御用聞き(改)
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ペルディータが図書館に行っている間、ロザリアは実家から来ているメイドのセティアが御用聞きに来訪している約束の為に面会室に小走りで向かっていた。
彼女にとって、この学園に居る時はこれと言って不自由する事はほとんどないので毎週の御用聞きはやめて貰って、半月に一回程度でもいいのかもしれないと思いながら到着した面会室のドアを開ける。ちょこんと椅子に座る専属メイドのセティアを確認し手を振ると、彼女はロザリアに気が付き慌てて立ち上がってペコリと頭を下げる。
「お嬢様!御足労頂き有難うございます。本日はいつもの御用聞きと奥様から預かったドレスを一着もってきました」
「うん、ありがとう。お母様はまた新しいドレスを新調してきたのね、まったく仕立て屋の良いカモね」
「そう言わずに見てみてください」
小柄なセティアには大変であったろう大きなバッグを開けると、目に飛び込む鮮やかな桃色でリボンとヒラヒラ多めのドレス。ハハと乾いた笑いと共にそっとバッグを閉じて深いため息をついた。
「まあ、お母様のご厚意だから一応預かっておくわ」
「え?だめですか?すごく可愛いドレスだと思うのですが」
不思議そうな顔で渋い表情のロザリアの顔を覗き込んで来るセティアに自分のストレートロングな黒髪を指さして肩をすくめると分かってくれた様だった。似合う似合わないよりも母は相変わらず自分好みを押し付けてくるので最近は諦めている。
「さて、それはさておき御用聞きの件なんだけど、寮生活は別段何かが無くて困る事は少ないから半月に1回ほどに減らせてほしいとお父様にに言っておいて欲しいのだけど」
「え?よろしいのですか?」
「うん、さっきも言った通り、しょっちゅう必要な物が出るわけじゃないし急ぎで必要な物が出たら連絡する程度にしたいの」
「そう言う事でしたらわかりました、旦那様にはそう伝えておきます。それとなのですが……」
そう言葉を濁すと、少し言い難そうにモジモジしている。
「なに?何でも聞いていいわよ?」
「それではちょっと小耳に挟んだのですが、あの、お嬢様って魔族の女性と同棲してるって本当ですか?」
「は? ど、ど、同棲じゃないわよ!ぺ、ペルは普通のルームメイトよ!!」
思わぬ質問に一瞬硬直したがすぐに勘違いしてるセティアに言い訳したがジトっと訝し目をしてロザリアを見て来る。
「という事は本当に魔族の女性と同じ部屋なのですね?大丈夫なんですか?呪われたりしてませんか??」
少し興奮したように鼻息荒く迫って来る彼女の肩を持って落ち着かせるように言い聞かせた。
「いい?あたしは呪われても何もされてないの、それに彼女は大事な友人なんで悪く言わないで頂戴ね!」
「ひ、ひゃい、す、すみませんでした!」
ロザリアの言葉の勢いが過ぎたのかセティアは頭が床に着く勢いで謝罪して来たので、慌てて彼女の体を起こし頭を撫でてあげると”エヘヘ”と嬉しそうに照れている。
「いいのよ、あなたもあたしを心配して言ってくれたんだもんね、分かってくれればいいわ。それより最近は自由に市中に行く事は出来なくなっちゃったけど、何か面白そうな話はある?」
そう聞かれ、セティアは少し目をキョロキョロさせながらしばらく考え込むと思い出したのかまとめて全部口にして来た。
「あ、はい、そうですね~面白くはないですが、最近墓荒らしが横行してるみたいですね。特にお年寄りではなく、若く亡くなってしまった冒険者の墓なんかが多いらしいですが嫌な話ですよね~。後は町中の話しで魔石の純度が悪くなる一方で値段が少し上がってます。値段が上がると言えば、冒険者ご用達の回復ポーションの値段も上がってるみたいですね。だから回復術師は引っ張りだこみたいですよ」
「ふ~ん、遺品目的だったらお金持ち狙いそうな話だけどそうじゃないなら妙な話ね。魔石の話しはあたしも聞いた。部屋の魔石ランプの寿命が短いって愚痴は食堂で色々な人が言ってたわ」
「それからそれから、回復術師関連ついでで最近若い娘が誘拐される事案が増えてる様です。おかしなことに誘拐された彼女らは郊外で割とすぐ見つかるのですが、みんな治癒魔法の心得がある女性達ばかりで更に誘拐された前後の記憶がないらしく、捜査に当たってる騎士団の方でも捜査が難航しているようですね」
セティアの話を聞いて、ロザリアは背筋が少し寒くなる思いをした。部屋に押し入った男は市中でも聖女探しをしているのだろうか?
……とは言え、治癒魔法を使える若い女性はそう多くない為に手詰まりになった場合、再び現れる可能性も高い事を考えておかないと危険かも知れないと彼女は思い始めていた。そもそも何故自分が目を付けられてしまったのかが不気味で仕方なかった。
「お嬢様?難しい顔をしてどうなさいました?」
「あ、大丈夫よ、ちょっと考え事をしていただけだから」
その後は現在の屋敷の事や他愛のない話でしばらく談笑していたが、隣の部屋から職員が現れ終了時間を伝えられ話を切り上げる事にした。
「それではお嬢様、御用聞き期間の件は旦那様に伝えておきますので」
「うん、今日は色々ありがとうね」
「いえいえ、御用聞き以外の日でもお呼び頂ければ何時でも駆けつけますのでお礼は結構です」
そんなセティアの頭を撫でながら面会室の出口へ彼女を導き、扉を開けると丁度図書館の方から歩いて来たペルディータが目に入り声を掛ける。
「あれ?ペルは今戻り?」
「うん、あら?そちらの可愛いメイドさんは?」
横に居たセティアを見つけ聞いて来たが、当のセティアは驚愕の顔をして固まっていた。
「ああ、あたしの専属メイドのセティアよ、こっちはルームメイトのペルディータ、ご挨拶なさい」
「こ、こ、こんにちはぺ・ペルディータ様、せ、セティアと申します。お嬢様がいつもお世話になっております」
カチコチに緊張をしながら小さな体をこれまでかという位、曲げで頭を下げる。
「はい、こんにちは。うん、そんなに緊張しなくていいわよ、食べたりしないから」
「ひぃ!?た、食べないで下さい~」
大慌てでロザリアの後ろに隠れて上着の裾を掴んでいる。
「ペ~ル!自分で風評被害だしてどうするの」
「ごめんごめん冗談よ、ロザリーには仲良くしてもらってます。びっくりさせてしまったお詫びにこれあげるね」
そういうと持っていたいくつかの包みの一つをセティアに渡してニコリとしてロザリアにも包みを渡して来た。
なにこれ?と包みを開けると小さな焼き菓子がいくつか入っていて、香ばしい香りが辺りを包み込んだ。
「え?まさかペルが作ったの?」
「前に時間があった時に厨房借りて作ってから冷めるまで保管して貰ってたのを忘れていたの。んで帰りがけに思い出して寄って来たってわけ」
「いい香りですぅ~!ペルディータ様はお嬢様のご友人に相応しいとても良い方ですね」
焼き菓子袋を抱えて恍惚な表情のセティアを見て”この子チョロ過ぎるでしょ”と思いつつ改めて彼女の女子力高さにロザリアは軽いショックを受けていた。
「はぁ~、胸デカくて剣術出来て、さらに料理まで……最強すぎでしょ」
思わず口走った感想に彼女はヤレヤレといった顔で苦笑いしている。その後はセティアを送り、二人他愛のない話をしながら部屋へと戻って行く。いよいよ明日はフィールドワークである。




