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聴くということ。

異世界83日目の朝、うっかりしていました。


ベット上で初代とじゃれている所をヨアキムー久しぶりすぎるけど相変わらずのロマンスグレーで仕事人でしたーに見られたばかりでなく、ウリセスまで目撃されてしまった。


言い訳を言うにも何故だか会うのが躊躇われる。


「だから、いいましたのに…。」アリッサ。そのため息はわかっているわ。

「だって、仕方ないじゃないの『電源』らしいんだから。」初代が私を抱えて眠るには意味がある。


『黒の術』を行使するために初代の身体ークローンーは私という『電源』があった方がいいらしい。

ある程度は動けるらしいが、この宮殿から外や長時間の活動には作り物の身体が適さないらしい。

本人いわく、


「充電?夜中に充電すれば効率いいだろ?」とのことで、色気も何も無い話しなのだが、人から見たらそういうわけにはいかず。


「そうそう、兄様がお話があると言っていました。」今日もアリッサの服は完璧だ。ぴたりと肌に合うそれをしみじみ見てーこれが癖になって既製品が着られなくなったらどうしようーその言葉に反応する。

「ヨアキムが?」




初代が現れてから数日何をしていたかと言えば、1日目から何かと『黒の術』でバトルしていたためエセルバードから多額の金額をウリセスが請求されていたが、まぁそこは見ないことにした。

本人に謝ったら、全く問題ないらしいのだもの。一体どんだけ貴族様なんだ。


初代は私とのバトルで新しい技を編み出しているようだった。積まれた本と書きちらかされた書類がそれを物語っている。


今日の夕方の会議で書類が通過すれば私たちはまた新しい旅へ出かける。その準備で忙しいので、ここ数日ウリセスとは会っていなかったのだった。


(なのに、あれが久しぶりって最悪…)


「今度は風の精霊か…。」水の精霊との出会いが強烈だったので、できれば穏便な形が欲しいのだけど。次の旅は風の精霊宮へ向かう旅だった。ここから北のラドンという街の中にそこへ繋がる神殿があるのだという。

アリッサに言われた通り朝食後、庭の東屋にヨアキムが居た。



ここの庭も手入れがされておりとても綺麗だ。新緑が美しく、どんな木かはわからないが清々しい気分になる。

「リオ様。およびだてして申し訳ございません。」相変わらず、執事然としているヨアキムは綺麗に私をベンチに腰掛けさせ、断ってから自分も座った。


「話って何?」

「リオ様は、精霊が何であるかご存知でしょうか。」

「精霊は、精霊でしょ?」

「精霊が見えるようになったとの事。」

「うん、まぁ、ね。」見えるようになっても、悲鳴だらけだったから、シャットアウトしているのだけど。

「少し、精霊術の練習と行きましょう。『ワタシノコエガキコエマスカ。』」

「!?」ぐわん、と目眩が私を襲う。この感覚、そう、これが精霊の声。

「回線を限定しています。リオ様が悲鳴を聴くことになったのはそのチャンネルの数によります。的を絞って利用すれば、それほど恐ろしいものではございません。では、『セイレイトハウソヲツケヌソンザイデス』」

「…聞こえるわ。知っているわ。それも聞いたから。」後半、ヨアキムは口を開いていない。これが、精霊の声。

「なるほど、知っている、だけなのですね。」ヨアキムはふむ、と頷いてまた顔を上げる。

「?どういうこと。」

「旦那様は、精霊と人間のハーフです。虚を述べることも可能です。ですが、それにはとてつもない負担がかかるのです。」

「!?」

「今の旦那様の悲鳴は、我等眷属に影響します。ですから、勝手を申し上げますがー旦那様の、声を聞いていただけないでしょうか。」

「ウリセスの、声を……」ウリセスが何か嘘をついているということだろうか。それがヨアキムさんたちの負担になっている?

「左様でございます。さすれば、リオ様の杞憂も終わるものかと。」

「私の、杞憂……?」どきり、とした。何が杞憂なのか。ヨアキムの瞳はごまかせない私の奥底まで見通すかのようだった。

「どうか。我等の為と思って…」ヨアキムに懇願される。うん、私この顔に弱いきっと。

「まず、器をイメージしてください。これが、旦那様です。」言われた通り、平たい皿をイメージする。ウリセスだから、色は青。

「その中に沢山の具が入っています。そうですね、リオ様の言われるところの『シチュー』とやらにしましょうか。」私は目をつむり、シチュー皿をイメージする。

「その中で一番好きなものーを残して、すべて消してください。」ヨアキムの声が遠くなっていく。

「それを注意深く、スプーンですくいリオ様へ。」

「………あたたかい。」言葉にならない温かさが身体を包み込んだ。

「では次に、その温かさを分解します。いくつに分かれましたか。」

「三つあるわ。小さいのが一つ、大きいのが二つ。」私の中にいくつかの色がある。

「ではそれを、文字に変換してみましょう。何、耳をそばだてればいいのです。内緒話を聴くように。」


声を。


声を聴くように。ウリセスの、低い、声。


『XXXXX』


「!」がたん、と立ち上がってしまった。思わず手で口元を覆う。


「いかがなさいましたか。」ヨアキムは静かに私を見ている。


「だっ…。そん…。」


「リオ様、顔が真っ赤です。」ヨアキムが苦笑する。

「お分かりいただけましたか。我等とはそういうものであるということを。」


「っ…十、分に、わかったわ…!」私は礼すら言わずにそこを立ち去った。




どこをどう歩いたかわからない。気づいたら、扉の前まで着ていた。

色は三つ。

黒は怖いから避けた。

黄色は温かいから最初に聞いた。


『リオを守る』


そして、最後の赤はーーーー


「…リオ?入っておいで。」ああ、やっぱり扉越しでわかってしまった。


一瞬躊躇った後、扉を開けると書類に目を通しているウリセスが居た。

「あの…、忙しいところごめんなさい。今朝の件だけど…、あれは…」一瞬、部屋の温度が下がったかと思ったけれど、言わなければと思って説明をする。

ウリセスは話しの途中で顔を上げてこちらを見た。

「……、そうか、……すまない私はてっきり……」纏う空気が柔らかくなったことにほっとする。

身持ちの軽い女だとは思われたくない。あれは、どう見ても兄弟のじゃれ合いにしか見えないはずなのにー現にアリッサにとっては初代も私もそう変わらないらしい。アリッサ、大人だわ。

いくら私でも、初代とはあり得ないですから!そこ誤解しないでください。

「あれは、誤解なんです!…もう、ホント誤解で…」

だって私が好きなのはーーー。


「ウリセスも、私の声が聴こえたらいいのに…。」思わず呟いてしまった。そのまま部屋を後にしようとして。

「ーーーー私、も…?」


あ。


振り返り、目が合った。

「私、失礼しますね…」まずい。これはまずい。はりつけた笑みが、固まった自覚はある。

私は慌てて部屋を出ようとしたが、腕を取られる。


「リオ!」そのまま壁へ押し付けられる。優しく、けれど決して逃げられないように縫い止められ。

「ウ…リセ…」


「私の『声』を聞いたのだな?」その声は震えてはいまいか。

久しぶりに見たアップに、その瞳の強さに圧倒される。

強い、青に。


「…ご…め…さ…」いくら頼まれたこととはいえ、プライバシーの侵害だ。こんなこと許されない。


「私の『声』を聞いたのだね?」今度はとても優しくささやかれた。


「…っ…」答えられない。ただ目を逸らさないでいるだけ。

「リオの声は聞かずともわかる。」ウリセスの指が私の顎を持ち上げる。

「ウリセス…!」強く声に出してはっとなる。


今の私の声は『黒の術』が制御されていない状態で

存在するーそれはつまり。


「その瞳は私を見つめているーその赤く染まった顔は私を求めているとー勘違いしても?」

元々キザッたらしいですが、何か輪をかけてフェロモン出てますよ!どうしましょう。これ、もしかして。


『魅了』


「んんんっーーーー!!!」荒々しく口づけられる。


ちょっと待って。いやもう落ち着こうよ何これ、何なのこれ。


誰か…!






ドゴン。バタン!ドシャーッ。


「うぜぇ。ワンコロ。おめぇそういうこたー『遮音』と『防音』の結界張ってからやれ。ついでに言えば次に使う部屋が無くなったから、ここを使うぞ。」視界の隅に扉が壊れ床に落ちているのが見えます。そこから覗くアリッサ、ヨアキムと二人の女官さん。ずかずか、と初代は台車で本を部屋に引き入れる。


『ごめんねカウンター!(ゴメンネカウンター改良版)』


「エル・ラウラ。」


バシィッ!



「……え。」


「阿呆が。」これ、初代の台詞。


私は確かに、術を使ったのに、相殺された…?


「リオ。場所を変えようか。」え?



気づいた時には、景色が変わっていました。





「あー。だからリオはツメが甘いんだよなぁ。」ヒロキは呟く。

「…、何が起こったのですか?」アリッサは本を降ろすのを手伝いながら聞く。

「何てこたぁない。あいつが本気で傷つけようと思わない限り、あの程度の技は発動のタイミングに合わせれば同等の質量で相殺できる。ワンコはあれでもリオよりは戦の経験がある分、何度も見ていればわかるだろうよ。」

「……、それで、あの、ワンコって何ですか?」


「ああ?」






早く旅に出ないと、物語りが進まない。(涙)

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