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第13話 離れる時

第13話です。そろそろストックが半分くらいになってきたので、また増やし始めようと思います。


調査団が来てから、

街の空気は明らかに変わった。

朝の挨拶は短くなり、

露店の声は小さくなる。

視線は、

増えた。

意図せずとも、

人は“異物”を探してしまう。

宿の部屋。

ミアは、

ベッドの縁に腰掛け、

尻尾を抱くようにしていた。

「……ねえ、レイ」

「どうした」

声に、

自分でも気づくほど角がない。

以前なら、

もっと短く、低かった。

「……ここ、

長くいない方がいい?」

「ああ」

――ここに居続けるのは、得策じゃない。

即答。

だが、

続けて言葉が出た。

「……怖がらせて、

悪いな」

ミアが、

目を丸くする。

「……え?」

「……いや」

少し、

言い慣れない。

「巻き込んでる。

だから、早めに出る」

ミアは、

しばらく俺を見て——

小さく笑った。

「……レイ、

優しいね」

「……そうか?」

「うん。

前より、

ずっと」

その言葉が、

胸の奥に静かに落ちた。

出立は、

目立たない形で行う。

正面の門は、

使わない。

調査団が、

確実に目を置いている。

俺は、

街の地図を机に広げる。

「……ここ」

「裏通り?」

「ああ。

荷運び用の小門だ」

夜、人目を避けて街を抜ける準備を進める。

ミアには事前に告げていた。

「……行くの?」

「ああ。王都へ向かう」

ミアは少し驚いた顔をしたが、すぐに覚悟を決めたように頷く。

「……一緒に、行く」

迷いはなかった。

街を出る直前、主人公は一度だけ振り返る。

ここで得たものは、金と経験だけじゃない。

――誰かと並んで歩く感覚。

それを失うのが、少しだけ怖くなっている自分に気づき、主人公は視線を前に戻した。

夜明け前、

人が少ない。

「……走る?」

「急がなくていい。

静かに、抜ける」

「……分かった」

ミアの声も、

落ち着いていた。

——成長している。

夜。

街の灯りが、

一つ、また一つと消えていく。

俺たちは、

宿を出た。

「……レイ」

「ん?」

「……一緒に旅してて、

楽しい」

足を止めずに、

言う。

「……そう言われると、

助かる」

それは、

本音だった。

孤独に慣れすぎていた。

誰かと歩調を合わせることを、

忘れていた。

「……レイ、

前はあんまり喋らなかったね」

「……今も、

得意じゃない」

「……でも、

今は安心する」

その言葉で、

分かった。

口調が柔らかくなったのは、

意識じゃない。

——警戒を、

解いている。

小門は、

街の外れにあった。

番人はいない。

ただの、古い扉。

鍵は、

万糸で静かに外す。

音は、

ほとんどしない。

「……外」

「……うん」

扉を閉める。

街の喧騒は、

もう背後だ。

草原の風が、

二人を撫でる。

星が、

はっきり見える。

「……王都まで、

一ヶ月だったな」

「……長い?」

「……でも、

一緒なら」

ミアは、

小さく頷いた。

「……うん」

歩き出す。

背後に、

街。

前に、

道。

調査団は、

気づかない。

まだ。

だが、

それでいい。

今は、

逃げるためじゃない。

選んで進むために、

街を出た。

俺は、

少しだけ穏やかな声で言う。

「……行こう、ミア」

「……うん、レイ」

夜明け前の道を、

二人は並んで進んでいった。


目が覚めた時、

そこはもう——教室じゃなかった。

白い石床。

高い天井。

見知らぬ空気。

「……また、

夢じゃないよね」

そう呟いて、

彼女は拳を握る。

——あの日。

昼休み。

笑っていた。

いつも通りだった。

なのに。

「……なんで、

怜だけ……」

口に出しかけて、

やめた。

クラス全員が召喚された。

全員が、力を与えられた。

——彼を除いて。

魔力測定の水晶が、

彼の手の中で沈黙した瞬間。

場の空気が、

変わった。

「……気のせい、

だよね」

そう思いたかった。

でも。

彼が、

だんだん後ろに下がっていくのを、

彼女は見ていた。

誰も、

声をかけなかった。

自分だけが、

いつも通り話しかけた。

「……大丈夫?」

「……ああ」

その声は、

今でも耳に残っている。

「……生きてるよね」

彼女は、

祈るように呟いた。

王国は、

“失敗作”をどう扱うのか。

それを、

知ってしまったから。

莉奈は、王国に残っていた。

彼女は騎士団の一員として、日々の任務をこなしている。

森で何が起きたのか。

彼が本当に死んだのか。

誰も確証を持っていない。

それでも、時間だけが残酷に答えを塗り替えていく。

王都の訓練場。

剣を振る。

魔法を放つ。

——皆、

強くなっていく。

「……私、

強くなってる」

でも。

嬉しくない。

「……ねえ」

隣の子が、

言う。

「魔力ゼロだった子、

どうなったんだろ」

空気が、

凍る。

「……聞かない方が、

いいよ」

「だよね」

彼女は、

剣を握りしめた。

胸が、

苦しい。

「……生きてたら、いいのにね」

ふと漏れた言葉は、誰にも届かない。

「……怜」

誰にも聞こえないように、

名前を呼ぶ。

「……待ってるから」

理由は、

分からない。

でも。

彼は、

簡単に死ぬ人じゃない。

——そう、

信じている。


「断魂の森周辺の異変、

再報告を」

静かな会議室。

円卓。

王国紋章。

「瘴気濃度、

過去最低水準」

「魔物の生態系に、

明確な崩れがあります」

「原因は?」

沈黙。

やがて、

一人が口を開く。

「……不明」

王が、

指を組む。

「“白髪の存在”については?」

「街での目撃情報は、

確認されましたが——」

「正体不明。

名前、種族、目的、

全て不明です」

「ただし」

調査官が、

資料を差し出す。

「糸状の武装。

極めて高い殺傷能力」

「森の王の反応が、

完全に消失」

——だが。

「召喚勇者との関連は?」

「……現時点では、

ありません」

即答。

「召喚者全員は、

王都で管理下にあります」

「欠損者——

魔力ゼロの個体は?」

「……すでに、

処理済みと」

王は、

それ以上聞かなかった。

興味が、ない。

断魂の森で消息を絶ったはずの“彼”の名は、未だに王宮の一部で囁かれている。

だが、それは疑念ではなく、もはや過去の出来事として扱われていた。

「……見落としは?」

「ありません」

「白髪の存在と、

召喚者の関連性は?」

「……薄いと」

王は、

小さく息を吐く。

「なら、

問題ない」

王宮では、王が密かに命じる。

反乱の芽を摘め。

不穏な存在を許すな。

世界は、

王国の掌の上だと。

彼らは、

疑っていない。

まだ。

その頃。

断魂の森を抜けた

一人の存在が——

静かに、

世界を横切っていることを。

誰も、

知らなかった。

いかがだったでしょうか。面白いと思った方はこれからも応援をよろしくお願いします。

次回も乞うご期待!!

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