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美しい人。

お待たせしました。

間宮家というのは、士族ではないが、士族に嫁入りするほどには地域の豪農的存在であった。


まぁ、それは過去の栄光というやつで。


農地を返されてから激動の昭和を生き残ってはきたが、すでにそれも風前の灯火のように見えるのは私だけだろうか?


間宮芳成はぼんやりと宵闇の街を歩く。街とはいっても、寂れた宿場だ。

父上の忘れ物を届けるという口実で、肩身の狭い家を出てきたはいいが、肝心の父上が居ない。


となると。


「此方か。」ひょいと、一つ裏の道へ入り、路地を曲がっていく。石畳がごつごつと下駄にあたり、歩きにくいが仕方がない。

そうして、出た通りは、文字通りの『花街』。

「さて…どうしたものか。」父上が行きそうな店をいくつか頭に思い描き、最近ご執心なサキという女がいる店の前まで来た。

「あら、芳さん、また?」ちょうど、入り口から出てきた女中が顔見知りで良かった。わけを言って上がらせてもらえば、



修羅場だった。


芳成の父は、見目麗しい男だった。親の財産食いつぶして花街に来るようなバカ息子ではあったが。血筋は争えなく、芳成は、父の父、祖父の子であり、庶子として存在した。だからか、他の息子と同じようには扱わず、父は友のように扱っていた。


つまり。


「!…良いとこに来たッ」着物を袖をひっぱられ、舞い込んだその先の、


まさか、刃物が自分に刺さるなんて。


「…!」自分の名前を聞く声が遠く聞こえ、思わず掴んだ欄干の先に見える川。


かの著名な作家の言葉が浮かぶ。


どうせ生きているからには、苦しいのは当たり前だと思え。






そして、落ちた先に、自らの死地となる場所があるとは。



「誰も思わないわよねぇ〜」


その人は、美しかった。細面の女顔、色白に昔の俳優さんみたいにシンメトリーに目も眉も配置されていて。ただ。

喉仏を隠しても、肩幅を隠すことはできないし、ハスキーな声は明らかに男性とわかるそれ。



三代目、間宮芳成。その人が目の前にいた。


「やあね、ヨシナリなんて名前は捨てたのヨ。言葉は初代の影響が出ているから、仕方がないわ。でもその方が6代目にとっては都合が良いのでしょう?で、初代はここには来ないノカシラ?」


綺麗な萌黄色のチュールドレスを着こなしている目の前の人は、一体何なんでしょうか。同じ黒髪とは思えない艶やかな長い髪を、綺麗に結い上げて、ドレスと同系色のアクセサリー、頭には花飾り。もんのすごく薄幸な美人さんが、います。左目の下に泣き黒子が色気をプラス。


杉崎璃桜、異世界トリップ107日目のティータイム。


死んだはずの三代目とお茶をしています。


「ええと、呼んでみますか?」初代は、電源を置いてきたからアドイ・ナユにいるはず。

「いらないわ。めんどくさくなるし、ここの連中は毛嫌いしている奴らも多いから。」にべもなくいう。彼ー彼女は、とても綺麗な手つきでお茶を入れると、

「召し上がれ。」

「…はい、ありがとうございます。あの、それで、」

「なんで私が生きているのか、は初代を見たでしょう。同じ術よ。それから私のことは、ナリーと呼んで。ホウセーでもいいけど、ナリーの方が可愛いデショ?」

「は、はい。ナリーさんは、その、女装は趣味なんですか?」

「ええ。女に刺されたから女性不信に陥って、そこから奥ー妻のメルーシャに世話になって、メルーシャが本当に可愛いものが好きで好きで好きで。…この部屋も元々はメルーシャの為のものなんだけどね。だって、似合うでしょ?この世にこれほど美しくて可愛らしいものが存在したなんて、まったく知らなかったのよ。人生損をしていたと思わない?」

「…はぁ。」

「ああ、私は『黒の術』は使えないわよ。使えないような仕様なの。あの、魔物みたいな真似はできないし、どちらかといえば、メルーシャの側に居たいだけに特化しているのよ。あとは、息子に頼んだんだけどね。どうも、正式に継承できてないみたいだから、リオの中の術を調整する必要はあるわね。まったく、あのバカ息子…精霊術はともかく『黒の術』はからっきしダメでねぇ。」ふぅ、とため息をつく姿も絵になるのだから、怖い。


オネェってもっと気持ち悪いのだと思っていた。

けれども、目の前の女性は確かに女子だし、私より随分と女子力も高そうなことは間違いない。そもそもの生きてきた時代が違うのだから、色気が違いすぎるのはこの際目を瞑ろう。


「でも久しぶりにこうしてお茶ができて嬉しいわ。リオは可愛いわね。…あら、そちらの精霊さん睨まなくても大丈夫。私はメルちゃん一筋だからぁ。それで、まぁ風のたよりで聞いたけれど、四代目が絡んでるって?」

「ええ。それで、各地の精霊さんと契約をしていただいているわけなんです。」取り分けられたタルトの何と美味しいことだろう。ふと見れば彼女のお皿には甘くないものが多いーなるほど、彼女もお酒ならば喜ぶだろうか?

「そう。じゃあ、搭から連絡が来るのもそう遅くないはずよ。ただ、貴女と契約を結ぶにあたっての、こちらのメリットが無いのよね。」

「!?」

「リオチャン、私は『黒の術師』ではあったけれど、今は嫁ふぁーすとの位置にいるの。危険な目に遇わせるとわかっていて、眷属を契約させるのは、ちょっと、ね。」

まさかの、身内と思ってる人からの反対。

「あぁ、だからね。テストしましょ。あなたにうちの子たちを貸せるかどうか、試したいの。」

「ー何をすればいいんです?」

「簡単よ。ちょっとダンジョンにもぐって、お宝をゲットしてきて頂戴。ほら、こういうのが王道のファンタジーなんでしょう?」

「ダンジョン!?」そういうものも、存在したのね。

「そうそう。私のお手製。クリアできたら、契約を頼んであげるわ。」ナリーはそういうと、傾国の笑みでウインクした。

三代目オンリーで描いてみたいくらいバックグラウンドが(笑)

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