表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/33

11.母との思い出

挿絵(By みてみん)


ある日の夕方、麗は病室の窓辺に座っていた。淡い夕焼けが窓ガラスに映り、部屋全体を柔らかいオレンジ色に染めていた。彼女は手元に赤いあやとりの紐を握りしめ、心の中の寂しさを埋めるように指を動かし始めた。


(また、寂しくなってしまった。お父さん、母さん、今どこにいるのかな…)


あやとりは彼女にとって、単なる遊び道具ではなく、失踪した母親との繋がりだった。母親が最後に麗に手渡したものであり、その赤い紐はいつも麗のポケットに入っていた。


「麗ちゃん、またあやとりしてるのね」と、看護婦の由美が優しく声をかけた。


「うん、これをしていると、少しだけ安心できるんだ」と麗は答えた。


「それは大切なものなんだね」と由美は微笑みながら、麗の側に座った。


「母さんがくれたんだ。いつもこれを持っていると、母さんが近くにいる気がして…」麗は紐を器用に操りながら、遠い目をして話した。


「それは素敵な思い出だね。お母さんもきっと麗ちゃんを誇りに思ってるよ」と由美は言いながら、麗の手元を見守った。


「ありがとう、由美さん。でも、本当はもっと強くなりたいんだ。母さんに誇ってもらえるように」と麗は決意を込めて言った。


その言葉に由美はうなずき、「大丈夫、麗ちゃんはもう十分強いよ。でも、まだまだこれからもっと強くなれる」と励ました。


その日から、麗は入院中の時間を使って、あやとりの技術をさらに磨いていった。彼女はあやとりを通じて、母親との絆を再確認し、自分の内なる強さを見つけていった。


(この赤い紐が、私の心の支えになる。どんなに辛い時でも、私はこれを手放さない)


麗の心の中に、母親の温もりがほんのりと感じられる瞬間だった。


その日の夜、麗は夢の中で母との幼少期の思い出を蘇らせるのであった。


ーーーーー


幼少期の私は、あまり強くなかった。ちょっとしたことで泣いてしまうような、繊細な子供だった。ある日のこと、幼稚園で遊んでいた時に転んで膝を擦りむいてしまった。涙が溢れ出し、痛みと恐怖でどうしようもなくなった。


家に帰ると、母親が心配そうな顔で駆け寄ってきた。「麗、大丈夫?どこが痛いの?」と優しく問いかけてくれた。私は泣きながら、「膝が痛い」と答えた。母は私を抱きしめ、「大丈夫、大丈夫」と何度も繰り返し、傷口を丁寧に手当てしてくれた。


その時、母は私の手を握りながら、こう言った。「麗の麗は、綺麗の麗。麗はいつも綺麗で輝いているんだよ。どんなに辛いことがあっても、君はその美しさを失わないんだからね。」その言葉は、子供心に深く響いた。母の温かい手と、優しい声が、痛みを和らげてくれた。


今の私は、精神的にも肉体的にも過酷な日々を送っていた。病院のベッドに横たわり、闘病生活の中で何度も心が折れそうになった。未来が見えず、希望も持てなくなりそうな時もあった。


幼い頃、膝を擦りむいて泣いていた私を励ましてくれた母の姿。母の温かい手の感触、優しい声が鮮明に蘇った。「麗の麗は、綺麗の麗。どんなに辛いことがあっても、その美しさを失わないんだからね。」母の言葉が、夢の中で何度も繰り返された。


目が覚めると、涙が頬を伝っていた。母の言葉が、私の心の支えとなっていたことを再確認した。どんなに辛い状況でも、自分の中にある「綺麗」を忘れずに生きること。それが、母が私に教えてくれた大切な教訓だった。


その日から、私は母の言葉を胸に刻み、少しずつ前を向く力を取り戻していった。闘病生活は続くけれど、母の励ましの言葉が私を支えてくれる限り、私はきっと乗り越えていけると信じられるようになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ