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魔大陸へ!

「これとそれでいくらですか?」

「500テルだね」

「400になりません?」

「それはちょっとなぁ。470」

「もう少し!430」

「はいはい。450でいいかい?」

「ありがとうございます」


 たかだか50テルでも安いにこしたことはない。別に守銭奴ではない。多分、おそらく、きっと。


「極星様……こんなところで何やってるんですか」

「お、レイラ。買い出しだよ?魔大陸には食べ物あまりないから買いこまないとと思ってな」


 転移で一旦別の国に行けばいいだけの話なんですけどね。


「それで、どんな雰囲気になった?」

「最悪ですね」

「はは、すまん。ああでもしないと決めないまま事が進みそうでさ」


 おばちゃんから商品を受け取って450テリ渡す。


「なんだい、あんた魔大陸に行くのかい?」

「ええまぁ」

「やめときな。あんたみたいな貧弱な奴は魔物に食われておしまいだよ」

「はははこれでもそれなりに自信はありますよ」

「自意識過剰は身を滅ばすよ」

「問題ないですよ」

「あんたが行くかどうかなんて私は知らないけどね。気を付けな。それと、よく考えて行くんだよ」

「ご忠告感謝します」


 そのまま適当に二人で町を歩く。


「……極星様はいつも自分勝手です」

「くく。俺もそう思う」

「いつも人をおちょくって、自分勝手で、言い出したら聞かなくて、大事なことを直ぐに後回しにして」

「…………俺ってそんなに問題児か?」

「充分問題児ですよ………それと後、私達をいつも置いていきます」


 ………?


「東の時も、アトリートの時も、今も。全部自分スピードで誰も追い付けない早さで走っていくだけです」


 う!何か心にグサッときた。


「私達に頼ってくださいよ。極星様は………自分でなんとかしようとするのが悪い癖です」


 それ同じこと言われたことあるな。


「頼ってるけど?」

「重要なところ以外は、です。危険が伴うとわかった瞬間、貴方は人に頼ることをやめる。………だからお仲間に殺されかけるんですよ?」


 ……………。


「さて、そろそろ皆のところに行きましょう。そろそろ暗くなります」


 歩く方向を変えて歩き出すレイラ。沈みかけた日に照らされて結構幻想的なことになっている。それはいい。それはいいんだが。


「……レイラ。1ついいか?」

「……どうしましたか?」

「凄くこの状況で言いづらいんだけど」

「なんでしょうか?」

「宿………あっちだぞ」


 えっ?と呟いて俺が指差した方を見る。みるみる顔が赤く染まっていく。


「極星様のバカー!」

「酷い!」


 鳩尾にレイラ渾身の左ストレートが決まった。










「いつっ………」

「すみません……つい」

「いや、間違っても俺以外の人にやるなよ?最悪これは死ぬ」


 まじで気持ち悪くなった。





「今夜は軽食の方がいいかと。部屋でじっくり自分の事を考えたいでしょうし」

「それもそうだな。じゃあピザにするか」


 以前作ったピザをそのままストレージから出す。俺的にはチーズたっぷりが好きだ。


「私が運びます。極星様が行くのは少し気まずくなるかと」

「ああ、頼んだ」

「ラテもラテもー!」

「落とすなよ?」

「うん!」


 不安だったのでちょっと魔法をかけておいた。重力魔法で絶対に物を落とさない、っていう。


 薬品扱うときには本当に便利な魔法だ。俺の世界にはちょっと皮膚にかかっただけで身体中の細胞が壊死するとか言うふざけんな仕様の薬品もあるし。


 使い方を間違えなければ増えすぎた害虫駆除とかに凄い便利なんだけどさ。


「わー!」


 あ、こけた。


「え?お皿が浮いた‼」

「ラテー、もう落とすなよー」

「あ、うん!ありがと!」


 ぱたぱたと歩いていった。またこけないようにずっと下を見ている。あ、柱にぶつかった。なにこれ凄く微笑ましいんだけど。










「決めましたよ。極星さん」

「早かったな。で、どうなった?」


 トーユちゃん、フーちゃん、エイトちゃん、ヨコちゃんはここに残ることにしたらしい。フーちゃんとヨコちゃんは魔法少女の二人だ。覚えてる?


「そっか。イムちゃんとロニちゃんは本当に良いのか?」

「「はい」」

「君達の意見を最優先にするからなんでも言って良いよ?」

「それでは、1つよろしいですか?」

「トーユちゃん。どうぞ」

「ここに残るという選択肢は極星さん達には無いのですか?」


 お、そう来たか。


「あるよ?レイラ達には」

「極星さんは無いと?」

「無いよ。翔太さんと俺は魔大陸に行って魔王を倒す義務があるから」


 レイラ達には無いんだけどなぁ。


「正直に言って………本当は誰も連れていきたくないんだよ」

「なら、何故」

「仕方がない。と言うのに近いかなぁ。俺はこの世界に留まるため、翔太さんは、まぁ、ぶっちゃけるとやらなくてもいい使命の為に、かな」


 物語の主人公的なのだと、魔王を倒したら帰れる、とかそういうのの為に魔王を討伐にいくとか定番だけど、翔太さんの場合俺っていう簡単に世界間行き来可能な人物がいるからなぁ。


「と、どうでも良い話になったな。トーユちゃん達はこれからどうする?」

「私は冒険者に」

「私は薬師になろうかと」


 トーユちゃんは冒険者、エイトちゃんは薬師か。フーちゃんとヨコちゃんの魔法少女二人はまだ決めていないが魔大陸に行くのは自分達は不可能だと判断したためらしい。


「そうか。じゃあ二人は一旦クアに預かってもらおうか。と、こっち来てくれ」


 奴隷印を書きかえる。


「よし。これでもう君達は自由だよ。あ、その魔方陣は時間が経てば消えるから」


 奴隷印は奴隷から解放されても残ってしまう。俺は魔方陣に【認識不能】の効果を追加してあるけど誰も気付かないようにした。


「それじゃあ近日中に魔大陸目指そうか」

「急だな」

「皆が方向性決めたからな。長居は無用だし」


 魔大陸に渡るには船に乗る必要がある。ただ、魔大陸なんて行く人はよっぽどの馬鹿か、腕に自信があるか、自殺しに行くか位しか行く人がいないので何ヵ月も船が出ないとかあるらしい。


 そうなったら転移でもなんでも使って行くけど。


 船着き場で聞いてみる。


「魔大陸に渡るにはどうすれば良いですか?」

「魔大陸か?自殺はお薦めしないぞ」

「違うので問題ありません」

「そ、そうか。魔大陸行きの船なら明日の朝出る筈だ」


 はっや!突然だな。


「そうですか。詳しい時刻は判りますか?」

「丁度太陽があの位置に来る頃だな」


 めっちゃアバウト。太陽の位置あの辺にきたらとかどんだけ適当なんだよ。


「あ、はい」

「それじゃあな」

「ありがとうございました……」


 かなり判りにくい説明をして去っていった。太陽あの辺だったら大体9時頃だな。





「極星さん。その」

「くく。遊んできても良いよ。これ全員で分けて使うと良い」

「ありがとうございます!」


 反応が可愛い。


「………ダウト」

「なにがだよ」


 翔太さんは相変わらずだけど。





 大量に食料の類いを買いこむ。数百人前どころか千人前は作れそうな量の食材と料理がストレージインしてある。


「石橋叩きすぎです」

「備えあれば憂いなし、だろ?」

『限度というものがあると思います』


 クラセントにまで言われた。良いじゃん!どうせいくらでも入るんだし!


『開き直るなよ』


 お前にまで言われるとは流石に思ってなかったわ。





 はい、翌日。


「それじゃあ、何かあったら連絡しろよ」

「はい。心配しすぎですよ」


 奴隷娘たちは泣いている。あ、ラテも混じってるわ。翔太さんも泣いてる。あんた男だろ。


「それじゃあ、また何処かで会おうな」


 船に乗る。なんか出稼ぎに行く父親とか母親とかの気分だぞ。


「はい、お気を付けて!」


 錨が上がり、魔力が船に流れて動き出す。


「さよならー」

「ばいばーい」

「元気でなー」


 皆見えなくなるまで手を振り続けていた。


「うわ!翔太さん汚い!」

「酷い!」


 ここで鼻水を指摘してしまったのはいけないことだっただろうか。まぁ、しんみりは似合わないよな!

「船の乗船賃高かった……」

「おいくらでしたか?」

「一人10万テル」

『ぼったくりですね』


 クラセント。大きな声で絶対に言うなよ?

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