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第467部分

「いえ。ただ、シラユキ先生も似た様な事を言ってたなあ、と思って」


 とはいえ、それが先程からの自身を揶揄う様な言動への意趣返しだとしても、相手からの質問に対し最後まで無視を貫くという事までは行かないのが当人の性格という事か、暫しの間フィーの視線を受けて漸く開いた少女は、自身がにやにやしていた、もとい微笑みを浮かべていた理由を特に隠す事も無くそう答える。


「はあ!? 何よそれ、アタシとあいつが似た者同士って言いたいわけ!? アタシをあんな性格の悪い奴と一緒にするんじゃないわよ失礼ね!」


 しかし、未だ微笑みが残っていた事を除けば、その返答自体には一切の虚偽も無くただ通常通りの口調で素直に答えを返しただけであったのだが、それを聞いたフィーは異様な程の不服さを顕わにしてそう聞き返すと、少女の発言に対して怒涛の勢いで異論を申し立てる。


 尤も、少女は単に「シラユキも似た様な事を言っていた」という事実を述べただけであり、別に両者の性格やらが似通っているなどという事は一言も口にしてはいないし、その何だかんだ人の、もとい面倒見の良い所を除けば別に両者が「似た者同士」だなどとは思っていなかったのだが、それでもそう扱われる事が余程腹に据えかねたのか、その不満の感情はその口調だけでなく表情にも如実に表れていた。


「……いや、私はただ似た様な事を言ってたと言っただけで――」


「なら何処がどう似ていたのかをはっきりと説明しなさい。まあアタシはあいつが音楽の事を話してるところなんて想像も出来ないけど、一体何処がどう似ていたと言うのかしら?」


 とはいえ、その言葉の勢いと久しく味わっていない、どころか何だかんだ周りの人間には恵まれていたり当人の性格もあり、生涯味わった覚えも無かったかもしれない睨む様な視線に気圧された事で結果としてやや間を置きながらも、そのフィーの異論と自身の言動の不適合についてはしっかりと認識していた少女はその旨を口にする。


 が、何がそこまで気に喰わないのか、フィーはその途中で口を挟んでまでその「似た様な事」がどの様なものであるのかの説明を求めると、要するに「シラユキは音楽の事なんて言ってない筈だから自身は似た事を言ってなどいない」という主張を、その説明を求める質問という形で繰り広げる。


「……いえ、ごめんなさい。似た様な事だと思ったのは私の勘違いだったわ」


 尤も、その「似た様な事」というのは、則ち「自身でも知らない事を知り過ぎている、が故にこの世界の人間ではない」という旨の言葉を指していた為、それが音楽についてだの何だのは特に関係の無い事である、つまりそのフィーの主張はかなり無理のあるものであったのだが、一連のフィーの言動からして最早論理的に反論する事は無駄だという事を漸く悟った少女はやや遅れて口を開くと、形だけの謝罪と共に先の発言の撤回を表明する。


「分かれば良いのよ」


 とはいえ、先述の通りそれは何れも事態を収める為だけの形式だけのものであり、これまでに見せていた洞察力、及び件の妖精の能力を考えれば、その事を察する事はそう難しい事でもない筈であるにもかかわらず、その少女の言葉を聞いたフィーは先ずはあっさりと険しかった表情を緩めると、満足げに頷きながらそう答える。


 と、その仕草にもシラユキとの類似点を見出した少女であったが、その言動からしてシラユキと似ているという扱いをされる事が兎に角嫌らしいフィーへの配慮半分、また今の様に五月蠅くされる事は勘弁という気持ち半分といった所でそれをどうにか我慢する。


 しかし、この一連の問答を経たとて、自身の態度は変わったとしてもその内心というか考えまでが変わった訳ではなく、たった今もそう思った様に相変わらずフィーとシラユキに似た所があるとは感じていたのだが、たった今の方は兎も角前者の事は恐らくは分かっている筈であるにもかかわらず、未だにその事については一切気にする素振りも見せずに満足げなままである事からも、どうやらフィーは相手の態度や言動に対しては過剰な程の反応を見せる事もあるものの、どうやら内心でどう思われているかという事については然程、或いは一切気にしていない様だった。


「それで、最初の質問に戻るけど、実際どうなのよ?」


 ともあれ、その様に少女の思考が脱線している事に気付いた為なのかは不明だが、いつの間にか平常通りの表情に戻っていたフィーは続けて口を開くと、脱線し続けていた話題を強引に……という程ではないものの元に戻して再度そう少女に向けた尋ねる。


 尤も、厳密に言えば最初の質問とは文言は異なっているというか、再度同じ事を尋ねずとも理解は出来るだろうという事で省略されていたが、直前の思考を未だ続けていた事もありその突然の質問には若干不意を突かれる様な形にはなったものの、当然ながら実際にこの短期間で最初の質問を忘れた訳ではない少女は、少し目を伏せてその質問にどの様に答えるべきかを考えるのであった。

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