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第20話 神託、そして復讐

第20話です。今月は30話まで書く予定です。

今後ともよろしくお願いします。

王都の夜は眠らない。

情報屋。

裏路地。

貴族の名簿。

過去の判決記録。

復讐は、感情だけでは成らない。

「……これで三家目……」

宿の一室。

机の上には紙束と地図。

赤い印が少しずつ増えていく。

「……王家直轄、

教会経由……」

指でなぞる。

——繋がっている。

攫い。

口封じ。

魔物の異常発生。

すべて上に行き着く。

「……急ぎすぎるな」

自分に言い聞かせる。

ミアたちはもう眠っている。

エルナの寝息。

リーナの静かな呼吸。

——守るものが増えた。

それは弱点でもある。

「……」

ベッドに横になる。

意識がゆっくりと沈む。

夢。

だが、暗くない。

広く、白い世界がただ広がっている。

地平線すら曖昧な空間。

「……ここは……」

足音は響かない。

「——目覚めたか」

声が四方から響く。

姿は見えない。

だが、**“格”**だけは、

はっきりと分かる。

「……神、か」

「そう呼ばれる存在だ」

否定はしない。

「……用件は」

単刀直入に聞く。

声が少しだけ柔らぐ。

「——頼みがある」

「……断る」

俺は即答した。

「——最後まで、聞け」

一瞬、空気が重くなる。

だが、押さえ込んでくることはない。

「——この国は近く崩れる」

「……知っている」

「——王は腐り、

貴族は民を喰らい、

教会は目を閉じている」

真実だけを並べる。

「——放置すれば、内乱か、

侵略か、神託戦争だ」

「……それで?」

「——お前に王になってほしい」

静かな宣告。

「……笑えない」

「——理由は三つある」

淡々と。

「——一。

お前は力を持つ」

「——二。

お前はこの世界の

“外”を知っている」

「——三。

お前は——

憎悪を知っている」

「……最後が一番胡散臭い」

声が僅かに笑った。

「——憎悪を知る者は、理想に酔わない」

「——民を“駒”としてではなく、

“守る対象”として見る」

「……綺麗事だ」

「——だが事実だ」

一歩近づく気配。

「——お前が王になれば、復讐は“正義”になる」

「——合法になる」

「——誰にも止められない」

胸がわずかに軋む。

「……利用する気だな」

「——当然だ」

隠さない。

「——神は世界の安定を望む」

「——お前は混沌を壊し、秩序を作れる」

「——利害は、

一致している」

沈黙が流れ、白い世界が静かに揺れる。

「……俺は、王になりたいわけじゃない」

「——知っている」

「……玉座も、栄光も、興味がない」

「——それも分かっている」

「……それでも?」

「——それでもだ」

声が確信を帯びる。

「——王とは、

望んだ者がなるものではない」

「——背負える者がなる」

「——お前は、

すでに背負っている」

妹を。

仲間を。

奪われた過去を。

——そして、憎悪を。

「……答えは保留だ」

「——構わない」

「——時間はまだある」

「——だが覚えておけ」

声が遠ざかる。

「——復讐の果てで、

お前は必ず

“選ぶ”ことになる」

「——王になるか、

ただの破壊者で終わるか」

目を覚ますと、天井が広がっている。

王都の宿だとすぐに分かった。

「……夢、か……」

だが。

胸の奥に言葉が残っている。

——王になれ。

「……」

窓の外。

王都は今日も静かだ。

だが、この静けさは嵐の前だ。

復讐者はまだ答えを出さない。

だが——

選択の時は、

確実に近づいている。


夜明け前の王都は、まだ眠りの中にあった。

石畳を撫でる風は冷たく、しかしどこか重たい。まるで、この国そのものが長い腐敗の夢から目覚めようとしているかのようだった。

主人公は、人目につかない高台から王都を見下ろしていた。

かつて守りたいと願った国。

そして今、壊さなければならない国。

「……準備は整った」

その声は低く、だが不思議と荒れてはいない。

怒りも憎しみも、すでに彼の中で形を変えていた。燃え盛る炎ではなく、確実に標的を射抜く刃へと。

彼が手にしているのは剣ではない。

証拠だった。

王が密かに交わしていた不正な取引。

貴族たちへの利益誘導。

国庫の横領、反対派の不審死、そして“存在しないことにされた村々”。

それらは、偶然集まったものではない。

旅の中で出会った人々の証言、命を賭して残された記録、そして彼自身が見てきた現実――すべてが一本の線で繋がっていた。

「これで……逃げ場はない」

朝の鐘が鳴る。

それは合図だった。

王都中央広場。

人々が集まり始める時間を、彼は正確に選んでいた。

最初はざわめきだった。

見慣れない冒険者が立っている、ただそれだけの光景。だが彼が一枚、また一枚と証拠を掲げるにつれ、空気が変わっていく。

囁きが疑念に変わり、

疑念が怒りに変わり、

怒りが――確信へと変わっていく。

「王は、民を守ってなどいなかった」

「この国は、すでに内側から腐っている」

彼の言葉は扇動ではない。

事実の提示だった。

群衆の中には、涙を流す者もいた。

拳を震わせる者もいた。

そして、目を伏せて立ち尽くす者もいた。

主人公はそれを見つめながら、心の奥で静かに思う。

(まだだ……これは始まりにすぎない)

王はまだ王座にいる。

貴族たちも完全には崩れていない。

そして、この国をどうするかという“答え”も、まだ出ていない。

それでも――

この瞬間、確かに歯車は動き出した。

空を見上げると、雲の切れ間から光が差し込んでいた。

それは救いの光ではない。裁きの光だ。

主人公は踵を返し、人混みの中へと姿を消す。

誰も気づかない。

だが確実に、国は彼を中心に揺れ始めていた。

それけら俺は、王宮へと向かった。

その理由は無論、復讐のため。

王宮の正門は、今日も変わらず開かれていた。

白い石で築かれた高い壁、磨き上げられた門扉、整列する衛兵たち。

かつては“近づいてはならない場所”だったそこへ、主人公は一人、足を運ばせる。

風がマントを揺らす。

顔を覆っていたはずのマスクは、もうない。

――隠す理由が、消えたからだ。

「……止まれ。何者だ」

衛兵の声は、職務としての鋭さを保っている。

だがその視線は、どこか迷っていた。王都で起きた騒動を、彼らも知らないはずがない。

主人公は立ち止まり、ゆっくりと顔を上げる。

恐れも、虚勢もない。ただ静かな目。

「俺は――真実を持ってきた」

ざわ、と空気が揺れる。

その言葉が、剣よりも重いことを、衛兵たちは本能的に理解していた。

「王に会いに来た。通してくれ」

命令口調ではない。

懇願でもない。

“宣言”だった。

一瞬の沈黙。

誰かが剣に手をかけかけ、しかし止める。別の者が唾を飲み込む。

やがて、門が――軋む音を立てて開いた。

「……通れ」

その一言に、敵意はなかった。

むしろ、逃げ道を失った者の諦観に近い。

王宮の中は静かだった。

豪奢な装飾、長い廊下、赤い絨毯。

だが主人公の目には、それらはもう色褪せて見える。

(ここが……すべての中心)

一歩、また一歩。

歩くたびに、過去の記憶が脳裏をよぎる。失われた家族、奪われた日常、偽りの正義。

それでも足取りは乱れない。

途中ですれ違う貴族たちは、彼を見て顔を強張らせる。

誰もが気づいているのだ。

“何かが、もう取り返しのつかない段階に入った”ということに。

やがて、玉座の間の扉が見えた。

大きく、重く、そして――逃げ場のない扉。

主人公はその前で立ち止まる。

深呼吸はしない。迷いもない。

「……来たぞ」

小さく、しかし確かな声でそう呟き、

彼は扉に手をかけた。

この先にあるのは、復讐の終わりではない。

王を倒すことでも、国を奪うことでもない。

――この国が、誰のものなのかを突きつける瞬間だ。

重い扉が、ゆっくりと開いていく。

その先で、王はまだ“王”でいられるのか。

それは、これから明らかになる。

いかがだったでしょうか。面白いと思った方は応援をよろしくお願いします。

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