10.看護婦、由美
ある日の昼食時、麗はベッドの上で本を読んでいた。
「お昼ご飯持ってきたよ、麗ちゃん。」看護婦の由美がトレーを持って部屋に入ってきた。
「ありがとう、由美さん。」麗はぱたっと本を閉じてトレーを受け取りながら、ほっとした表情を浮かべた。
「最近どう?調子は?」 由美が心配そうに尋ねた。
「まあ、少しずつ良くなってるかな。でも… あの日のことが頭から離れないんだ。」 麗は苦しそうに答えた。
由美は椅子に腰掛け、真剣な表情で麗を見つめた。 「無理もないよ。相当なショックだったでしょう。」
「ホテルで男が倒れてるのを見て、気が動転して自殺を図って… ここに運ばれてた。」 麗は震える声で話した。
「でも、院長先生がすぐにあなたを見抜いてくれたのよ。あなたが犯人じゃないって、一瞬でわかったみたい。」 由美は優しく微笑んだ。
「どうしてそんなことがわかるの?」麗は驚いた表情で尋ねた。
「院長先生はね、感覚の鋭い人だから。君の目を見ただけで、君がそんなことをする子じゃないって感じたんだと思う。」
「…目を見ただけで…?」
「うん、目を見ただけで。それで、ここは地元でも大きな病院で権力もあるから、今はかくまってくれているのよ。」 由美は真剣な顔で答えた。
「でも、本当に私が何もしてないって証明できるのかな…」麗は不安そうに呟いた。
「大丈夫。院長先生はあなたを信じてるし、私たちも麗ちゃんを支えるから。」 由美は麗の手を握りしめた。
「ありがとう、由美さん。本当に感謝してる。 でも、私自身も自分を信じられるようにならなきゃ。」 麗は涙を浮かべながらも、決意を新たにした。
「そうだね。まずはしっかりご飯を食べて、体を元気にすることが大事だよ。」 由美はトレーを指さしながら微笑んだ。
麗は頷き、トレーに手を伸ばした。 「うん、頑張るよ。まずは健康になることから始める。」
「その意気だよ、麗ちゃん。私たちみんなで麗ちゃんを応援してるからね。」 由美は励ましの言葉をかけながら、麗の回復を心から願っていた。
「あれ?麗ちゃん?」
由美が急に真剣な眼差しになり、麗を見つめた。
「…?」
「麗ちゃん、気になったことがあるの。ちょっと手鏡で見てくれる?」由美は心配そうに手鏡を差し出した。
麗は不安そうに手鏡を受け取り、ゆっくりと自分の髪に目をやった。そこには、明らかに増えた白髪が映っていた。
「これ…どうしちゃったんだろう…」麗は恥ずかしそうに呟いた。
由美は優しく微笑んで、「あらやだ、メッシュみたいでお洒落じゃん!ほら、最近はこういうのが流行ってるんだよ。自然なハイライトって感じで素敵だよ、麗ちゃん。」
「ええもう、由美さん、やめてよー。」麗は少し照れくさそうに笑った。
(その日から、入院中の私の髪はどんどん白くなっていき、完全に白髪になってしまった。
由美さんは完全な白髪を目の前にしても、「染めてるみたーい」とかなんとか言っておどけるので、その明るさにどれだけ救われたかわからない。)




