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夏になる頃へ  作者: masaya
三章 四月の雪
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9

まずったな。彼女は友人、後輩を見かけたから話しかけただけ。けれど、彼女の表情を見てそう思ってしまった。同性だから分かる。誰かを好きになったことがあるから分かる。アノ表情。御崎(かのじょ)がいい子だって分かっているし露骨に表情に出しているわけでもない。けれど香織は分かってしまった。

「あ、えっと・・・」

ふり絞って出た言葉がこんなものか。なんて苦笑いが出てしまう。と、尋が不思議そうな表情を浮かべながら、

「どしたの?なんか気まずそうな表情にも見えるけど?」

尋は香織の感情までは分かっていないが何となく、なんとなく香織が抱いた負の感情を感じたのだろう。御崎もまた、心配そうに視線を向ける。えっとそうだ!なんて理由もなく(ことば)を口にする。

「何となく尋ちゃんの花火のセンスが悪そうだって思って来てみたけど、御崎ちゃんがいてくれてるなら大丈夫だね!」

「なんかほんの少しだけ僕に失礼なことを言ってる?」

「わ、私なんて」

本当にかわいい。香織は御崎の表情を見るなり微笑ましくなり、けれど何だろう?この感情は。自分でも分からない胸の奥の痛み。えっと・・・。口を開いたのは御崎であった。

「清水先輩は今から用事ありますか?尋先輩がお昼ご飯をごちそうしてくれるらしくて!宜しければ一緒にどうですか?」

「わ、私は本当にいいよ!ごめんごめん。御崎ちゃん尋のことよろしくね。私も実は買い物があって」

あら、そうなの?なんてお気楽に尋は頷き納得をしている。御崎もまた、用事があったのに誘ってしまってすみません。と、頭を下げる。

「急にごめんね!私いくね」

なに一人でから回ってんの私。上手く笑えてたかな。なんだか最近心が変な感じだ。香織は二人に告げるとあてもなく商店街へと向かう。



ーーーーーーーーーー



尋は空気を一変するようにパン。と、両手を叩き御崎へと視線を向ける。

「さて、御崎ちゃん。ごはんでも食べに行こう。お腹空いたでしょう」

いつもの尋先輩だ。相変わらず優しい先輩の視線に御崎はホッとしてしまったのか微笑を浮かべる。

「はい。私お腹が空いてきました」

満面な笑みに尋も少し驚いたけれど、どこか微笑ましく御崎には悟られないように微笑み返す。ふと、本当にふっと

「御崎ちゃんって笑顔もかわいいね」

「ふぁい?!」

自分でも始めて異性に聞かせてしまった声。いや、きっと同性でも聞かせたことがない声が出てしまった。片思いの相手にそんなことを言われてしまったら。それも唐突にかわいい。なんて言われたら変な声が出てしまう。尋もまた、自分が発した言葉に驚いたが、それ以上に御崎が面白い声を出すものだから笑ってしまう。

「な、なに笑ってるんですかっ!」

御崎は尋の肩を叩く。尋もまた、ごめん。失礼なことを言った。と謝罪する。御崎にはその謝罪なんて聞こえず歩き出す。少し先を歩き振り向く。と、

「先輩!お腹すきました行きましょう!」

「ご、ごめん!行こうか!随分と待たせちゃったね」

尋も慌てて御崎を追い歩いていく。

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