イエルさんとの模擬戦です
訓練場到着。この船凄いな。空間を魔法で固定、拡張しているみたいだ。
乗船するだけで10万テル払う価値はある、かもしれない。
「武器はどうしますか?」
「私はレイピアよ」
「そうですか。じゃあ俺もレイピアにしようかな」
「いつも使ってるのでいいのよ?」
「いつも使ってるやつは………対人向きじゃないので」
あんなん使ったら骨折れるわ。いつもなら治癒術師が居るだろうって思って聖十刀振り回してるけど、船の上だと料金嵩むとか、最悪いないとか。
そんなことにはなりたくない。絶対に。
関節をほぐし、準備運動。
「何やってるの?」
「これやると怪我が大分少なくなるんです。まぁ、保険ですよ」
よし、こんなもんか。
ストレージからどこにでも売ってる普通のレイピアを出す。
「以外と普通の武器なのね?」
「メインじゃないのでそんなにお金は出せませんよ」
体をほぐしたので試合開始になった。
「私はこれでいくけどいいかしら?」
「はい、構いませんよ?かなりの業物ですね」
「あら、判るの?」
「何となくですが」
鑑定してみると、使用者の速度を大幅にあげる、レア度はユニーク級のものだった。
あ、判んない?補足します。
レア度は級で分けられていて、粗悪、普通、兵、レア、ユニーク、王、神だ。王以上になると伝説の武器みたいな扱いになる。
なんでこんな名前で分類されているかは知らない。誰かに聞いてくれ。
俺が今持っているのは普通級のレイピア。粗悪級になると壊れる寸前とか、かなり状態の悪いものだ。粗悪級を使うのはちょっと頭のいい人形モンスターか、頭が悪い盗賊とか。
まぁ、そんなことはどうでもいいけど。
あ、因みに。俺の装備品、実は殆ど全部神級だったりする。服もそうだし、エクストラブーツ、バングルとかも同様。隼人のくれたイヤリングは普通級と粗悪級の真ん中くらいか。
いや、子供が作ったにしては本当に上手いんだけどな。
「それでは、ルールを定めましょう。相手が降参するまで、致命傷はなし、戦いを続行出来ないと判断したら終了。あ、あとここを壊したら壊した方が全額弁償で」
それでいいと言ってくれたのでレイピアをグッと握り、構えをとる。
「それでは、そちらからどうぞ!」
「遠慮なく!はぁ!」
レイピアを突いてきたので持ち手をずらして回避する。
「中々やるわね!」
「恐縮です」
さて、仕掛けてみるかな?
レイピアを手首で回転させるように動かす。
「えっ?」
「それ!」
そのまま真上に相手のレイピアを持ち上げて弾き飛ばす。
「やらせない!」
「おおっ」
逆手でつかんで阻止してきた。へー。初見で出来るって中々。
「まだまだ!」
「きゃっ!」
姿勢を低くして下から首を狙う。柄の部分で弾かれたのでそのままの勢いで体当たり。
「へっ?」
「はい」
まさか突っ込んで来るとは思ってなかったのかレイピアを持つ手が若干緩んでいたのでさっきのように絡めとって背後にレイピアを弾き飛ばして、首もとに刃を持っていく。
「如何でしょう?」
「あはは……降参よ」
弾き飛ばしたレイピアを拾って手渡す。
「さっきのどうやってやるの?」
「どれですか?」
「くるって剣を回転させるやつ」
「ああ、あれですか?あれ、本当は槍とかで使われる技なんですよ」
リーチの長い武器に有効な技。昔覚えたんだよね。
「よければお教えしますよ?」
「本当!?いいかしら?」
「ええ。それでは先ず槍で練習しましょう。こっちの方が練習にはいいんです」
練習用の槍を二本ストレージから取り出して一本渡す。
「先ず、右手をここにそえて、あ、そうです。で、そこから―――」
槍術指南が始まった。
「はぁ!」
「おお。出来ましたね」
レイピアで俺の突きだした槍を絡めとって引っこ抜いた。
「これで多分もう実践で使えるでしょう。難しくはない分、対処もされがちなので初見か不意打ちで狙うと結構効果出ますよ」
そう言えば名前聞いてなかった。
「名前、伺って無いですね。俺は冒険者の極星です」
「そうだったわね。私は同じく冒険者のイエルよ」
握手した。なんで今したんだろ?俺的にはノリだ。
「イエルさんってサブウェポンはどうしていますか?」
「サブウェポンは一応この短剣よ」
「その短剣、見せてもらっても?」
「兵級のそんなに良いものじゃないわよ?」
「はい。見るだけです」
短剣を借りて、光に翳してみる。やっぱり。
「これ、そろそろ限界ですね」
「え?嘘?別に刃こぼれとかしてないわよ?」
「中が振動で崩れる恐れがあります。早めに買い換えた方がいいかと」
俺は金属の棒をイエルさんの短剣に当てる。カツン、と音がなった。
「やっぱり中が悪くなってますね。こっちの音と聞き比べてみてください」
俺はこの前作ったばかりのパッと見安物の短剣を取り出して同じように金属の棒を当てる。キィン、と甲高い音がなる。
「全然違うわね」
「ええ、これは一瞬見ただけでは判り難いのですが、魔力を通しすぎで中の回路が焼け切ってしまう寸前の状態なんです」
中スッカスカのスポンジ状態な訳だ。外側は一見固そうで使えそうに見えるけど、中身はあんまりない。
「これに思い入れは?」
「あんまりないけど……私が初めて冒険者になったときに買ったやつね」
「あるじゃないですか。これ修理できますが、どうしますか?」
「修理?お仲間に鍛冶師でもいるの?」
「俺が鍛冶出来るだけですが、どうしますか?」
「そうね……お願いしましょうか」
気になってしかたがないからな。こういう状態の武器持っている人が居るの見ると。
「あ、鞘も序でにやっておきましょう」
「ありがとう。料金はいくらかしら?」
「お代は結構ですよ?好きでやってるだけですし」
「それはこっちが困るわよ」
「じゃあこれが出来たら、仕事に応じて料金をお願いしますね」
「ふふ。お願いね」
自分で自分のハードル上げたことにに気付いたのは別れた後で準備を始めたときだった。
もうどうしようもないので早速開始する。許可?取ったというか、修理する用の部屋があったというか。この船本当に冒険者に優しいよな。その冒険者が鍛冶出来るかどうかは考えてないのかもしれないけど。
「さって。折角だから属性つけようっと」
刀身を溶かし、魔石とかをぶちこんでいく。足りなくなったらその場で作る。魔力固めるだけだから結構お手軽だ。
「熱い………」
本当に熱い。カンカンと打って固めていく。
火魔法で火力調節しながら魔石の状態を見て冷やしたり熱したりを繰り返す。
持ち手の方も改造。
持ちやすいようにイエルさんの手の大きさを想像しながら形作り。滑りにくいように汗とかを弾かない取っ手にしよう。
鞘も一工夫。短剣を納めると微妙に壊れた箇所が回復していくように術式をいれる。
短剣自体にも術式を書き入れ、血で剣が悪くならないようにコーティング。これでどうだ!
「やってしまった………」
俺は1時間後、鍛冶場で項垂れていた。
元の短剣の形や使い込まれた感は残しつつ、大幅に強化してしまった。
「これ………王級になっちゃった………」
つい夢中になってやり過ぎた。どうしましょう?
「はぁ………」
頭を抱える。これは、どうすれば。本気でヤバイぞ。イエルさんが絶対に黙っていてくれるなら全然良いんだけど。
周囲の目がなぁ……。伝説の武器みたいな物になってしまった。
俺は狙われても多分問題ない。どんな方法でも俺は死なないだろうし。問題はこれを持つことになるイエルさんだ。
あり得ないほどの業物になってしまった。パッと見は普通のちょっと装飾がある短剣なんだけど、蓋を開けてみれば数億テルは下らない物になってしまった。
「俺の馬鹿……!」
もう一回作り直せって?そんなこと出来るか!俺は手を抜くのが嫌いなんだ!…………色々自業自得な上に八つ当たりしてすみませんでした。
「神級にならなかっだけましか?」
『王級もそんなに変わらないけどな』
それは思ってても無視してくれ。




