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53話 夏休み
大学は夏休みに入った。
授業がない分、気持ち的には楽だが——正直、それどころではない。
メインのバイト先が補修工事で一ヶ月の休業。
保証が出るとは言え全額ではない。収入源が消えたのは痛すぎる。
なんとか代わりの仕事を見つけたものの、条件のいいバイトほど過酷なもので……今、伸一郎は灼熱の太陽の下、工事現場で交通整理をしていた。
「……あっつー……」
誰に言うでもなく、ぼそっと呟く。
言ったところで何かが変わるわけじゃない。
それでも、この灼熱地獄で声に出さずにはいられなかった。
アスファルトが陽炎のようにゆらめいている。
耳をつんざく工事音。
不快指数100%の中、立っているだけで体力が削られる。
額の汗を腕で拭いながら、伸一郎はぼんやりと思う。
(なんで、こんなところ選んじまったんだろうな……)
郊外の比較的交通量の少ない場所。
時折通る車両を捌くだけの単純な仕事。
——だが、この場所は、あまりに思い出が多すぎた。
すぐ近くには、オレが幼い頃から18歳まで過ごした施設がある。
目を向けるつもりはなかったのに、無意識に視線がそちらへ向いてしまう。
もう、何年も訪れていないはずなのに——
胸の奥が、少しだけざらつく。




