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船の上で

「極星。これってどれくらいで着くんだ?」

「んー。二週間ぐらい?」

「遠!」

「近かったらもっと交流してるでしょ」


 翔太さんが居た日本には飛行機とかあるしな。この世界には似たようなものが無いわけではないけどほとんど飛べないし、五月蝿いし、高い。


「ま、気楽に待とうぜ」

「長いな……」


 部屋に入って書類整理を始める。


「手伝います」

「お、サンキュ」


 レイラにも手伝ってもらってベットの上で書類を纏めていく。


 ん?なんだこれ?


「なぁ、レイラ。これなんだと思う?」

「?………何語でしょうか」

「俺も読めない」


 象形文字に近い、絵のような物の文章が薄い紙に書かれていた。


「気付いたらストレージに入ってたんだよね、これ……」

「え。怖いですね」


 要は、いつも持ち歩いてる鞄に気付いたら手紙が入ってた、みたいな。


「鑑定かけてみよう」

「や、やめた方がいいかと……」

「重要なものだったら困るでしょ」


 恐る恐る鑑定をかけてみる。


「…………」

「どうでした?」

「なんだこれ……情報が多すぎて気持ち悪……」

「ちょっと、極星様!?」


 なんか物凄い検索結果です。頭が割れるような痛みに襲われております!


「で、なんでしたか?」

「鑑定不能でした………」

「鑑定不能ですか?なんで情報酔いを?」

「紙が特殊みたいで、そこに目がいっちゃって………」


 まだ気持ち悪い事になってる……。


「それでは、これどうしますか?」

「取り合えずストレージに入れとこう………なんか怖いし」


 危険物のフォルダに入れた。特に理由はない。


「ご主人様!」

「ん?ソルト。どうした?」

「食事はいかがなさいますか?」

「ああ、そういやそんな時間か。ここには一応食堂あるんだよな?」

「はい」

「じゃあそこにしてみよう。皆を呼んでくれ」

「はい」


 キリの良いとこまでやってストレージに。さって、ここの料理はどうかな。あんまり美味しくなかったらストレージの物食べよう。明日から。






「集めました」

「ありがと。それじゃあ行くか」


 ぞろぞろと移動していく。因みに氷はちょっと気の毒だけど部屋に籠って貰っている。荷物扱いになるからな。


「ここか」


 それなりに綺麗な食堂だ。


「日替わりでいいか?」

「「「はーい」」」


 全員分の日替わりメニューを頼んで空いている席に座る。


「私そこがいいです」

「ご主人様の隣は僕が!」

「ラテも‼」

「俺一人で座るから」

「「「ええー」」」


 誰が俺のとなりに座るかで喧嘩しだした。子供じゃないんだから、全く……。


「お待たせしました」


 料理が届いた。


 定食みたいな感じだ。野菜スープ、魚の蒸し焼き、硬めのパン、漬け物みたいなおひたし。


「んむ。このおひたし美味しいですね。………極星さんのやつの方が好きですが」

「もぐもぐ……野菜スープも出汁がでていて。………ご主人様のスープの方が僕は好みですが」

「はふはふ……この蒸し焼き柔らかいですね。極星様の作ったものの方が私は好きですけど」


 おい。作った人に失礼だろ。


「俺への世辞は良いから残さず食べろよ」

「「「別に世辞では無いですよ?」」」


 ここぞとばかりにハモるな。


「はいはい」


 適当に右から左に流した。






「ご主人様の歌が聞きたいです!」

「なんで突然」

「何となくですよ、なんとなく」

「何企んでる?」

「………何も?」

「なんだその間は」


 食べ終わった後、ソルトが突然そんなことを言い出した。


「極星って歌上手いのか?」

「それはもう、物凄く」

「レイラ。無駄にハードル上げないでくれよ」


 暇だから別に歌っても良いけど、煩くなるからなぁ。


「許可も取らないといけないだろうから、また今度に―――」

「許可はもう取ってあります!」

「こういうとき本当に早いよな!」


 甲板の方が音出しても良いだろうという判断で、甲板に出て歌うことになってしまった。なんでこうなった。


「全く……」

「良いじゃないですか、たまには」

「結構アトリートでは弾いてたと思うんだけど?」

『ここはアトリートではありません』

「そうだけどさ……」


 のせられて椅子に座らされる。


 もうなるようになーれ。


「ここならそれなりに大きいのでもいけるか」


 ハープ登場!翔太さんが椅子ごとひっくり返る。


「何やってんの?」

「いや、そんなの弾くのか?」

「俺に弾けない楽器はない!」

「おおー」

ズル(コピー)だけどな!」

「なんだそれ」


 ちょっと弾いて状態確認をする。倒れないように注意しながら弦に指をそっとあてて音を鳴らし始める。


「あ、暗くて見えづらい」


 今更それに気付いた。暗視を使って視界をクリアにする。


 指で弾きながら浸透の魔力を徐々に流していく。喉の方にも魔力を送り、そのまま歌ってみる。


 翔太さんの顔が凄い驚いている。俺そんなにこういうことやら無いタイプに見えるか?


 イムちゃんとロニちゃんは最初は少し驚いていたが、意外と音楽好きなのか俺の手の動きを目で追っている。


 蒼は、まぁ、かいつまんで言えばありえないほど嬉しそうな顔で俺の方を見ている。これで顔が整ってなかったら気持ち悪い部類に入るぞ。天使の微笑みと言えばそうなのかもしれないけど。


 そんなどうでも良いこと考えている間に曲が終了した。


 え?他ごと考えすぎ?もう俺の手ってほぼ無意識に動くんだよね。自分でも恐ろしいと思うわ。


「からかう要素がない」

「先ずからかう要素を探そうとするな」


 翔太さんはそんなことを言ってきた後、


「音楽は判んないけど、上手いんだな」


 と、適当すぎるお褒めの言葉をくれた。


「褒め言葉って言わないぞ、それは」


 いつも通りの反応をしてやったぜ。







「今の、あなたが?」


 身なりの良いおじさんが出てきた。あ、流石に煩かったか。


「あ、中に聴こえました?煩いですよね。もうやめます」

「えー。そんなー」

「今度またやるからそんときまで我慢しろ」


 片付けようと椅子から立ったら、


「いや、聴かせてくれないか?」

「え」

「部屋で聞いていたんだけどね、近くで聴かせてもらいたいのだが、良いだろうか?」

「構いませんけど………」

「そうか!では、頼んで良いか」


 椅子を向こうから引っ張り出してきた。そんなに聴きたいか?


「なんか集まってきてないか?」

「気のせいですよ!ほら、次お願いします!」


 のせられて二曲。









「甲板の上凄い事になってるじゃんか……」


 いつものごとく演奏中の記憶が殆んど無いから判んないけど、甲板の上では船に乗っている人殆んどがいるんじゃないかと思えるほど人で溢れかえっていた。


「音楽の力は偉大だな……」


『何ませたこと言ってんだよ』


 俺は十分高年齢だと思うんですけど?





「極星ー。お前なんでも出来すぎててずりーよ!」

「翔太さん………?酔ってないか?」

「酔ってなーい!」

「じゃあ右手の赤ワインはなんだ?」


 誰だよ!未成年に呑ませたやつは!


「極星も呑めってー」

「呑めって単語出してるじゃねーか!全く………俺は酒好きじゃない。寧ろ苦手だ。っていうか子供は早く寝ろ」


 翔太さんをあしらうのに数十分掛かった。


「ベットに潜り込んだ瞬間に寝やがって……!」


 こっちの気も知れないで、全く。何やってるんだか。





 甲板でただ普通に海を見ていた。やること無いから遠くを見つめていただけなんだが、思い詰めているように見えたらしい。


「はやまっちゃ駄目!」

「はやまってません!」


 女性に抱きつかれた。


「あれ?吟遊詩人さん?」

「冒険者ですよ……」

「吟遊詩人じゃないの!?」

「吟遊詩人がなんで魔大陸行くんんですか……」


 意味不明だろ。


「冒険者ってことは腕に自信あるの?」

「ええまぁ、それなりには」

「そう。ね、私と勝負しない?」

「なんでですか?」

「気分よ。良いでしょ?私が負けたら私を好きにして良いわよ」

「いや、俺女ですし」


 目がかなり大きく見開かれた。デカ!


「うっそ!ごめんなさい、男性かと」

「いや、女として扱われるの嫌いですし、それで結構ですよ」

「で、勝負は?」

「そうですね……受けましょうか。暇をもてあましていましたし」

「ふふふ。負けないわよ!」

「あ、どこでやるんですか?」

「知らないの?ここの下に訓練場あるのよ?」

「凄いですね、それ」

「それとも甲板でやる?」

「勘弁してください」


 目立つのはあんまりよろしくないしな。


『もう十分目立ってるけどな』


 それは、確かに………。

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