第14話 二つ目の街にて
第14話です。まだ書けます(多分)
街道を進んで、
三日目。
舗装された道が、
再び石に変わる。
街道は静かだった。
断魂の森を抜けてからの道とは違い、人の手が入った舗装路が続いている。
門が見えた瞬間、ミアは少し緊張した様子を見せた。
「……見えてきた」
ミアが、
前方を指さした。
城壁。
前の街より、少し大きい。
——次の街だ。
「……人、多いね」
「交易路の要所だろう」
行商の列。
冒険者。
農民。
人の気配が、
途切れない。
それが、
少しだけ懐かしい。
門前。
二人の門番が、
俺たちを見て視線を鋭くする。
怜は無言で歩みを止め、門番の前に立つ。
「止まれ。身分証を提示しろ」
鋭い視線。
武装した兵士たちが、白髪の男と獣人の少女を値踏みするように見ている。
俺は、外套の内側から
ギルドカードを取り出す。
軽く、差し出す。
門番はカードを受け取り、光にかざす。
魔法反応。
登録番号。
所属ギルド。
「……本物だな」
もう一人の門番が、
ミアを見る。
「そっちは?」
「同伴者だ」
「……獣人か」
一瞬、
視線が厳しくなる。
だが。
「問題ない。
冒険者の同伴なら許可範囲だ」
カードが返ってくる。
「用件は?」
「通行と、
滞在」
門番は俺の顔を見て少し怪訝な顔をするも
「……通行を許可する」
それだけ告げると、門は開かれた。
ミアはほっと息をつく。
「すごい……何も言われなかった」
「ギルドカードは、信用の証だ」
「ギルドカードは、
こういう時に役に立つ」
「……冒険者って、
すごいね」
「肩書きが、
強いだけだ」
本質は、
何も変わらない。
それ以上の説明はしない。
だが、ミアはそれで十分だった。
街に入ると、人の気配が一気に増える。
市場の声、鉄の音、魔道具の駆動音。
怜は自然と周囲を警戒していた。
ここは安全だが、同時に目立つ場所でもある。
「止められると思った?」
「……うん。
ちょっと」
「大丈夫だ」
自然と、
そう言っていた。
この街は前の街より、
少しだけ治安が良さそうだ。
「……今日は、
宿探す?」
「ああ。
あと、ギルドもだな」
「……また、
依頼?」
「無理はしない」
ミアは、
安心したように頷く。
「……レイ、
喋り方、
ほんとに変わった」
「……そうか?」
「うん。
前より、
近い」
その言葉に、
少しだけ困る。
だが。
「……悪くない」
そう返すと、
ミアは笑った。
ギルドの建物が、
見える。
新しい街。
新しい空気。
追われてはいない。
まだ。
「……行こう」
「……うん」
二人で、
歩き出す。
門は、
閉じなかった。
この世界は、
まだ——
進むことを許している。
ギルドは活気に満ち溢れ、
昼間にもかかわらず賑わっていた。
受付前には列。
掲示板には依頼書が所狭しと貼られている。
その前では、
冒険者たちが声を荒げている。
「……あれ、
なんで誰も取らないの?」
ミアが、
板の一角を見て首を傾げた。
そこだけ、
妙に空白があった。
依頼書は貼られている。
だが、
誰も手を伸ばさない。
「……危険度、
高いね」
文字を読む。
《街道南部・旧採掘坑道
出現魔物:不明
調査および討伐
危険度:B
報酬:金貨2枚+素材》
報酬は高い。
だが、難易度表記は明らかに一段階上だった。
「……B?」
「新人向けじゃないな」
普通なら、
避ける。
だが。
俺は、
少しだけ考えた。
「……どう思う?」
「え?」
ミアが、
俺を見る。
「この依頼」
「……怖そう」
正直な答え。
「でも?」
「……ちゃんと準備すれば、
逃げられそう」
——いい。
判断材料を、
集めている。
「坑道だ。
閉所だから敵は多くないはず」
「……数より、
強さ?」
「ああ」
「……これ、危なくない?」
「危ないな」
即答だった。
だが主人公は、その紙を剥がす。
「でも、練習にはちょうどいい」
ミアは一瞬言葉を失う。
ミアが、
一瞬だけ目を見開く。
「……私?」
「ああ。
俺は、
後ろにいる」
「……本当に?」
「危なくなったら、
止める」
それは、
約束だった。
怜の表情が冗談ではないと理解すると、拳を握った。
ミアは覚悟を決めたように
「……私、やる」
と短く、
だがはっきり言った。
受付。
ギルド職員が、
依頼書を見て眉をひそめる。
「……こちら、
危険度Bですが」
「承知している」
「……パーティ構成は?」
「二人だ」
視線が、
ミアに向く。
獣人。
若い。
「……補助役は?」
「彼女が、
前に出る」
一瞬、
沈黙。
「……本気ですか?」
「ああ」
カードを、
机に置く。
職員は、
ため息をついた。
「……止めはしませんが、
撤退判断だけは、
間違えないでください」
「分かっている」
依頼は、
受理された。
坑道入口。
坑道は街の外れにあった。
内部は暗く、湿った空気が肌にまとわりつく。
ミアは緊張しながらも、剣を構える。
主人公は一歩後ろに立ち、万糸を抑えたまま状況を見る。
――まずは、彼女自身で乗り越えさせる。
崩れかけた木枠。
冷たい空気。
「……暗い」
「光源、
忘れるな」
ミアは、
頷いて魔道具を灯す。
「……ねえ、レイ」
「ん?」
「……もし、
私が失敗したら……」
「その時は、学ぶ」
即答だった。
「死ななければ、失敗じゃない」
ミアは、少し安心したように息を吐く。
中は静かすぎた。
《獣感知》が、
微かに反応する。
「……前方、二。
奥に……一」
「距離は」
「……近い」
「いい。
一体ずつ、引き出せ」
ミアは、石を投げる。
反応。
影が、動いた。
——ゴブリン。
だが、普通じゃない。
装備が、整っている。
「……強そう」
「焦るな」
ミアは、
呼吸を整え——
踏み込んだ。
最初の一撃は、浅い。
だが、引かない。
回避。
位置取り。
「……今!」
二太刀目で倒す。
息が荒い。
「……大丈夫?」
「……うん」
その顔は、
怖がっている。
だが、逃げていない。
奥から別の反応。
「……来る。
大きい」
「下がれ」
だが、ミアは止まらなかった。
「……やってみる」
その背中を、
俺は黙って見守る。
——まだ手は出さない。
難易度は高い。
だが。
彼女には越えられる線だ。
そう確信していた。
いかがだったでしょうか。面白いと思った方はこれからも応援をよろしくお願いします。




