ちょっとシリアス入りまーす
氷がくっついてきてから一ヶ月くらい。
「港町到着!」
「今更だけどさ、転移で来ればもっと楽だったんじゃ?」
「当たり前だろ。翔太さんは宝の持ち腐れ状態だから鍛える方を優先しただけだ」
一ヶ月も掛かるとは思ってなかったけどね!
「これから宿をとって……全員荷物を置いたら俺のところに来てくれ」
「なんですか?」
「それはそのときのお楽しみさっ!」
「極星絶対なんか企んでるだろ……」
さぁ、どうでしょうか。
「エレン!妾エレンと同じ部屋で寝たいなー」
「どうぞお一人でお休みください」
こっちも相変わらずだし。
『我が主。私も同室が』
「いやー、仕事たまってるんで!」
笑顔でスルーした。この対応が一番楽だ。
宿をとって各々部屋に荷物を置いたら俺のところに集合した。
「極星様。お話しとは?」
「実は翔太さんとレイラ達は関係ないんだけどな」
ちょっと笑いながら少し遠くにいる奴隷娘達の方を見る。
「ねぇ、俺達と死ぬ覚悟………あったりする?」
ちょっと真剣な声色で話し掛ける。こればっかりは笑えない話だしな。
「それって、どういう……?」
「ごめん。言葉足らずだったな。俺達の目的って知ってるか?」
「えっと、魔王討伐ですよね?」
「そう。君達は行く必要はないって話。この意味わかる?」
ここから海を渡って魔大陸に行く。正直に言って生きる事の出来る可能性より死ぬ可能性の方が高いくらい危険な土地だ。俺が守りきるのも限度がある。
「私達は……奴隷ですよ?」
「俺さ、奴隷印くらいなら簡単に弄れるんだよね」
「弄る……?」
よく判ってないようだから一枚の紙をストレージから取り出して見せる。これには既に【発光】の魔方陣が書いてあり、魔力を流すとランプがわりになるものだ。
「見てて………よっ」
魔方陣に指をかざし、改編したいところをぐちゃぐちゃにして新しく書き直す。
「はい、出来た。これはもう発熱の魔方陣になってる」
「「「………は?」」」
「こんな風に、まぁ、書き換えれるんだよ」
「意味がわからん……」
魔方陣の書き換えは普通無理だ。消すか書くか。それだけだ。
「じゃあ奴隷印消せば良いんじゃないのか?」
「そうなんだけど……俺書き直せたり書けたりしても消せないんだよね」
「え、なんで?」
「苦手なんだよ、そういう制御」
「意外です……」
俺は万能超人じゃないぞ?
「と、話が逸れたな。俺達は魔大陸に渡る。危険しかない場所だし、死なんてものはただ近くを通り過ぎるだけの日常になる。その異常性をしっかり理解できてないとまず確実に一生魔大陸から出られない」
一呼吸おいてまた話す。
「俺は万能超人じゃない。それはソルトもレイラも蒼も、皆同じこと。何かあったら守ることは出来ても防ぐことは不可能だ」
「つまり?」
「あっさり死ぬんだよ」
固い声色で言う。こうでもしないと結局決断せずに堂々巡りだろう。
「で、でも、極星なら怪我とか治せるだろ?」
「翔太さん……あんたはこの世界の生まれじゃないからそう思えるだけだ。あんたはこの世界に希望を持っている」
「………?」
翔太さんに向き合う。
「翔太さんは日本っていう安全な国から刺激を求めて来たようなものだ。その証拠に割りと最初の頃に狼に殺られ掛けても帰りたいとか言わなかった」
「まぁ、それは………そうだけどさ」
「翔太さんはかなり恵まれてる」
立ち上がって翔太さんの近くにゆっくりと移動する。
「勇者としての恵体、魔力。俺とトーラの2人分の加護、そして能力。そんじゃそこらの事じゃ死なないし、驚異的な回復力もある。この世界で唯一魔王を倒せる存在」
翔太さんの前にしゃがんで目線をあわせる。
「それがあんただ。でもこの世界の人間はそれはそれは簡単に死ぬ。日本ほどじゃないけど体も弱い。魔力もほとんど無い」
ちょっと睨んでみる。あ、これヤンキーの脅しの手口だわ。
「それで、翔太さんは守りきれるのか?」
「そ、それは……」
「まぁ、結論は急がせる気もない。今のところは」
ここに長めに滞在すれば良いだけの事だしな。
「………前々から気になっていたんですけど」
「どうした?」
「極星さんってどんな怪我でも治せるんですよね?」
「その言い方は語弊があるけど……大体は、ね」
「でしたら、治していただけませんか?」
「………そうしてあげたいんだけどね」
椅子に座り直す。なんで俺立ったんだ?まぁ、いいか。
「俺の血は………死人だろうが復活するよ」
「死人……?」
「でも……使うつもりはない」
「どうしてですか?あ、氷さんのように眷属化ってやつを?」
「眷属できるのは神の気を持つやつだけだからそれはないよ」
俺は少し言うかどうか迷った。けど、これは言った方が良いだろうな。
「俺の血はさ、不老になる薬でもあるんだ」
「それは良いことではないんですか?」
「良いこと、か………そうだよな。そう思うよな」
人間には欲がある。それがないと人格もなにもかも形成されないくらいに重要な物だ。
「人類の夢……不老不死?馬鹿馬鹿しい。俺はそう思うよ」
「どういう事ですか?」
「君達は、こんな悲しみを知らずに生きていける。それが俺達神からのせめてもの慈悲だと思うんだよ」
「………?」
「周囲でどんどん人が減って増えてを繰り返す。時間の感覚が酷く曖昧で孤独な物になっていく。それは生きる時間が長くなれば長くなるほどどんどん深く、抜け出せない物になっていく」
言ってて俺もよく判んなくなってきたな。
「俺にとっては昨日のようなことが実は数十年経ってましたとか珍しくない。人が死んで、生まれて、気付いたら死んでいる。その苦しさは……人間には判らないよ」
にっと笑って見せる。
「不老なんて、偽物の命でしかないんだよ」
かなり静かになってしまった。気まずい。いや、この雰囲気にしたの俺だけどさ。
「さってと。要は、君達はこれからどうするかって話だ。俺達に付いてくるもよし、冒険者としてやっていくもよし、商人になってもよし、だ。将来の可能性なんて決められてないんだからほぼ無限だ。ただし、覚えておけ。俺達と行くなら、命の保証はしない」
立ち上がってパン、と手を叩く。
「はい、これで話終わり!解散!」
かなり微妙な雰囲気にしてしまったがこれはこれで良いだろう。話しやすいように外に出ますかね。
俺はそのまま退出、近くの店で買い出しを開始した。さって!何を買おうかな?
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突然極星さんがいつもの緩んでいるような雰囲気ではなく意外と深刻そうな雰囲気で皆を集めました。
なんでしょうか?
皆が集まると、急に殺気とはまた違う威圧感を感じました。軽い口調で話し始めたのは、魔大陸に渡るかどうかという話でした。
【死】
これは私達の身の回りには結構見られる言葉です。魔大陸では特にでしょう。
私達を遠回しに弱いと言って来たので内心少しムッとしてしまいました。
極星さんは以前自らの血で私達の傷を完治させました。それがあれば問題ないのではと思って聞いてみたら、
「不老不死?馬鹿馬鹿しい」
まるで他人事のように、それでも自分の事だと理解している顔で話し始めました。
まるで自分を責めるような言い方で何度も。不老なんて必要ない、と言っていました。
この方は相変わらず自分の中を見せないのですね。
話し終わったら直ぐに外に出ていきました。きっと話しやすいように席を外したのでしょう。そう言うところは妙に気がつくお人ですし。
「トーユ姉はどうするの?」
「私は、まだ決めていませんが……」
「そっか。私は、付いていこうかな」
「本気ですか?」
「うん……まだ絶対にそうするって決めてないけど。何だかんだで楽しいんだ。翔太様や極星さんといるの」
「そうですか……」
イムさんはもう決めたようです。最年長の私がいつまでも渋って悩んでいられませんね……。
「あ!財布」
『忘れたのか?』
鞄に突っ込んである生活費忘れた……小遣いから一旦出そう。




