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再会した彼


 食事が終わり、各々自分の部屋に帰って行く姿を見て自分も部屋に戻ろうと立ち上がり、周りを見るとやはり動向が気になるのか周りの人間は遠巻きに見てヒソヒソとこちらをチラチラ見ながら様子をうかがっている。こんな状況で話しかけて来るもの好きはいないと思っていたが、やはりと言うか例の彼が話しかけて来た。


「えっと、ペルディータちゃん……で合ってるよね」


「はい、合ってますレイソードさん」


「あれ?名前知ってたんだ、どこかで聞いた?」


「ええ、ロザリアさんからお聞きして」


「そっか、まあ同じクラスっぽいし、よろしく~」

 屈託のない笑顔を見ると、特に作り笑顔でもなく寧ろ好意的な目をしている。たぶん彼の中では種族がどうとかは関係ないのだろう。こちらとしては付き合いやすい人かもしれない。


「よろしくお願いします」


「まあ、最初の内は色々とやり辛いかもしんないけど、困ったことがあったら相談に乗るから声かけてね」


「有難うございます。あの、なぜそこまで気にして頂けるのですか?」

 私の問いにレイは意外そうな顔をした。


「やだなあ、あの野盗との闘いを共に潜り抜けた仲じゃない?ってのは表向き、単純に君に興味があるって言ったらどう思う?」

(質問を質問で返さないで欲しいが、なるほどそう来たか)


「私に興味を持って頂けるのは嬉しい限りですが、私が貴方に興味を抱くかは別問題なのであしからず」


「おぉう、辛辣! でもまあマジな話、さっきの騒ぎからも見て取れると思うけど色々やり辛い事もあるかも知れないからさっきも言ったけど困った事があったら力になるから」


「あ、はいありがとうございます……」

 意外な申し出と屈託のない笑顔でニカっとする姿は純粋に好感が持てた。ただ好意を利用する様で少々申し訳ないが、とりあえず彼なら第二王子の事を知っていそうだ。


「あ、そうだ俺の連れを紹介って……あれ?ジル??いねえし! 仕方ねえ、またねペルちゃん」

 先に帰ってしまったらしい連れを追って食堂を出て行く彼を見送りながら私も自室に戻ろうとすると、ロザリアが出入り口で待っていてくれた。


 先に戻ってもよかったのにと一瞬思ったが、夕方の件を考えれば一人で戻るは怖かったのだろう。私としてもあんなのにしょっちゅう出入りされても困るので後で対策を練る必要がありそうだ。


「部屋に戻りましょうか」

「ええ」

 私の声に頷き、共に歩きはじめるとポツリと呟く。


「レイソードさんっていつもあんな感じなのよね、気さくで良い人なんだけど女の子に気が多いというか」


「ふーん、でも私はあのような方は嫌いじゃないですね」

 ”えっ?”という顔でこちらを見て来る。


「ああ、恋愛感情とかそういうのじゃないですよ」


「そ、そう、ちょっとビックリした」



 そんな話たわいもない話をしながら寮の自室に入ると南側の窓に猫が入りたそうな顔でこちらを見ていた。窓に歩み寄り少し開けてあげると、ピョンと猫のアンテが入って来て私のベッドの上に乗っかると”ニャー”と一声発するとそのままベッドの上に鎮座する。


 その様子を見ていたロザリアが目を丸くして私と猫を交互に見比べる

「え?あなたの飼い猫??」


「飼い猫じゃなくて使い魔ね」


「使い魔?魔族や魔法使いなんかが使うというやつ?」


「そうそう、このアンテは私の専属メイドの所有している子なんだけどね、ああ、大丈夫よ部屋を汚したりしないから。猫苦手?」


「大丈夫っていうか、むしろ猫は好き。さわっていい?」


「どうぞ~」

 ロザリアはそろりと近づき、そっと頭や顎を撫でたりするとゴロゴロいう猫にご満悦のようだった。その様子をみながら窓の縁に座り猫と視線を合わせるとネコマルさんとの念話が頭に流れて来る。


《――お嬢様、一通りの手続きは終わりました。他に何か必要な物はございますか?》


《うん、物と言うより対処が必要な事があるんだけど、いい?》


《――内容によりますが、なんでしょう?》


《初日早々部屋に賊が入ったの、たぶん同居人のロザリア・オデュッセイ嬢を狙ったものだと思う》


《――え?お嬢様は大丈夫だったのですか?》


《問題ないよ、相手は私が居た事を知らずに襲って来たようだからぶっ飛ばしておいたわ》


《――まあ、お嬢様らしいと言えば良いのですが、あまり無茶をしないようにして下さい。それとオデュッセイ家ですか?調べてはおきますが取り合えずお嬢様の身の安全も鑑みて後で簡易結界を施す事が出来る魔具をお送ります》


《うん、ありがとね~》


《――それはそうとお嬢様、例の王子を確認出来ましたか?》


《まだ見つけてない。知り合いになった男子生徒がいるからそれとなく聞いてみる》


 その後はいくつかの確認事項を共有している間、ロザリアはアンテの事が結構気に入った様でずっと抱っこしたり撫でたりして遊んであげているのを見て、内心ほっとしていた。



《――はい、ではご連絡事項は終わりますので失礼します》


《はいな》



 ネコマルさんとの通信が終わったと同時にロザリアが声を上げる。

「ええ?猫ちゃん!?ペルさん!猫ちゃんが……」


 抱っこしていた猫が突然白くなって煙の様に消えてしまった事に驚きを隠せないようだ。


「大丈夫ですよ、役目を終えたので複製が消えただけです」


「役目?」


「さっき言った通り、私のメイドさんが連絡用に遣わしただけだから死んで消えたわけじゃないので用がある時はまたやって来るからまた可愛がってあげてね」

 私の言葉にホッとした表情をした後、ハッとした顔になって頬を赤らめて気まずそうにしていたので理由を聞くと、思わず愛称で呼んでしまったのを気にしたようだ。


「ごめん、馴れ馴れしかったわね」


「ん?ペルでいいわよ?同じ部屋だしフルネームも面倒でしょう。もう愛称で呼んでる人もいるし」

 レイソードを思い出し苦笑した。


「じゃあ、あたしもロザリーって呼んで頂戴」


「ええ、でも愛称呼びより口づけをするのはちょっと早いかも知れないね」


「口づけ?……あ、あなたまさか……あの時、起きて……」


――バフッ


 赤い顔でワナワナ震える彼女に唇を人差し指で示し、ウインクして見せたら枕を投げつけられた。





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