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土の眷属。

またしてもサブクエスト系が以下略。

「めんどくさいな。リオ、お前一人で行ってこい。」


「あんた過去に何やったんですか。」



そう、私がつぶやいても仕方が無いことだろう。


杉崎璃桜、異世界92日目の朝、焼きたてのクロワッサンとスコーンのようなものをほおばりながら、見目麗しき我が師は言いました。しかも、うさんくさいさわやかな笑顔つきで。相変わらず、見た目も黒いです。何で黒しか着ないんでしょう。


「あそこはなぁ。代変わりしているから、俺の知り人はもう居ないしなぁ。それに、可愛い子も綺麗な子も抱きたい子も居ないからなぁ。」で、アポ取るのが面倒なんですね。黒の書庫の記録によると、土の眷属の歴史的建築物を半壊させた、と過去に記されているのですが、つまり、そういうことですか。

完全アウェーっぽい土地に、一人で行けと。


後半、気持ちがだだ漏れです初代。



「ああ、でもお前、お前の歳に似合った奴はいるかもしれんな。総じて、汗臭いからな。だからパスだ。」


それが本音か!!!



地の精霊の加護を得るために移動する手段は手に入れた。

ただ、初代がこんな調子なのでとりあえずは一人で行くことにした。今回はウリセスも何やら初代の手伝いで居残り。久しぶりに一人である。

アリッサは行きたがったが、風の王子とやらに攫われた。所詮、友情より愛情なんだろうな、などと思いながらも、この異世界でできた親しい人の幸せを願った。


ちなみに、例の地図を使うまで非常にしつこくウリセスには心配されたが、


「GPS付けたじゃん!」と言い放ったら、さすがに黙った。それも怖い。何故黙る。


ストーカー?ストーカー気質ですか。好きになった人は意外と粘着質でした。



滋利さんは勝手についてきた。滋利さんは空気を読める猫なので全く邪魔にはならない。そんなわけで、アリッサの特性の服ー今度は山ガール仕様ーとリュック一つで『土の洞窟』へ向かったのだった。





「!!!」自分のバランス感覚が高いことに、すごく感謝した。


移転した先が、断崖絶壁の崖の上の、さらに細長くなっている、まさに映画でしかお目にかからないよいうな、ふらついたら落ちてる、という場所だったから。


「か、勘弁してよ。」思わず尻餅をついて、後ろに後ずさる。360度見渡す限り、山、山、山だ。

かろうじて降りられるのじゃないかという足場だって、絶壁だ。ロープ!命綱!何故装備されてないの。

一度地図で帰ろうかと思ったけれど、それを止めたのは、羽音だった。


「何だ?」声は頭上から。


「え。」影が日差しを遮ったと思ったら、浮遊感。


「え。え、え、えええええええっ!?」


見えるのははるか谷底を流れる川や森。そう、何百メートルかは下にあるそれ。

思わず掴まったのは、足。


おそらく、おそらくは、鳥の足だ。


おそらく、というのは、私はこんなでかい鳥を知らない。少なくとも、今の私は、まるでミミズのように鳥の足に胴体を挟まれている状態。つまり、この足が外れたら、真っ逆さまに落ちるのだ。

風圧とGを『ごめんねカウンター』でどうにかやりすごし、腹の肉に食い込んでいる足をしっかり持って、さらに身体が重力にひっぱられないよう術をかける。


何者かに餌と思われているのなら空を飛んでいるうちは無事だ。羽音がするから鳥なんだと思う。というのはこの体制でどんな生物なのかを見ることができないから。

そのうち、ゆっくりと降下していく。その先に見えたのは砦。

岩を削って作られただろう、巨大な都市がそこには存在した。岩と岩の間にも掛け橋がある。しかし外からは全くわからないだろう。頭上から降りてこない限りは。つまり、これは意図的に隠されている都市なのだ。


『土の洞窟』ひらりと、その知識がひらめいた。もっとじめじめした場所をイメージしていたのに、どうやら全く違うようだ。





その中の一つの岩のせり出した部分に近づくと、ふいに鳥の足が外れる。


「!」思わず『ごめんねカウンター』を発動させて地面に転がる。勢いあまって何メートルか先まで転がった。これ、私じゃなかったら結構ひどい怪我しているんじゃないのかな。


よろり、と立ち上がりほこりを払う。そして見たのは。


「今帰ったぞー。」下半身が鳥のイケメンでした。


男の声にしばらくすると、どたどたと足音が聞こえてきた。


「おかえりなさいーーーーー!!」複数の子供の声と共に、目の前を走り抜けて行ったーあ、一人転んだー子供たち。


「ねぇ今日のお土産は何ー?」

「おなかすいたよー」

「ねーね、街はどうだったのー」きゃいきゃい、とはしゃぐ子供たち。見た目は性別不明。とりあえず銀髪とうす緑色の髪と茶色の髪の三人だ。


「あああ、うるせぇー。疲れてんだ。寝かせろ。寝ずに飛んできたからな。……土産は……あれだ。」そのイケメンーは無精ヒゲをボリボリとしながら、私を指さす。


子供たちを目が合う。そしてその顔がぱぁっと輝く。


「何あれ人間!」

「つがいにするの!?」

「食べていいの?」


「あ、あのー…」私はその鳥人を見る。


外見は40代くらい。髪の毛は焦げ茶色。身体は日に焼けていて、身につけているのはベストのみ。腰紐にいくつかの荷を結んである。背中には同じ茶色の羽。当然のことながら胸筋がすごい。


イケメンはイケメンでも、かなりミドルでいい感じに脂がのっている。


少し、どきりとなるくらいには、格好良い。


「あー、人間、だろうなぁ。何であんなところに落ちてたんだか。つがいにするかはわからんが、食い物じゃねぇから食うな。とりあえず、俺は寝る。」そう言って、おっさんイケメンはふらふらと崖の穴の部分に吸い込まれていく。


子供たちはそれを追っていたが、振り返った。


「!」そして、私をじっと見つめている。


嫌な予感。






「ちょっと、そっちも窓を開けて!何でこんなに空気悪いの!」

「えーリオ、とどかなーい。」

「何するのー?」


「ああもう。どいて!『洗浄』『清浄』『開閉』」


あれから私は子供たちの城へ案内されたが。


その、あまりの汚さに、見かねて掃除をしている。もちろん『黒の術』で。男のベッドまわりも衣類の汚れやらほこりやら、虫でもわいているのじゃないかと思うくらい、汚かったし匂いもひどかったのだが、とりあえずすべて綺麗にした。

そしてそのかわり子供たちに強制したのだ。

「一宿一飯の恩義って知ってる?」


ひとまず今日はここで泊まるしかないと残された時間を計算した私は、子供たちに泊めさせてもらうことにした。そしてその変わりの、掃除ー家事である。


すっかり綺麗になった部屋ーこの洞窟はいくつも部屋があり、それぞれが長い廊下でつながっている。一人の男が住むにしては、広すぎる気もするーにお茶を用意して子供たちの分も並べる。


「手は洗った?」

「うん。洗ったよリオ。」銀髪の一番利発そうな子がミィ。

「早く食べたい。」うす緑の髪の子がシン。

「ねーこれ何。」茶色の子が一番小さくて、カイ。


よく見ればこの部屋にある調度品も、それなりにお金がかかっているものだとわかる。男の身なりのベストも織物の細かさからいって、それなりに地位のある人ー人ではないがーなのかもしれない。何より、部屋は汚かったが子供は綺麗だった。つまり、子供たちにはきちんとした世話をしているということになる。男が留守の間、誰かがみているのだろう。


つまり、男は仕えられる人物である、ということだ。


夕食の準備をしていると男が起きてきた。男はしばらくぽかん、と私を見つめていた後、部屋を見回した。

そこでようやく思い至ったのか、バツの悪い顔をする。


「リオといいます。今日はここへ泊まります。いくつかお伺いしたいことがありますが、よろしいですか。」できたての肉団子入り野菜スープを前に静かに席につく。ここは床に分厚い絨毯が敷いてあり、その上で食事をするようだ。お盆のようなそれを囲んで、子供たちがきゃいきゃいとはしゃぐ。


「ああ、わかった。こいつら寝かせたらな。」男はそう言って苦笑した。



男の寝室とは別の部屋で男と向き合う。

「俺はヴァルという。ヴァルハイト=ローゼスダイム。」ヴァルさんは翼をしまってー背にしまえるらしいー私を見る。よく考えたら密室で二人きりなんだが、『ごめんねカウンター』がある限り、私の身は危なくないはず。

「私はリオです。アドイ・ナユから来ました。」ヴァルさんには土の洞窟に正式に通達してあること、その上で主に会いたいということ。この場所がどこなのかということを聞いた。

「……リオと言ったか。いっちゃあ何だが、君みたいな娘がどうして王主に会いたいと。」

「ヴァルさんも、いきなり人を攫うのはどうかと思いますが。」

「あぁ、悪かった。仕事の後は気が立っていて、ついなぁ。」つい、で人を攫うんかい。

「あ、これ、正式書類の写しです。」私はヴァルさんにエセルバードの署名の入った書類の写しーもちろん黒の術で写したものだーを見せる。

ヴァルさんは興味なさげにそれを見た後、ここの場所について説明してくれた。


ここは、大地の精霊たちの居城を囲むハレ・バラドより二つ下の階級にあるマルド・フェースという場所だとうこと。ヴァルさんは貴族ではあるが今は隠居してフリーの仕事をしているということ。明日になったらハレ・バラドまで送ってくれるということ。

彼が私の素性を理解したかどうかは別としての条件としては上々ではないかと思えた。



次の日、目覚めると何故か私の上に子供たちの足が乗っていた。重い。


「ちょっ……はな……れない?」子供たちをどかそうとするが、身体にしがみつかれていて全く身動きが取れない。そんな私を見たヴァルさんがあきれてーこの家はほとんど扉がついていないので出入り自由であるー

「メシ、抜くぞてめぇら。」その一言は偉大だった。


子供たちはまるで攻撃魔法でも食らったかのように飛び起きて、ヴァルさんに駆け寄っていく。


「………三人も子供を抱えているって、大変ですね…。」そういえば、奥さんはどこにいるのだろうか。

「ああ、側室になってる。」

「へぇ………。え、ええ!?」

いやなんだそれ。何それ。

「昔の話だ……。」自嘲ぎみにそう言った彼の目はどこまでも空虚だった。



どうやら踏んではいけないものを踏んでしまったようだ。けれど、今更謝るのもどうかと。

「何ならお前がつがになるか。」にやにや笑う顔はまさにおっさんですが。その切り替わりの早さは年の功でしょうか。

「つがい?」というと、アレですな。獣系のもふもふの物語では重要なポイントである。なので、つがいって何ですか、とは聞かない。聞かないよ私は!

「まぁ、その身体じゃあ安産型とはいえねぇが…ぶっ」つい、手近なクッションを投げてしまったのは出来心です。

「早く案内していただけますか?可及的、速やかに?」


こうして、大地の精霊の居城へ向かうことになったのでした。

渋いおっさんは好きですか。まだ渋い人は出てきてませんがこの後出てきます。

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