31.決戦
巨大な魔物が姿を現すと、その圧倒的な存在感に麗は一瞬たじろいだ。
「私…この怪物を知っている…これは…ベヒーモス!」
目の前に立ちはだかる巨大な体躯と恐ろしい力を誇るこの獣は、隼人の心の奥深くに根付いた最も強力な恐怖と怒りの象徴だった。
「聖書で読んだことがある…。これが隼人の心の闇…」
麗は手の中の光の糸を再び握りしめ、冷静さを保ちながらベヒーモスに立ち向かった。ベヒーモスはその巨大な腕を振り上げ、麗に向かって振り下ろす。彼女は素早く回避し、その隙を突いて光の玉をベヒーモスの胴体に向けて放った。しかし、光の玉はベヒーモスの肉体に吸収されてしまったかのように消えてしまった。
「こんなに強い闇を相手にするなんて…。」
麗は自分の力だけではこの闇を打ち破れないように感じた。
ベヒーモスは持ち前の野獣のような力で物理的な攻撃を繰り出し、その凶暴さに麗もさすがに抗いきれない状況に追い込まれ、とうとうベヒーモスの強力な一撃が麗を直撃し、彼女は地面に倒れ伏した。意識が薄れる中、もう駄目かと思ったその時、暗闇の奥深くから、突然黒い魔女の姿が現れた。
「心の中に潜れるのは、あんただけじゃないのよ。」魔女の声が麗の耳に響く。
「おばあちゃん!」麗が驚きの声を上げると、そこには京都へ導いてくれた占い師のおばあちゃんの姿があった。
魔女は手にした古びた杖で魔法を紡ぎ、ベヒーモスに挨拶代わりにとお見舞いする。さらに、おばあちゃんは古びた袋を取り出し、中から腐ったりんごを取り出した。
「ひひひ、この腐ったりんご爆弾を使うんじゃ。こいつでベヒーモスを弱らせるんじゃよ。」
おばあちゃんが腐ったりんごをベヒーモスに向かって投げつけると、それは爆発し、腐ったガスがベヒーモスの体を包み込んだ。ベヒーモスは鼻をくんくんとさせ、動きが徐々に鈍くなり、その凶暴な力も弱まっていく。
「どうやら効いてるみたいね、ひひひ。」
麗は援護してくれたことに感謝しながらも内心、"腐ったりんご爆弾"という方法の汚なさに複雑な感情を覚えた…。
「何をしておる。今やらんかい!」
「…あ、はい!」
麗は決死の力を込めて、光の糸を両手に凝縮させた。そして、その集中したエネルギーをベヒーモスに向けて放つと、腐ったガスに包まれたベヒーモスの体が崩れ始め、一瞬の間にしてベヒーモスは消滅した。
「おばあちゃん、どうしてここに?」麗が問うと、魔女は微笑みながら答えた。「精神修行を積むと、こうしたことも可能になるんじゃ。でも、あんたにゃまだ早いけどね。」麗の肩をぽんぽんと叩いた後、魔女はほうきに跨り、高らかに笑いながら空高く舞い上がってどこかへと去っていった。




