29.邂逅
町のネオンが夜空を染め上げ、東京の喧噪が街を包み込んでいた。麗は、その混沌の中に自らを紛れ込ませながら、あの日の記憶を掘り起こそうとしていた。自分自身へのマインドダイブでは、「愛の花」の存在を知るきっかけになったけれど、残念ながら事件の真相の手がかりとなるものは見つからなかった。
(…なぜ…?記憶が消されているということ…?)
しかし、街角で目にした異様な中年男の姿が、彼女の注意を引いた。その男の風貌は、女達と交じっている中でも特異な存在だった。見覚えがある。確かに、あの夜、麗は彼とホテルへと足を運んだ。しかし、その後の記憶は闇の中に消えている。そして今、その男が目の前に現れたことに、麗の心は動揺を覚えた。
「どうして生きているんだろう?」麗は自問する。その疑問が、彼女を男の後を追わせた。路地裏や人通りの少ない箇所を歩きながら、麗は懸命に記憶の断片を取り戻そうと試みる。
男は速い足取りで進み、時折振り返ることもなく進路を変える。麗は彼の後を黙々と追い続ける。この街で繰り広げられる、彼女自身が関わった事件の糸口が、この男につながっているのではないかと直感した。
夜風が彼女の頬を撫でる中、麗は過去と現在の境界線を越え、真実を解き明かすべく、男の後を追い続ける。
町の深夜、路地裏での出来事は突然のものだった。麗は男の後を追い、その男が若い男から金を強奪し、暴力を振るっている光景に遭遇した。闇に染まった路地裏で、麗は恐怖と緊張でいっぱいだった。
「おい、金を出せよ!くそガキ!」男は威嚇するような声で若者に迫り、彼から金を奪う。そして用済みになった若者を…ナイフでめった刺しにした。
麗は身の危険を感じ急いで逃げようとしたが、その時、足元に置かれていたゴミ箱が転がり、大きな音を立てた。「ん、誰だ?」男はゴミ箱の方を向いて、麗の姿を発見した。彼女は一瞬で、動けなくなってしまった。
男が近づいてきた。彼はこの地域で有名なボスであり、その冷たい眼差しは麗の心に恐怖を呼び起こした。
「俺は加賀見隼人様だぁ。俺に用があるのか、お嬢ちゃん。」
麗は追い詰められ、男に片手で首を掴まれ軽々と持ち上げられる。しかし、彼女は決死の覚悟で男の目を見つめ、能力を発揮しようとした。心の奥深くに潜む男の心に入り込むよう精神を一極集中させ、その瞬間、麗の意識は男の内面に飛び込んでいった。




