表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/97

モフモフと火の領域。

拍子抜けした。


杉崎璃桜、異世界97日目の昼。


火の領域に到着。とはいえ、暑くない。熱くもない。


ついた場所は森の中。ずんずん歩いていると、海に出た。


「海?」にしては、色が薄い。


そしてその先に大きな山がある。




「海ではない。ガロ・デルタ。淡水だ。」よく知った声。思わず振り返り、首をかしげる。


「ウリセス……?」そこにあのキラキラな美形は居なかった。


「ここだ。」声がするのは下から。


視線を下ろせばそこには。



「無事か。リオウ。」わんこがいた。



銀色のー灰色に近い、オオカミのような、小型犬。


何だ、これ。



「伝言を預かっている。」わんこはどこから出したのか小さな石を転がすと、たしっ、とその肉球で石を叩く。


『リオさま〜ぁ!こんなこともあろうかと、転送陣においておきました!お召し替えくださいましね!』アリッサの、元気の良い声がする。


とりあえず、私は『どこボックス』に手を入れる。アリッサと共同で開発した転送陣は私の『どこボックス』に直接物資を送れるようになっている。ただ、まだ開発中なので、巨大なものは私が直接操作しないと保管できない。


ひょい、と取り出したそれは見覚えのある箱に入っている。砂浜にそれを置き、開く。


びらっ、とした衣装は何故か薄手。今までの私の服はどれも旅仕様で、隙の無い服ばかりだったにもかかわらず、何だこれ。


「ここはまだ火の領域ではない。外れだ。今のリオウの服では火の領域では耐えられぬ。」ウリセスの声をしたわんこが真剣な目で言う。


何だ、このつぶらな瞳。


「……とりあえず、『装着』」ふわり、と衣装を変更する。言いたいことも聞きたいことも山ほどあったけれど、この衣装をどうにかしないとアリッサが夢に出てきそうで怖い。


今度は、どうやら水着使用のようです。

素材は水着のよう。多分汗を吸収してくれるのじゃないかな。前にアリッサに聞かれた時そんなことを言っていた。下着代わりにビキニトップとパンツタイプの下に、キャミソールワンピの上。気になるお腹は出ていない。ワンピースは長めで、気になる太ももも出ていない。外から見る分には、普通のワンピースみたいな感じだ。素材も柔らかくて軽い。ノースリーブの二の腕が気になるけれど、さすがアリッサ、ギリで隠れる袖丈。まさに神仕様。


普段の装備に比べ、少し心許ない感じではあるけれど。


「水の加護がある。」わんこウリセスは言う。

しゃがんでいたのだけど、砂がつくのが嫌で、わんこを抱き上げる。


も、


もふもふだ……。


もふもふ展開キタ!


ウリセスが焦っていたけど、そんなことは関係ない。

モフモフはすべてにおいて愛されるべきだ。


いや、とりあえずこのつややかすぎる毛並みは何だ。美形でなくともうつくしいって。


しばらく堪能した後、肉球にたしっ、と叩かれたところで現状説明。


「で、ここは浮島で、あの山に入らなくちゃいけないのね?」ウリセスを抱いたまま波打ち際へ移動。


どうやらウリセスは無理をしたらしい。私のGPS頼りに『移動』をした様子。いくら淡水でもこの湖は火の属性の側だけあって、限りなく水の精霊の加護とやらは無いそうな。そんな場所に無理矢理移動したもんだから、通常の身体に負担がかかって今はわんこ姿で体力温存しているらしい。


何その萌える展開。


今の私にはウリセスが犬であることが何よりありがたかった。

あの綺麗な瞳で見られたら、嘘を突き通すことなんかできない、きっと。


ほっとして抱きしめるとまた抗議の声が上がる。けち。


ひとまずここから山へ向かうために黒の術を展開。


「『浮遊』」いつか使えなかった術も今の私は使える。


「そういえば、名前。」腕の中のわんこが固まった。

「あの男が呼んでいた。」ああ、初代か。異世界トリップにおける名前のやりとりがめんどくさくて言わなかった私の本名。どちらにせよリオでもう定着しているからいいのだけど。

でもまぁ、ウリセスに呼ばれるのは何か違うのかも。

「瑠璃の璃、にさくら、って書く。」なんとなくわんこがすねていたので、漢字を教える。

「リオウ。」わんこなのに声までかっこいいのはもう私が脳内侵されているからですか?


「リオウ。」はい。いつかちゃんとした発音で呼べるといいな、とか思いつつ。そんなことは言わない。きっと無理するから。


「リオウ。」低い、声。


よかった。犬で。

本体に呼ばれたら私はどこを見たらいいかきっとわからないくらいに動揺していたと思うから。


名前って大事だね。


「リオウ。」

「はい。」

「リオウ。」

「はい。」


そんなやりとりは、山につくまで続いた。





ぶわり、と突然熱気が舞い降りた。

「『調停』」私は急いで『ごめんねカウンター』の中に気候を調節する技を投入する。


それでも、暑い。


湿度はそれほどでもないが、本当に火の側にいるかのようにいきなり、熱くなった。


「サラマンドラがいる。」ウリセスが言う。彼は水の属性、つらくは無いのだろうか?


ついた場所は山のふもと。ウリセスによれば火の領域というのは地下にあるらしい。意外だ。

いくつかの目くらましの横穴を通り過ぎ、山の入り口へとさしかかる。その先は洞窟になっていて、見えない。


「今までとは違う。心しろ。」ウリセスが言う。彼もこの領域を訪れることは仕事以外ではめったに無いのだという。


途中ですがきります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ