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第19話 王都直前の強敵、会話のない再開

第19話です。昨日は投稿予定を設定するのを忘れていて、投稿し忘れました。申し訳ございません。

旅は順調に進み、

王都まであと二日という距離まで来ていた。

街道は整備され、

人の往来も増えてきていた。

——はずだった。

「……おかしい」

ミアが足を止める。

「……魔物の気配が、濃すぎる」

確かに。

この辺りは本来なら巡回兵がいる。

にもかかわらず——

静かすぎた。

「……来る」

地面が揺れた。

低く、重い振動。

次の瞬間。

——地面が割れた。

土砂と岩を押し退けて、

“それ”が姿を現す。

巨大な四足の魔物。

岩石のような外皮。

背には歪な角。

「……ストーン・ベヒモス……!」

ミアが声を上げる。

「……街道ボス級……

王都近くに出るなんて……」

リーナがエルナを庇う。

「……勝てる……?」

「……逃げ道は?」

俺は即座に周囲を見る。

街道は完全に塞がれている。

「……無理だ」

短く告げる。

「……倒すしかない」

ベヒモスが咆哮する。

衝撃波で小石が宙を舞う。

「……ミア、攪乱」

「……了解!」

「……リーナ、

エルナを守れ」

「……分かった!」

判断は一瞬だった。

——以前よりずっと速い。

ミアが左右に跳ぶ。

獣人の俊敏さ。

「……こっちだ!」

ベヒモスの視線が引き寄せられる。

だが。

「……速っ……!」

巨体に似合わず、

踏み込みが鋭い。

ミアが間一髪で避ける。

「……硬い……

爪が通らない!」

「……分かってる」

俺は前へ出た。

樹王の剣は抜かない。

——試す。

身体だけで。

地面を蹴る。

——爆音。

「……っ!?」

自分でも驚くほどの加速。

一瞬でベヒモスの懐へ潜り込み、

拳を一発叩き込む。

——鈍い音。

だが。

「……まだ、足りないか」

外皮は、

砕けない。

ベヒモスが前脚を振り下ろす。

「……レイ!」

ミアの叫び。

俺は反射的に腕を上げた。

——止まった。

衝撃はある。

骨は折れないが、

筋肉が悲鳴を上げる。

「……っ……」

——防いだ?

「……レイ……

今の……」

ミアが目を見開く。

「……考察は後だ」

ベヒモスが体勢を崩す。

「……エルナ!今だ!」

「……は、はい!」

エルナが必死に詠唱する。

「……《風刃》……!」

小さな風の刃が、

ベヒモスの関節へ。

——効いた。

わずかに動きが鈍る。

「……いい判断だ」

リーナが声をかける。

「……ミア!」

「……分かってる!」

ミアが背後へ回る。

「……首元、狙う!」

「……合わせる」

俺は、跳んだ。

——やはり高すぎる跳躍。

まだ慣れていないのか、

空中で一瞬だけバランスを崩す。

だが。

「……今なら……!」

前と同じように、

踵に意識を集中させ、落下する。

全体重+魔力圧をもって、

ベヒモスの体に叩き込む。。

地面が陥没し、

ベヒモスの体が沈む。

——今。

「……万糸」

黒糸。

一瞬だけ関節を拘束。

「……っ!?」

「……今だ!」

ミアの刃が、

弱点に突き刺さる。

断末魔。

巨体が崩れ落ち、

そして静寂が訪れる。

土埃が晴れる。

「……倒した……?」

エルナが恐る恐る言う。

「……ああ」

息を整える。

心臓はまだ落ち着いている。

——異常だ。

「……レイ……」

ミアが近づいてくる。

「……さっき……

正面から受け止めてた……」

「……ああ」

事実だ。

「……多分……

もう、人間の限界は

超えてる」

リーナが小さく笑う。

「……頼もしいね……

本当に」

エルナが無邪気に言う。

「……王都、

もう怖くないね!」

その言葉に。

俺は遠くを見る。

——王都。

力があるから大丈夫とは限らない。

だが、

力がなければ踏み潰される。

それはもう知っている。

「……行こう」

歩き出す。

「……次は王都だ」

街道の向こうに高い城壁が見え始めていた。


王都の城門は、

想像していたよりも大きかった。

高い城壁。

整列する衛兵。

行き交う人々。

「……ここが、王都……」

エルナが目を輝かせる。

「……人、多いね……」

リーナは少し緊張している。

「……ミア、離れるな」

「……うん」

俺はフードを深く被り、

マスクと眼帯を確かめる。

——この姿でちょうどいい。

今回の門の検査は、

特に問題なく終わった。

ギルドカード。

簡単な質問。

そして——

中へ。

王都の大通り。

露店。

馬車。

冒険者。

貴族。

全てが忙しなく動いている。

その中で——

ふと。

「……?」

胸がざわついた。

理由もなく。

視線を前へ。

人の流れの向こう。

——見覚えのある、

横顔、黒髪、制服。

王国の学院のもの。

「……」

一瞬足が止まる。

——まさか。

人混みの中をその姿が近づいてくる。

護衛らしき兵士。

貴族風の人物。

——召喚された側。

——クラスメイト。

「……」

喉がわずかに鳴る。

名前を呼びかけそうになって——

やめた。

莉奈との距離が近づき、すれ違う。

その瞬間。

莉奈は俺の方を見た。

——ほんの、一瞬。

だが。

「……?」

首を僅かに傾げ、

そのまま通り過ぎた。

目が合ったはずなのに。

気づかない。

いや——

気づけない。

白い髪。

マスク。

眼帯。

背に負う異様な剣。

かつての俺と何一つ一致しない。

「……」

足音が遠ざかる。

人混みが再び流れを作る。

ミアが小さく俺を見る。

「……知り合い?」

「……いや」

即答だった。

——そうだ。

もう違う。

同じ世界に立っていても、

同じ場所にはいない。

「……行こう」

歩き出す。

背中が少しだけ重い。

だが。

引き返す気はなかった。

気づかれなかった。

それは——

拒絶ではない。

“過去に戻れない”という確認だった。

王都の空は高く澄んでいる。

その下で。

復讐者は、

誰にも知られずに——

確かに、

王都へ足を踏み入れた。


幕間 ー見覚えのない背中ー

王都の大通りは今日も騒がしかった。

「……人、多すぎ……」

幼馴染――

彼女は、小さく息を吐く。

召喚からしばらく経ち、

王国の学院に保護され、

“勇者候補”として扱われる日々。

安全。

清潔。

だが——

どこか、現実感がない。

「……あ」

ふと、

人混みの中に妙な気配を感じた。

振り返る。

フード。

マスク。

眼帯。

白い髪。

背には見たことのない剣。

「……?」

一瞬だけ視線が合った——

気がした。

だが。

「……気のせい、かな……」

胸がざわつく。

理由が分からない。

「……どうした?」

隣の護衛が声をかける。

「……ううん。

何でもない」

再び前を見る。

足を進める。

——通り過ぎた。

歩きながら無意識に考えている。

「……変な人、多いな……」

王都には冒険者も多い。

怪我人も、

異様な装備の者も、

珍しくない。

だから。

「……違う……」

その違和感を、

**“珍しい人を見ただけ”**と

片付けた。

でも。

胸の奥に引っかかる。

「……なんで、今……」

“今”。

なぜ、あの瞬間だったのか。

「……」

ふと。

昔の記憶が浮かぶ。

昼休みの教室。

笑い声。

窓際。

——あの時。

魔法陣が現れて。

全員が異世界へ。

「……」

その後、なんとかこの世界で生きてきたけど

——''彼''はいなかった。

一人だけ。

「……まさか……」

その考えが浮かびかけて——

すぐに消す。

「……そんなわけ、ないよね……」

だって。

白い髪じゃなかった。

あんな剣、持ってなかった。

それに——

生きているかどうかすら、

分からない。

「……」

足を止めかけて、やめる。

振り返らない。

振り返って何をする?

名前を呼ぶ?

もし違ったら?

もし——

“本当に、もういなかったら”?

「……」

彼女は前を向いた。

それが正しい選択だと

自分に言い聞かせながら。

その夜。

学院の部屋。

窓の外をぼんやりと眺める。

「……」

理由もなく、胸が苦しい。

「……夢、かな……」

ベッドに横になる。

目を閉じる。

——だが。

白い背中が離れない。

知らない顔。

知らない姿。

それでも。

「……なんで……

懐かしい、って思ったんだろ……」

いくら考えても、

はっきりとした答えは出てこない。

莉奈は考えるのをやめて布団に潜った。

いかがだったでしょうか。面白いと思った方は応援をよろしくお願いします。


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