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小さな相棒

「……ガレスさんは、まだ見つかってないんだったよな」

倒れたゴブリンたちを前に、俺は村人たちへ尋ねた。


「ああ。まだみつかっていない。お前を見失ったから、一旦戻ろうと思っていたところだ」

やっぱり、そうか。俺を助けてくれたガレスさん。今度は俺が、あの人を見つけ出したい。

その時、背後の茂みが揺れ、小さな狐が姿を現す。

管狐だ。


「管狐!」

俺が叫ぶと、管狐はチラリとこちらを見た。それから、森の奥へと歩き出し、少し進んでは振り返る。まるで、ついてこいと言っているようだ。


「もしかして、案内してくれてるのか?」

村人たちと顔を見合わせ、俺たちは管狐の姿を追った。

しばらく進んだ先、倒れた木の陰から小さなうめき声が聞こえた。そこに、ガレスさんがいた。腕や脚には擦り傷があり、立ち上がる力も残ってないほど疲弊しているようだった。


「ガレスさん!」

駆け寄ると、彼は苦しそうに顔を上げた。


「……ヤマトか。わざんざ探しに来てくれたんだな。」

「そんなことどうでもいいですよ!動けますか?」

村人たちが肩を貸し、ガレスさんを支えた。俺は管狐の方を振り返ったが、すでに姿がない。礼を言う間もなかった。


村へ戻ると、ガレスさんの帰還に人々は安堵した。村長は、森にゴブリンが複数いる以上、村人だけで対処するのは危険だと判断した。近くの大きな町へ使いを出し、冒険者に討伐と村の警護を依頼することになった。

その町まで徒歩で二日ほど。冒険者ギルドもあるらしい。知らない言葉や仕組みばかりで、聞きたいことが次々と湧いてくる。

翌日、俺は村の外にある草地へ向かった。確かめたいことがあったからだ。


「…管狐」

名前を呼ぶと、少し離れた草むらが揺れ、小さな狐が現れた。やっぱり、名前を呼ぶと来てくれるらしい。けれど、だからといって俺の言うことを聞いてくれているとは限らない。


「なあ、ちょっとだけ力を見せてくれないか?どんなふうに動くのか、ちゃんと知りたいんだ」

管狐は返事をするでもなく、草の匂いを嗅いでいる。


「だよな。そんな簡単にはいかないか」

そのとき、森の入り口からホーンラビットが現れた。額の角をこちらへ向け、警戒するように足を踏み鳴らしている。

俺は管狐を見た。


「相手はあいつだ。無理に倒さなくていい。少しだけ、動きを見せてくれないか?」

管狐はしばらく俺を見たあと、地面を蹴った。

小さな影がホーンラビットの周囲を走る。速い。まだ追うのがやっとだ。ホーンラビットがその動きを追い、管狐の目を見たように見えた瞬間、動きが妙に鈍った。

だが、次の瞬間にはホーンラビットが頭を低くして突進してきた。管狐は軽々と横へ飛び退き、角をかわす。ホーンラビットは勢い余って通り過ぎたが、体勢を立て直すと森の中へ逃げていった。

管狐は追いかけなかった。何事もなかったように戻ってきて、俺の靴の周りを一周する。


「今の…目があったあと、何か起きたのか?」

確かなことはまだわからない。相手が強ければ効かないのかもしれないし、相手の性質によって起きることが違うのかもしれない。少なくとも、ただ近くを通っただけでは何も起きていないように見えた。

それでも、一つだけわかったことがある。管狐は俺の頼みを聞いたーーように見えた。気まぐれなのか、たまたまなのか。それも含めて、もっと観察する必要がありそうだ。

数日後、村に冒険者たちが到着した。ゴブリン討伐と村の警備の準備が進む中、俺は町へ戻るという冒険者に頼み込んだ。


「俺も町まで連れて行ってもらえませんか。この国のことをもっと知りたいんです」

相手は俺の格好や腰の短剣を見て、しばらく考え込んだ。


「足手まといにならないこと。勝手に危険へ近づかないこと。それを守れるなら、連れて行ってやるよ」

「守ります!」

本当に守れるかは、自分でも少し怪しい。それでも、ここに留まっているだけでは何もわからない。

俺はリュックを背負い、使い古しの短い剣を腰に差した。足元には、いつの間にか管狐がいた。


「一緒に来るのか?」

管狐は答えず、尾を揺らした。けれど、今度は森へ戻ろうとはしなかった。

こうして俺は、ベルン村を出ることになった。目指すのは、冒険者ギルドのある大きな町。そこには、この世界について知るための手がかりがあるかもしれない。

そして、まだ見ぬ存在たちとの出会いも。


ヤマトの旅は、まだ始まったばかりだ。


初めての村での騒動がひと段落?

次の町ではどんな出会いが待っているんだろう…

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