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第16話 救えた命、そして代償

第16話ですね〜

あともうちょっとで20話行きます。

坑道の奥にようやく静けさが戻った。

魔物の亡骸は、

すでに動かない。

ミアは、しばらく動けなかった。

あまりにも多くのものを、一度に見すぎた。

「……大丈夫?」

ようやく絞り出した言葉。

俺は頷き、俺は倒れていた女の傍らに膝をつく。

呼吸は——

ある。

弱いが、確かに。

「……生きてる」

ミアが、

安堵したように呟いた。

その時。

女の指先がわずかに動いた。

「……っ」

まぶたがゆっくりと開く。

「……ここ……は……」

掠れた声。

「坑道だ。

無理に動くな」

女は一瞬だけ怯えた目で俺を見て——

すぐに、力が抜けた。

「……助けて……

くれた……?」

「ああ」

短く答える。

女は小さく笑った。

「……よかった……

妹の……ところへ……

行かなくて……」

その言葉に、

胸が静かに鳴った。

「……妹?」

女はゆっくりと頷く。

「……王都で……

一緒に、

冒険者を……」

息が少し苦しそうだ。

ミアが慌てて水を差し出す。

「……ありがとう……」

一口だけ飲んで女は続けた。

「……私だけ……

逃げられなくて……」

「……そうか」

それ以上、

深く聞かない。

今は、生きていることが何よりだ。

女は静かに目を閉じ、眠りに落ちた。


坑道を出て、

安全な場所まで移動した後。

異変は、

唐突に来た。

「……?」

右腕が重い。

指が、思うように動かない。

握ろうとしても——

力が入らない。

「……レイ?」

ミアがすぐに気づく。

「……腕……?」

「……来たか」

小さく、

息を吐く。

《DICEROLL:代償発動》

無機質な声。

《出目〈治癒〉の代償として、

右腕の運動機能を一時的に制限》

《回復予測:72時間》

「三日、か……」

以前の代償に比べれば、

軽い。

それでも。

「……大丈夫?」

ミアの声が、

心配に揺れる。

「……問題ない」

まるで些細なことのように言う。

だが、その代償の重さを、ミアは理解していた。

左腕は、

動く。

万糸も、

制御できる。

「……それに」

少しだけ、

言葉を選んで続けた。

「……この代償は、

悪くない」

ミアが、

きょとんとする。

「……どういうこと?」

「……誰かを救った結果だ」

それだけで、

十分だった。

ミアは、

しばらく黙って——

強く頷いた。

「……うん」

主人公は目を逸らした。


夜。

焚き火の前。

助けた女は、まだ眠っている。

炎の音だけが静かに響く。

ミアはその向かいで膝を抱え、俺を見ていた。

「……レイ」

「どうした」

「……今日のこと」

少し言い淀う。

「……前のレイなら……

どうしてた?」

答えは、分かっている。

「……距離を取って、撤退してた」

「……だよね」

ミアは視線を落とす。

「……でも、

今日は……」

「……手を出した」

「……うん」

少し間が空く。

「……怖かった?」

「……怖かった」

正直に答えた。

「……でも」

焚き火を見る。

「……それ以上に、

失いたくなかった」

ミアの耳がぴくりと動いた。

「……誰かを?」

「……ああ」

詳しくは言わない。

それでも、

ミアは分かったようだった。

「……レイ、変わったね」

「……悪い方向か?」

「ううん」

即答。

「……前は強かった」

「……今は?」

「……優しい」

その言葉に、胸が少しだけ痛む。

だが。

「……それでも、強い」

ミアは、

そう続けた。

「……だから、私も……」

「……?」

「……守られるだけじゃ、嫌」

まっすぐな目。

「……一緒に、前に行きたい」

焚き火がぱちりと鳴った。

「……ああ」

口調はもうかなり柔らかい。

「……それでいい」

ミアは安心したように笑った。

憎悪はまだある。

復讐も消えていない。

だが。

救った命が、

確かにここにある。

それだけで。

旅はもう少しだけ——

人の形をして続いていく。


朝。

坑道を離れて三日目。

焚き火の跡がまだ温もりを残す中、

女はゆっくりと上体を起こした。

「……あ……」

目が合う。

もう、怯えはない。

「……生きてる……?」

「……ああ」

ミアがほっと息を吐いた。

「よかった……本当に……」

女は、自分の体を見下ろし、

包帯に覆われた傷を確かめる。

「……全部……

治ってる……?」

「完全じゃないが、

動ける」

女はしばらく黙ってから——

深く頭を下げた。

「……ありがとう……

命を、

助けてくれて……」

主人公は目を逸らした。

感謝を受け取る資格があるのか、まだ分からなかったからだ。

だが、胸の奥にあった冷たい空洞は、確かに小さくなっていた。

――守りたいと思った。

――それを、選んだ。

その事実だけが、静かに残る。

「礼はいらない」

淡々と答える。

だが、女は顔を上げない。

「……でも……

これから……

どうすれば……」

その声がかすかに震えた。

ミアが、隣に座る。

「……一緒に、

旅を続ける……?」

女は、一瞬だけ希望の色を見せて——

すぐに消した。

「……分からない……」

「……?」

「……私……

強くない……」

拳をぎゅっと握る。

「……また、

足を引っ張る……」

沈黙。

俺は、何も言わなかった。

誘うことも、

突き放すことも。

女はそれを察したのか、小さく笑った。

「……少し……

考えさせて……」

「ああ」

それでいい。

その日の昼。

移動の途中、

女がぽつりと口を開いた。

「……妹の話……

少しだけ……

してもいい……?」

ミアが頷く。

俺は歩調を緩めた。

「……妹……

エルナは……

優しかった……」

名前を口にした瞬間、

声が揺れる。

「……でも……

半年前……」

「……誘拐された」

足が止まった。

「……王都で……

身代金を要求されて……」

「……金が必要だった」

「……うん……」

女は、

俯いたまま続ける。

「……だから……

冒険者に……」

ミアが息を呑む。

「……でも……

簡単な依頼じゃ……

間に合わなくて……」

「……高難易度を、

受けた」

「……そう……」

震える声。

「……止められた……

ギルドにも……

仲間にも……」

「……それでも……

行った……」

「……エルナを……

助けたかったから……」

拳が白くなる。

「……結果……

これ……」

自分の体を示す。

「……魔物に……

追い詰められて……」

「……それで……

あの坑道……」

沈黙が重く落ちた。

ミアは唇を噛む。

「……そんな……」

俺は視線を前に向けたまま、

静かに言った。

「……妹は……

まだ生きているか?」

女は一瞬驚いて——

強く頷いた。

「……はい……

期限は……

あと……二週間……」

二週間。

短い。

そして——

長い。

「……だから……」

女は立ち止まる。

「……私は……

ここで……

別れた方が……」

「……これ以上……

迷惑は……」

言葉は最後まで出なかった。

ミアが彼女の袖を掴む。

「……迷惑なんかじゃ……」

「……!」

「……でも……

すぐには……

答え、出せない……」

正直な言葉。

女はその言葉に、

なぜか少し救われたように見えた。

俺は、ゆっくりと振り返る。

「……妹を、

取り戻すために……

命を張った」

「……それは……

間違いじゃない」

女の目が、大きく開く。

「……ただ」

一拍。

「……次にどうするかは……

今は、決めなくていい」

「……え……?」

「……考える時間は……ある」

自分に言い聞かせるように。

「……そして」

右腕の感覚は、

まだ鈍い。

だが。

「……助けを求めることは……

弱さじゃない」

女の目から一粒、雫が落ちた。

「……ありがとう……」

答えは、まだ出ていない。

仲間になるか。

去るのか。

だが——

物語は、

もう彼女一人のものではなくなっていた。

いかがだったでしょうか。面白いと思った方はこれからも応援をよろしくお願いします。

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