒」だった。それも飲んだ事のある味。「日本酒」だ。
「ニホンシュ? その透明な液体の名前ですか?」
「ああ。コメで出来た酒だ。」
「なんですって!?」
パパスさんはびっくりすると「コップを持ってきますので少々お待ち下さい!」と叫んで部屋を出て言ってしまった。
「お酒が出たの? デンダ。」
そう言って俺のコップに鼻を近づける。
「ああ。でもメイは酒を飲める歳なのか?」
「失礼ね。こう見えても十分に大人ですから!」
メイはプリプリしている。
確かに年齢の事を女性に聞くのは失礼だったな。
で、パパスがコップをいくつか持ってきたので、2人は日本酒を試し飲みをした。
「う……美味い! こんな美味い酒は国賓パーティーの時以来か。いやそれ以上か!」
「美味しい! でもかなり濃いお酒ね!」
この日本酒は2人には好評のようだ。確かに俺が日本にいた頃に飲んだ日本酒より全然レベルが違う。
「他の種類の酒も出せるみたいだぞ。」
そして飲料切り替えの機能によると種類は他にもある。しかもそれらはどうやらお酒らしい。
「なんと! どうやって切り替えをするんですか! 教えて下さい! デンダ殿!」
パパスにグイグイと言い寄られた。
「他の! 他のお酒も出して!」
メイには酒をせがまれた。
仕方がないから「1日に出せる量の調節」の機能や「飲料切り替え」の機能の使い方を教えつつ他の種類の酒も皆で試し飲みをした。
ーー
結果、わかったのは梅酒、ビール、焼酎、カクテルのようなお酒が出ること。しかもどれもレベルが高くて美味しいことだった。
「なるほど。確かにこの「不可思議な触り方」をすれば魔道具の模様が変化します。このような機能があったとは……。」
「私は、ニホンシュが1番かな。ねえ、1日に出せる量は「それぞれの飲み物」で分かれてるんでしょ? もう少し飲みたい。」
魔道具を見て唸るパパスと酒をねだるメイ。
ちなみに俺が好きなのはビールかな。キンキンに冷えたものが出てきてこれまた疲れた体に効く。
と、ここで部屋に使用人が入って来た。
「旦那様。ツクリテ工房のゲンゴロウ様がいらしております。……きゃっ!」
「失礼するぞい。」
使用人を押しのけて入って来たのはずんぐりむっくりの筋肉質の男。髭やらなんやらの体毛が濃い。
「すまん。あまりにも美味そうな酒の香りがしたのでな。」
「ゲンゴロウか。さすがドワーフの鼻だな。ちょうど良い。お前も試し飲みしてみろ。とんでもない魔道具を見つけたぞ。」
「おっ、いいのか! いやあ、押しかけてみるもんだのう!」
強面の職人みたいな顔してたのにニマーッとすごい笑顔になった。そして魔道具から酒を出して飲み始める。
「う、美味え! こんな酒は飲んだ事がねえ!」
舌鼓を打つゲンゴロウ。
とても美味そうに酒を飲むおっちゃんだな。
「なあ、パパス。この魔道具。譲ってくれねえか?」
「いや、この魔道具はオークションに出せば金貨数千枚は下らない品だ。幼なじみの頼みでも聞けないな。」
「そりゃそうだよな。じゃあこの酒は販売するよな? な? 絶対してくれ。 頼む!」
パパスに懇願し始めたゲンゴロウ。
その懇願をどうしようか唸るパパス。
このやりとりは少し続いた。
ーー
「お前さん。見ない顔だな。」
ゲンゴロウが俺を見て言う。2人の話はまとまったようで話題が俺になった。
「デンダ殿だ。彼がこの魔道具を鑑定したおかげで酒が出せるようになったんだ。」
「そうかそうか! お前さんのおかげか!」
笑顔で背中をバシバシされた。痛い。
「デンダ殿、鑑定料の話ですが、まず前金で金貨100枚。10日後に十分に機能が確認されれば追加で100枚。合計金貨200枚でよろしいですか? ゲンゴロウもそれで文句は無いな?」
俺の鑑定料の話になった。
「そうだな。国が抱える一流の鑑定士以上の成果だから妥当な金額だ。この街の職人を束ねる者として文句は無いぞ。」
ゲンゴロウもそれに同調する。
しかし俺には金貨200枚がどれくらいの価値があるかわからん。
メイにこっそり価値について聞いてみると……
「ウソ……私のお小遣いの1年分……」
メイが戦慄を覚えている。
すごいのかすごくないのかよくわからん。
まあ、貰えるものはもらっておこう。
「お前さん。記憶が無い鑑定士なんだって? この街に住むのか?」
そうだな。その辺はあまりよくは考えていなかった。
ま、今更だけど俺は鑑定士って言うより修理工だけどな。ここに来てからは色んな物の修理をしてきたし。(主に戦艦の設備だが。)
「ふむ。デンダ殿は……修理工……修理工……。」
考え込むパパス。
「そうだ! ゲンゴロウにメイ。良いか? デンダ殿は修理工だ。魔道具の鑑定士だという話はここだけの話に。これはデンダ殿の身に危険が及ばないようにだ。そうでしょう? デンダ殿。」
「うむ。それが良い。貴重な職人は保護せねばな。」
「わかったわ。内緒の秘密で。」
なんか内密の話となった。
「デンダ殿! 修理工ならこの街で「修理工房」をやられてはいかがですか? 微力ながら後見人となりますよ。」
「そうだな。ちょうど空き家になったばかりのもと修理工房があるからそこを買うか借りれば良い。」
そしてなんか俺がこの街で修理工房をやる流れとなった。
まあ断る理由もないしいいか。




