名匠 ヴァルド
それから一週間、ヤマトは冒険者ギルドで好奇な目に晒されながら依頼を受けるはめになった。
町の中でこなせる依頼を選び、仕事をこなしながら依頼人や町の人々にこの土地に伝わる昔話や言い伝えなどについて尋ねて回った。
中には古い建物にまつわる話や、森に近づくときの注意を促す言い伝えもあったが、詳しい由来まで知っているものはほとんどなかった。
それでも、ヤマトにとっては十分な収穫だった。知らない土地の暮らしや、人々が何を恐れ、何を大切にしてきたのか。それを知ることも、ヤマトにとっては楽しみのひとつだ。
討伐依頼にも少しずつ挑戦するようになった。
まだ強い魔物を相手にするのは難しいが、弱い魔物なら一人でも対処できるようになってきた。もちろん、危険を感じたら無理をせず、撤退することも忘れない。
管狐がそばにいることもあった。魔物の注意が一瞬それたり、絶妙なタイミングで相手が隙を見せたりすることもあったが、ヤマトはそれを管狐のおかげだとは気が付いていなかった。
別の日には、魔物を追っているうちに管狐がどこかへ行ってしまう、なんてこともあった。
自由気ままな小さな相棒に振り回されながらも、ヤマトは少しずつ冒険者としての生活に慣れていった。
そして、一週間後。
ヤマトは朝から落ち着かなかった。
「よし」
扉を開け、店内へと入る。
「来たか」
奥から聞こえた声に、ヤマトは顔を向けた。
「約束の一週間が経ちました。できてますか?」
「当たり前だ。誰に向かって言っている」
ヴァルドはぶっきらぼうに答えると、作業台の奥から一本の短剣を取り出した。
その瞬間、ヤマトの視線が吸い寄せられた。
「……!」
鞘から抜かれた刃は、光を受けて鈍く輝いていた。刃の色には、ほんのわずかに紫がかった色合いが混じっている。
柄はヤマトの手に合うように調整され、握ったときに余計な力が入らない形になっていた。全体の長さも重さも、ヤマトが扱いやすいように仕上げられている。
「これ、ミスリルも混ざってますよね?」
「ああ。お前が持ち帰ったものを使った。普通の鉄製の短剣より軽く、強度も強い。扱い方を間違えなければ長く使えるはずだ」
ヴァルドが説明を続ける。
「ただし、軽いからと言って雑に振り回すな。剣の扱いに慣れるまではーー」
「すげえ…」
ヤマトは短剣を見つめたまま、思わず声を漏らした。
ヴァルドの説明はほとんど耳に入っていない。
「おい、聞いているのか」
「えっ?あ、はい!」
「本当に分かっているのか?」
「もちろんです!」
「なら、今言ったことを説明してみろ」
「……」
ヤマトは口を閉じた。
ヴァルドは深いため息をつく。
「まったく…。武器を持つなら、扱い方くらい覚えろ」
「す、すみません!」
叱られながらも、ヤマトの目は短剣から離れなかった。
柄を握り、ゆっくりと持ち上げる。手になじむ感触が心地よい。重すぎず、軽すぎず、まるで自分のためだけに存在しているかのようだった。
「……最高だ」
ぽつりと漏れた言葉に、ヴァルドは呆れたように鼻を鳴らした。
「気に入ったならそれでいい。だが、手入れは怠るな。使ったあとは汚れを落とし、刃に異常がないか必ず確かめろ」
「はい!大事にします!」
ヤマトは短剣を鞘に収め、腰に取り付けた。
ようやく手に入れた、自分専用の武器。
これから先、どんな魔物と出会うのかは分からない。危険な目に遭うことも、きっとあるだろう。
それでも、この短剣があれば今までより少しは自分の身を守れるはずだ。
「ありがとうございました、ヴァルドさん!」
「用があるときだけ来い」
相変わらず愛想のない返事だった。
ギルドでの一件を思い出すと、まだ少し釈然としない気持ちは残っている。だが、目の前の短剣を手にした今、それ以上に嬉しい気持ちが勝っていた。
ヤマトは短剣の柄にそっと触れ、店を後にした。
腰に感じる新しい相棒の重みが、これからの冒険を少しだけ楽しみにさせてくれた。
ヴァルドの短剣ゲット!!
これでヤマト自身も今まで以上に戦えるようになりましたね!




