お姫様、來る。
「ちょっと、そこをおどきなさい!どこに居ますの!?『黒の術師』!姿を現しなさい!」
カン高い声が屋敷に響き渡る。
「あのー」
「もう、あなたが居ながら、どうしてこんなことになるのです!?大体、どうしてこんな僻地に…だから中央に来なさいとわたくしは言いましたのよ!?なのにこのような…」よよよよ、と泣き崩れる令嬢を、覗き穴からみている私。
こんにちは。まだ、朝日が昇って、さほど経っていません。そう。こんな早朝から起こされた使用人さんたちは、悪く無い。
あのカン高い声で起こされた私も、たぶん、悪く無い。
杉崎璃桜、『黒の術』で隠れています。
「ウリセス、なんか、キラキラの人がいるよ!」『黒の術』で作った空間に、ウリセスといっしょにいるのだけど、まぁ、これも、予定通りかな。
玄関先には綺麗で綺麗で綺麗で綺麗で、もう一つおまけに綺麗な、お嬢様がいらっしゃいました。お嬢様というより、お顔に品があるので、お姫様でしょうか。
透き通るような白い肌に、長い耳。プラチナブロンドの髪は、もはや白銀と言って差し支え無いくらいの薄い色彩。けれどもそれを補うくらいに生命力の溢れた、金色の瞳。妖精があらわれたと言われたら十中八九、こういうものをいうんだろうなという、典型的なキラキラが、なぜか、玄関先で。
「もう!いい加減にしてくださいよ、母さん!」そう言ったのは、同じ黒髪、黒い目。けれど、どことなく白人ぽいその肌の感じなんかは確実に遺伝なんだなぁとーーーー
「母さん!?」
思わず、術を出てしまった。
デウス・マミヤ・シン。その人が少女のようなお姫様を助け起こし、
「おはようございます。六代目。申し訳ない、こんな朝から母がご迷惑ー」
「あなたが!ーーーー返しなさい!あの人を返して!返さないなら力づくでー」はれた目元すら色気がある美少女が私を睨む。
「やめろって」ごいん、とデウスが母を殴る。(いいのか。)
「いったーーーい。お母さん、親を殴る子に育てた覚えはありませんっえっぐ…ひっく…うわあぁあああああああああん!」
大音量。
「『消音』『伽藍』」とりあえず、収納してもいいですか、ご近所迷惑なので。
手っ取り早く三代目に繋がる光の精霊さんの上役っぽいところを誘き出すために、三代目を閉じ込めたーそれが、昨日の零時前。
そして、次の日の早朝、まぶしい光とともに、玄関の扉がものすごい音で飛んでいった。
「とりあえず、器物破損はそちらにつけてくださいね。」エルさんは、明らかに早朝から叩き起こされ不機嫌そうだった。そうだろうね。私でもそう思うから。
「ええ!?」思わずお茶を溢しそうになる。
ところ変わり、エルさんの執務室。あのレースヒラヒラなお部屋は辞退させてもらった。
「リオウ、私が負担する。」ウリセスが言う。
「いや、これは不可抗力だから、払うのうちちじゃないでしょ!」
「原因が六代目にあるとしても?」
「なら、アドイ・ナユにつけといてよ。」あのチェシャ猫のような皇子なら、どうにかうまくかわすだろう。
「まぁ、いいでしょう。うちは、支払っていただければ良いので。正式な書面はそちらに送ります。それよりー囚われの身の方々を解放してくださいませんか?」
「それは、無理。でも、長時間拘束はできないので、ちゃんと解放はします。がーデウスさん。」
「はい。お久しぶりです。六代目『黒の術師』。この度は両親がご迷惑をおかけしまして申し訳ございません。」デウスは深々頭を下げる。
「まぁ、あなたのせいではないですし。それで、とりあえず私は契約してくれる精霊を探しているのですけど、書類は受理していただけましたか?」エルさんに確認する。少なくとも、光の精霊を使えば、インターネットと同じく、光の早さで私の書状はこのコミュニティのトップへ着いたはずだ。
「それがー保留とされまして。非常に残念ながら、すぐには動かせない案件と…」
「急いでます。保留ならば、いつまで?誰が対応窓口?そして、それが『六代目黒の術師』に対する返答と考えても宜しいですか?私は、初代ほどではありませんが、気が長くないので。ここから、直接都へ乗り込んでも良いのですが?」つい、怒りのまま口を開くと、ウリセスが嗜める。うん。わかってる。声に怒りが入ってしまったものね。
「とは言われましても、私どもで可能なことはすでにー」エルさんはまだのらくらと言い逃れる。
「では、三代目のクローンを餌に、デウスさんのお母様に契約して頂きましょうか?どうしても嫌なら、誠に遺憾ながら、『黒の術』で強制的に従えても良いのですけど?」
「なるほど。それが目的ですか。まぁ、そうなると派閥が変わりますから…あそこがああなって、こうなって、あっちが出て来てーーーーそうですね、いいですよ。どうせですから、デウスもつけましょうか?」
「あら、いいんですか?」
「ちょ、ちょっと、待ってください!」デウスが慌てる。
「ええ。まぁ、その方が都合が良いと言いますか。まぁ、面倒なので、全部持っていってください。」
「め、面倒!?そんな!」
「わかりました。とりあえず、デウスさん。支度してください。明日にはここを出ます。」
「私の意思は!」
「謝罪の言葉だけで済むと思いましたか?ならば、私と、私を推したアドイ・ナユも随分、下に見られたものですね。」冷ややかに見て、
「『黒の楔』」しゃらしゃらと、デウスの首にチェーンが巻き付く。ただし、これは人には見えない。
「!」
「『黒の術』をお使いに?」エルさんには見えないので頷く。
「明日、こちらを出立するまでに逃げられても困りますから。それほど強くない術なので、心配ありませんよ。さぁ、デウスさん、話は終いです。準備をしてきてください。」そう言って、部屋から追い出した。
「こんなもんで、どうかしら。」とりあえず、まだ何か攻撃されても嫌なので、『黒の術』で鳥かごを出現させて、その中の人たちと話す。
「上出来です。六代目。」にっこり笑ったのは三代目。そして、その横のお姫様はー
「一体どういうことなの!?エル、貴方も知っているのね?説明なさい!」プンプン怒っていたが、先程までの激昂していた様子はなく、落ち着いたようだ。
「では、私からお話ししましょう。」そういって、エルは微笑した。
背景が少くて申し訳ない。




