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わすれかたみ。

「ウリセス、あと何階!?」


「あと、23階だ。」


「全部まとめて落としちゃえばいいのに!」


「リオウ。」


「だって、地上100階って何!これ、光の塔じゃないの!?」


こんにちは。異世界トリップ109日目のたぶん、夕方。


外が見えないから時間感覚も『黒の術』で補わないといけないという面倒くささ。


ナリーの作ったダンジョンに来てみました。


どうも、中央の光の塔そっくりそのままコピーして、中身だけ変えたらしいです。

地下50階には、罪人の監獄が。そして、地上100階は、文字通り、ゲーマーたちが昔こよなく愛しただろう、王道のRPG。擬似モンスターもご丁寧に設置されております。


はじめはスライムとか簡単なモンスターかと思うじゃない?


違いましたよ。


正直、見学かねて地下50階を見た時には、全部陥没させちゃえば最下層に行けることはわかっていた。でも、地上100階。はじめの1階が。


なんで、日本の歴史なんでしょうか。そして、当然のことながら、三代目の知っている昭和初期までしか無いらしいんですが。

ここまで来て、原始人はまだ良かった。食料と交換でどうにかなったのだ。各階の次の階への階段の前にご丁寧にボス戦がある。恐竜とか。ほんと、勘弁して欲しかった。


ティラノザウルスになんで追いかけ回される日が来るのか。問答無用で『黒の術』使いました。遠慮はしません。(だって死ぬ。あんなもの。)


怪しくなってきたのは、古墳時代くらいからだ。古代王朝かっこいいなんて思ってる暇もないくらい襲ってくる、


怨霊とか。怨霊とか。怨霊とか。


まぁでも、まだ、マシだなと思ったわ。飛鳥時代は生首飛んでくるし、平安時代は陰陽師に追いかけられるし、式神は飛んでくるし、某有名どこ陰陽師さんとか勘弁してほしいですから。どうにかこうにか、嘘も方便でウリセスを式神と評し、相手が同業と勘違いした隙に階段駆け抜けた。

いいんです。突破であって、敵殲滅ではないから。ダンジョンは。帰りなんか、天井から穴開けてでも帰れますから。帰還で帰れると思いますし。


鎌倉時代に武士が襲ってきて、そこから最悪ですよ、戦国時代突入。落ち武者ゾンビとかもう、本当要らないから。

江戸時代になったら少しは楽になるかと思ったら、忍びと火付盗賊改に追いかけられる。超有名なあの小説のあのお方ですか。やめて、もう、私のライフはゼロよ。(精神的な)


という、ものすごい怒涛の中、明治時代に突入。

はじめの頃はわけのわからないウィルスが襲ってきた。(これがコレラ。)そして、後半につれて来たよ。

B29と戦艦大和。他。逆に、これだけ大きな的の方が『黒の術』は使いやすい。


それにしても、三代目、とっても悪趣味じゃないですかねこれ。


私が忘れかけていた、故郷を否応なく思い出させてくれる。


しかもだ。ダンジョンだからと気兼ねなく『黒の術』を使う(そのための塔の防御は完璧である)ことができている自分にもとても吐き気がする。


所詮、作り物だから壊してもいいだろうという思いが私にあるからだ。なんて、情けない。


まるでゲームのように、実際ゲームみたいだったけれども。


回復するアイテムは途中にあるし、セーブポイントなるものも(きっとこれは初代の入れ知恵だ。)あった。疑心暗鬼で使っていたが、間違っていなかったらしい。

ちなみに、セーブしないと、何かの拍子に転移トラップで1階へ逆戻りすることもあるそうな。(怖い)


そうして、なんとかたどり着いた、98階。


「ウリセス。今、何時くらいかな。」階段を上っていると感覚が麻痺してくる。私の黒の時計では21時を回ったはずだが、お腹も空かないのでとにかく変なのだ。

「リオウの感覚で間違ってはいない。ナリーとやらがいうには、このダンジョンにはダンジョンとしての機能として、入る人間の身体的欲求はほとんど停止していると言っていたな。だから、時間感覚が無くなってく。」それは恐ろしいことだ。

いつまでも、いつまでも、この中に囚われていることもできるということだ。


罪人の処刑にも使われると聞いたが、ふざけた内容にもかかわらず、こうして残っているのはその残酷さからだろうか。

ちなみに、クリアした人間は居ないそうだ。異世界の不思議がわからないと、確かにウィルスなどは対応しようが無いなと思った。



99階。ここをクリアすれば、お宝へたどり着く、はず。


「!」思わず、泣きそうになってしまった。


夕日が沈み、月が出ている。満月に、満開の桜。


「ここは…」


「リオウ…宿場か?」ウリセスの声。


シャン、シャン、どこかしら軽やかな音が聞こえる。


朱色の門が開く。紫色の蛇の目傘。豪華絢爛の内掛け。ゆっくりと歩むその足に、目元の朱色。


「吉原?」遊郭というのだろうか。太夫を中心に花魁道中がこちらへ向かってくる。


おかしいな。昭和に入ったなら、規制やら法改定で遊郭は無くなっているはず。そもそも、髪型や着物が、昭和ではない。江戸だ。


「何で、おいら…」

「リオウ!」ウリセスが先に攻撃した。

が、透過した。


「幽霊!?」じゃ、怨霊に対して使った技はどうだ。

「『留置き』!」霊的なものをその場に留める技。宅急便じゃないよ。

「リオウ!」ウリセスが私を抱える。

太夫が止まらない。

どころか、禿やら何やらしめて六人。こちらに向かって来る。

「何あれ!?」

「精霊術も効かん。」

「幽霊じゃないってことは、何か作られたもの!?『結壁』…だめだ!通り抜ける!」結界すらものともしないということは、生きている存在ではないということ。式でもない。

「『伽藍3(スリー)』」


とりあえず、確保。


この、『伽藍3』は、人、人以外、霊的物以外の全てのものを対象としているので、どうにかなったのだけれど。

「『分析』『分解』『結合』『返納』」とりあえず、存在の定義がわからないのでわからない前提で出来うるものをかけてみる。すると、『分析』で何かの集合体なことがわかり、『分解』で思念の集団が溢れてきて、『結合』で一つの正三角形になったので、『返納』で持ち主ー三代目のところへ送りつけた。


はっきり言って、よくわからなかったけれど、多分あれは、持ち主の経験した『怨嗟』や『業』からくる人の想いが固まってできたものだと思う。と、私の中の『黒の術』辞典がいう。


「女子に刺されてっていうしな…」想像しただけで疲れるが、先を急がないといけない。

「リオウ、未だだ。あれは、リオウの世界の植物か?」ウリセスに言われて見る先には、


見事な、垂れ桜。


桜って、ほんと、いやな予感しかしない。

自分の名前にあるから、もちろん好きなのだけど。


「そうだねぇ。でも、なんで、枝がざわざわしてて、根っこが動いているのかなぁ…」

「どうやら、あれを越えれば上への階段らしい。」ウリセスも構える。

そうしている間にも、宿場から新たな『花魁道中』らしきものが出ようとしている。先ほどと同じ『太夫』に見えるということは、一度『返納』してもまた沸いて出てくるというわけか。エンドレス。


「ちょっと、大技しないとダメかな。」

「そのようだ。」


私たちはお互いを見つめあった。












ちょっと途中ですが長くなったので切ります。

『太夫』は西の表現で、東は『花魁』とされますが、ここでは、『花魁道中』という文字と別の文字を使いたかったので、『太夫』としました。

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