13.H.S.P
中学2年生の頃、麗は人間関係についてますますわからなくなり、学校に行くことが辛くなっていった。友達との会話が疲れるし、クラスの雰囲気に敏感になりすぎて、時にはパニックになることさえあった。父親は心配して、近くの小さな精神クリニックに連れて行ってくれた。
そのクリニックで診察を担当したのは、天城という若い男性医師だった。落ち着いた佇まいで、深い眼差しを持っていた。麗は初めての診察で緊張しながらも、何かを期待していた。
「麗さんの症状についてお聞きしたいのですが、どのようなことがお悩みですか?」天城は優しい口調で問いかけた。
麗は言葉に詰まりながらも、自分の感情や体験をできるだけ正確に伝えようと努力した。「友達との関係が…うまくいかないんです。でも、私がおかしいのかなって…」
天城は真剣に聞き入っていた。「それはとても大事なことですね。麗さん、私が考えるに、あなたはHSP、高度に敏感な人としての特性を持っているのではないかと思います。これは病気ではなく、むしろ人間の持つ感受性のアンテナが、普通よりも何倍も鋭敏に情報を取りすぎてしまうことです。そして、そのために疲れやストレスを感じることが多いのです。」
麗の父親は少し驚いた表情を見せたが、天城は続けた。「ですが、これが病気というわけではありません。むしろ、この感受性があるからこそ、麗さんは周囲の気持ちや状況を敏感に捉え、その中で生きているのです。ただし、時にはこの感受性が強すぎて、身体や心に負担をかけてしまうことがあります。将来的には、この特性が別の病気の引き金になる可能性もあります。ですので、日常生活での工夫やケアが重要になってくるのです。」
麗は天城の説明を静かに聞いていた。その言葉が自分の今までの生活に、新しい視点を与えてくれた気がした。
麗の父は、天城の説明を聞いた後、少し考え込んだ表情で質問を投げかけた。「天城先生、それは…親から娘に受け継がれたものなのでしょうか?」
天城は微笑みながら答えた。「実際にHSPは遺伝的な要素も関与しているとされています。そのため、ご家族にも似たような特性を持つ方がいらっしゃる可能性があります。ただし、HSP自体は病気ではなく、あくまで個人の感受性の範囲の違いです。この特性がどのように生活に影響を与えるかは、個人差がありますので、お二人それぞれに合った対策や理解が必要ですね。」
麗の父は深くうなずいた。「ありがとうございます。私も娘も、これからどう向き合っていけば良いか…少し考え直さなければなりませんね。」
麗は父と一緒に、天城の言葉に救われたような気持ちで、帰路についた。




