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俺の仕事って何だろうか……

「………つまり、またやってしまったんですね」

「………はい」


 ははは、反論の余地もないぜ……。


「で、どうするおつもりですか?」

「どうしような」

「あなたがやったことでしょう?私を巻き込まないでください」

「すんません……」


 レイラに相談したけど一刀両断だった。俺の悩みってなんなんだろう。


「はぁ……全く。魔石はどこから?」

「持ってたやつと、その、適当に、魔力固めて作った」

「規格外過ぎて危険ですね」

「それって俺悪くなくない……?」


 好きで規格外やってる訳じゃないんだけど。


「まぁ、良いでしょう。口止めはお忘れなく」

「はい、すんませんでした……」


『どっちが親か判らんな!』


 それ俺が言いたいんだけど……。







「イエルさん」

「何か不都合でもあったかしら?」

「不都合と言えば不都合かもしれない……」


 もうなるようになればいい。俺はもう知らんぞ。


「人が居ないところでお話しできませんか?」

「そうね。じゃあ私の部屋にどうぞ」


 偶然にも俺の部屋からそう遠くなかった。


「それで、話って?」

「その、今から話すことは秘匿すると約束して頂けますか?」

「?内容にもよるわね」

「あ、別にバレても問題は基本的にはないです。………それで引き起こされる事の危険さは不明ですが」


 あ、良く解ってないな。


「判らないけど、危険がないなら」

「ありがとうございます。所詮口約束ですので命を懸けて、とかそんな恐ろしい事しなくていいですよ」


 ストレージから短剣を取り出す。


「あら?もうできたの?」

「その、すみませんでした!」

「もしかして、壊しちゃったとか?それとももう直らないとか?」

「逆です……」

「逆?」

「王級になっちゃいました!」


 言っちゃった。もう俺は知らん!知らんぞ!


「え?どういうこと?」

「その、魔石とか、コーティングとか術式とか、まぁ、やり過ぎちゃったわけですね!」

「それって悪いことなの?」

「考えてみてください。普通に見える短剣が業物でしかもそれは兵級の壊れる寸前の短剣から1時間で作られましたー、なんていったら大変なことになりますよ」

「あー、そう言うことだったのね」


 イエルさんは俺の差し出した大幅強化された短剣を抜く。


「なにこれ」

「やり過ぎてすみません……」

「こんなにいい武器初めて見たわよ?」

「なにせ集中すると周囲が見えなくなって……手抜きは嫌いなんで、その」

「ふふ。勿論秘匿させてもらうわ。この短剣は迷宮で拾ったということにしておくわよ」

「ありがとうございます!」


 イエルさんならそう言ってくれると思ってたけどちょっと不安だったんだよね。


「それにしても、あなた本当に鍛冶得意だったのね」

「得意ではないですよ?」

「え?」

「あんなに熱いこと好き好んでやりませんよ」

「才能の無駄遣いね……」


 なんか同じようなこと誰かに言われたな。


「そうね、1000万で如何かしら?」

「?なにがですか?」

「あら、鍛冶代は仕事が終わったら渡すと言ったわよ?」

「そういえばそんなこと言ってましたね……そんなにいりませんよ。魔石も自作………じゃなかったそんなに良いものじゃありませんし」

「今自作って言わなかった?」

「さぁ?」


 口が滑った。


「………追求はやめるわね。でも王級の品なんて私払えないわよ」

「いりませんって。この事を黙っておいていただければそれが料金でどうでしょうか?あ、勿論命の危機とかヤバイ状況になったら破棄していただいて構いませんよ」

「それじゃあお代じゃないじゃない」

「いいんです、それで」

「私が嫌よ。最低でも1000万は払うわ」

「えええええ………」


 何てこったい。かなり適当仕様(手は抜いてない)の短剣に1000万か……ちょっと高すぎやしません?


「こっちは別に資金に困ってる訳じゃないんですけど」

「私が納得しないわ。もしやむを得ず短剣を貴方から譲ってもらったって言うことになっても最低でも1000万は払っておかないと貴方下に見られるわよ?」

「それはそうですけど……」

「槍術も少し教えてもらったし寧ろ数億テル以上はするものよ?タダなんて言ったら怪しまれるわ」


 一理あるな。


「判りました。では、貴方が周囲に秘密を漏らした時にお金をいただくことにしましょう」

「え?」

「そうすれば、これは1000万で買ったという嘘は本当になるので。この条件以外のむ気にはなりませんよ」

「………なんで頑なに拒否するのかしら?」

「冒険者は命懸けの仕事ですから。死にかけたときもっと食べ物を買っておけばよかったとかお金がないから防具が買えなかったとか、そんなことで人が死ぬのは御免です」


 俺は短剣の柄の部分に魔法が掛かっている魔除けのミサンガ(これも勿論自作)をくっ付ける。


「【これからの道程に幸多き事を願います】」

「え?」


 俺の世界の言葉で言ったから聞き取れなかっただろうな。まぁ、別にいいけど。


「今なんて?」

「にしし、さぁ?」

「……性格悪い」

「くくっ。心外ですねー」


 そのまま俺は部屋に戻………ってはいない。聖十刀を取り出して形状変化させながら練習する。


「ふっ!」


 練習用の岩を切断し、一旦終わる。現在夜中の3時半です。俺以外基本的にこんな時間に鍛練する人は………居ないと思いたい。


 この世界では勇者エレンは大剣使いということ位でしか伝わっていない。俺のことを知っているのはそれこそ長寿の種族のみ。


「助かっているような、面倒なような……」


 休憩を挟んで再び開始。弓、銃器の練習とかもしておく。銃器は使うつもりは無いけど、いざとなったらすぐ使えるようにしておかないと。


 的を出してひたすら練習する。防音対策はしてあるから問題ない、と思いたい。


 一通り好き勝手使ったので座って休憩する。


「暇だなぁ」


 じゃあ書類でも纏めてろよとか思うなよ!あれ結構精神的にくるんだから!


 光源が一つしかないため少し暗い訓練場に聖十刀を手入れする音が響く。


『あ、そこもうちょっと綺麗にしてくれ』


 どこ?ここ?


『あ、もうちょい右。あ、そこそこ……』


 なんかこいつをマッサージしてるみたいで嫌なんだけど。







 そんなこんなしてたら時間が経って日が出てきた。


 暗い部屋が徐々に明るくなっていく。


 聖十刀を日に翳すと刀身部分がうっすらと透けて見える。


「勇者……?」

「え?」


 こいつ拭くのに必死で全く気づかなかった!誰だこの人!


「どなたですか?」

「僕は、いえ、何でもないです」


 なんですかね?


「あの、勇者様ですか?」

「……はい?」

「勇者様はお伽噺で大剣使いって」

「別に大剣使いくらいどこにだっていますよ。俺は極星。ただの冒険者です」


 勇者様ですか?ってかなり直球な質問が来たな。俺は勇者じゃないけどさ。強いていうなら偽勇者だな。


「そ、そうですか」

「はい。じゃあ俺部屋に帰りますので」

「………エレン様ですよね?」

「何がです?」

「なぜ隠しているのかは判りませんが、貴方は勇者エレン様です。それは間違いありません」

「100年も前の人間が生きているわけないじゃないですか」

「いいえ。貴方はエレン様です」

「違います」


 互いに一歩も引かない。あれ?なんでこんな状況になったんだ?


「僕、エレン様の写真を見たことがあるんです」

「それに似ていると?他人の空似でしょう」

「祖父が言っていた特徴と貴方は完全に一致しています」

「そんなの人の見解でしょう?俺は極星。エレンではありません」

「いいえ、エレン様です」


 なんだこの面倒臭い戦い。


「先ず、エレン様は言葉遣いは悪くないですが一人称は絶対に俺で、剣を背負うときには必ず右の肩から飛び出るように背負う」


 え、なにそれ。俺も意識してないぞ。いや、意識してないからこそか。あ、ヤバい。なんかバレるフラグ立てた気がする。


「それから、武器の手入れ中は絶対に物を床におかない」


 あちゃー。潔癖症が仇になった。


「勇者と言われることを嫌い、感謝されると指先を触る癖がある」


 なにこの子!?凄い通り越してマジで怖い!いや、これを調べたこの子の祖父が怖い!


「それから、その大剣。刀身は紅く透き通っており、芯は金色で装飾があり、持ち手には魔石が大量にあると。そして、エレン様の髪の毛は刀身と同じ色だと」


 あはは………これはどう切り抜ければいいのだろうか?


 1、開き直る

 2、正直に言う

 3、逃げる

 4、誰か呼んで弁解してもらう


 ………いい案がでない。


「如何ですか?」

「いや、そんなこと言われても俺は極星ですし」

「エレン様に違いありません!」


 あっはは!もう断言してるね!


「って言うか何でそんなことを?勇者を見付けたとして何がしたいんですか?」

「僕の祖父が一目会いたいと言っていたので会ってもらいます」


 何その理由。拒否権無さそうなんだけど。

『もう記憶消して逃げれば良いじゃん』


 それやるともし思い出された時に確実に俺がエレンだってバレる。


『最悪翔太さん盾にして逃げるしかないな』


 今の勇者この人でーす、みたいな感じか……。

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