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交渉人。

描写が少なく申し訳ないです。

華々しいファンファーレが幻想の始まりを告げる。


とたん拍手や歓声が上がる。


ざわついた中でも何故か男の声ははっきりと聞こえていた。

「スカウト?」薄暗い中でも舞台からの光で男の表情を伺うことはできる。変わらず、営業スマイルだ。

「とある方に頼まれましてね。あなたをこちらの陣営に引き込むように、と。」

「こちら?」

「ヨシュアが言うのですよ。本来は自分の方にこそあなたがつくべきだ、と。」

「ヨシュア?」


「ああ、あなたがたが言うところの…ヨシュオカァ、ですかね。どうにも発音が難しい。」



ヨシュオカ。ヨシオカ、よしおか、吉岡。


ヨシオカ、ユウスケ。


四代目。


四代目、黒の術師。初代の、敵。


「四代目が、私を?」思わず呼びそうになった名前は我慢する。魅了以外の何かが働いたら怖いからだ。

「ええ。あなたを欲しいと。」

「正確には、私ではなくて私の持つ黒の術でしょう?」彼が狙ってるのは、初代の持つ、トリッパーとしての力だ。

「いえ、違います。けれども今のあなたには私どもの言葉は届かないーそこで、子供です。」男の声が素に戻ったように響く。

「ミィを返して。」私は男をにらみつける。

「ですから、我が主より一つ贈り物を。子供を探せば自ずと主に興味が出るでしょう。その時にまたお迎えに上がりますよ。」男はそう言うとすっと立ち上がる。

「待ー」男を追いかけようとするが、後ろから引き留められる。

「リオ!」

呼ばれて振り返り、ヴァルさんの視線の先を見る。


「ミィ!」舞台では、一つの劇が行われていた。よくある勧善懲悪モノだ。

その中でとらわれている姫ーというのか、水の中に浮いているのがミィだった。

「あれは本物ではない。別の場所から投影されたものだ。」ヴァルさんはミィの気配を感じて言う。

「じゃぁ、本物はどこに……」私は急いで『検索』を行う。舞台の投影されたものから本体を割り出せないかと黒の術を行使。わずかながらに細い糸が見えた。

ほんとうに、虫眼鏡でも使わないと見えないような糸だ。


「ヴァルさん見えた、行こう!」その時にはすでに男の姿は消えていた。





園内をくまなく走り、ようやく小さな水槽にたどり着いた。

「ミィ!」ヴァルさんがミィを引き上げる。

どうやら、ミィの周りには空気の壁があったらしく溺死はしていない。ひとまずその無事を安心するが、私は違和感を感じてその水槽を見る。

「!」水槽の向こうに、男が写っている。


銀色の髪、美しい微笑み、意外なほどに澄んでいる瞳。紫の。


あり得ない美貌。

私たちの世界では持ち得ない、その色。


私たち、日本では持ち得ない。


(四代目)不思議と恐怖は無かった。ヴァルさんが何か叫んでいるが、それもわからなかった。

男はただ私をじっと見ていた。歳の頃は初代とそう変わらない。

がっしりした体つきだが、決して大きいわけではなく、均整な肢体は見る者すべてを魅了するだろう。


(私に用?)私は唇だけ動かす。音は出ていない。けれども、これで彼に伝わることをどこかで知っていた。


彼は一瞬目を見開き、また口元だけ微笑む。その微笑みが美しくあまりに清らかで目眩がする。


彼はゆっくりと口を開く。その口の動きだけで言葉を知る。



マッテイル



その瞬間、水槽に亀裂が入る。



「リオ!」大声と共に身体を引かれる。


水槽が割れて水が流れ出しヴァルさんの作った土の塊の上に非難されていなければその水に巻き込まれていただろう。

私はしばらく呆然とその光景を眺めていた。


そして一つのことに気づく。


水槽に小さな石が落ちていた。


石といっても河原の石ではなくて水晶のような結晶だ。キラキラ光るそれを黒の術で文字通り引っこ抜く。


持ち上げようとしたら思いの外埋まっていてー水槽の底にあるにも関わらず、その結晶は動かないのだーまるで大根を畑から引っこ抜くかのように、思い切りつり上げる。


抜けた、と思った瞬間、黒の糸が一斉に広がって消えていく。


「!」黒の術。それも、繊細で広大。さらに私が作ったものではない。そしてきっと、初代のものでもない。


これは間違いなく、彼の仕業だ。


「おい、リオ、大丈夫か!?」ヴァルさんが何も言わずにいる私を心配している。うん。それはわかってる。わかってるんだけど。


今の私にはこれが何の術かがわかってしまう。


「見つけた。」私は振り返る。


「王様の病の原因。見つけたよ。」そして、私は交渉人の言った通り、悩み出すのだった。



早めに次話をアップしたいです。

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